ピアノを始めたばかりのときは、いろいろなカベにぶつかると思います。
その中の一つに「弾きたいと思った指が動かない」ということもあるのではないでしょうか。
ミを弾きたいのにレの音が出てしまったり。ドミソと弾きたいのにドレミになってしまったり。
音は分かってるのに違う指が動いちゃう!!
ということですよね。
今回は、そんな時に自分の教室のレッスンでやってもらっていることを紹介したいと思います。
これ、ピアノ初心者のあるあるです。
なので、落ち込まず、あきらめず、が大事です!
「弾きたい指が動かない」は”ミスタッチ”とは違う
上に書いた「音は分かってるのに違う指が動いてしまう。」という状況。
結果、違う音を弾いてしまうことになりますが、いわゆる”ミスタッチ”とは違います。
ミスタッチは「違う音を弾いてしまう」ことそのものです。
原因は、事前の準備や音への認識の不足かな、と思います。
今回は、「違う指が動いてしまう」ということに焦点を当てます。
例えば、
鍵盤のドレミファソのところに5本の指を1本ずつ置き、
「ミ」を弾くために3の指を動かしたいのに「レ」の2の指が動いてしまう。
といった状況です。
話を進める前提として、ちょっと確認しました。
「弾きたい指が動かない」のはなぜ?
上に書いたような「弾きたい指が動かずに違う指が動いてしまう」状況。
レッスンを始めたばかりの時には本当によく見ます。
弾いている本人が一番イライラしますよね。だって、音は分かっているんだから。
でも、誰にでもあることなんです。
では、なぜこうなってしまうのか・・・
ピアノを弾く動きは手にとって不自然?
それは、指1本1本を動かすための神経細胞が「ピアノを弾くためには」まだ未熟だから、ということのようです。
人間の手指は、本来「物をつかむ」という動きをしやすいように発達してきました。
なので、指が連動して動くようになっているんですよね。
指1本だけを動かそうとすること自体に、少々無理があるということです。
参考→こちら⇩に詳しいです。
http://www.piano.or.jp/report/03edc/brain/2010/03/29_10477.html
レッスンで様子を見ていると・・
「3の指を動かしたいときに2の指が動いてしまう」というのは、2の指だけが動くのではなくて、どの指もアタフタと動いている感じです。
「3だけを動かす」ということがそもそも難しいことなので、そうなってしまうのでしょうね。
それと同時に、「3を動かしたつもりなのに動いたのは2の指だった!」ということも多いように思います。
これも、1本1本を動かすことが難しいので指先への指令がスムーズにいっていない、ということになるのでしょう。
ピアニストが動かせるのはなぜ?
じゃあ、なぜピアニストは指を自由に動かすことができるのか。
それは、結局のところ「長年の訓練の賜」ということのようです。
ピアノを弾き続けてきた結果、ピアノを弾くにふさわしい脳、ピアノを弾くにふさわしい神経へと変化を遂げた、ということです。
こんな研究結果があるそうです。
- 手指を動かす神経細胞を刺激した時に起こる手指の動きが、音楽家ではない人は物をつかむような動きだったものが、ピアニストではピアノを弾くような複雑な動きが起こった。
- ピアニストは、動かしにくい左手の指の動きをつかさどる脳部位の体積がそうでない人よりも大きい。
- ピアニストは、力やタイミングの調節に関わる脳部位、小脳の体積が、そうでない人より5%大きい。
- 身体を的確に動かすためには小さい方がよいとされる大脳基底核の「被殻」が、ピアニストはそうでない人よりも小さい。
以上のことは、『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』のP.10~12に書かれていることを箇条書きにまとめたものです。
ピアニストは、そうではない人と比べて、脳の状態や神経細胞の数が違っているということです。
つまり、練習を続けてきた結果「ピアノを弾くにふさわしい脳へと変化した」ということのようです。
逆をいえば、練習を始めたばかりのピアノ初心者が思うように指を動かせなくて当然、ということですね。
そもそも、人間の指は1本1本別々には動かしにくくできている、ということなんですもんね。
関連記事→参考文献『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』をこちらで紹介しています。
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弾きたい指が動くようにする練習法
「この指を動かしたい」と思った指がスムーズに動く。
こうなるためには、指への意識をしっかり持つことだと考えています。
ということで、レッスンでは次のようなことをやってもらっています。
- 右ドレミファソ、左ドシラソファの鍵盤に指を置く(中央ドから左右へ広がる形)
- 指をしっかり見て一つ一つ動かして音を出す
- 指示された音を出す
- 手をカバー等で隠す
- 一つ一つの指を動かして音を出す
- 指示された音を出す
一つ一つ見ていきます。
鍵盤に指を置く
まずは、鍵盤に指を置くことです。1本1本がどの音のところになるのか意識して置きます。
きちんと置かれているかチェックをしっかりとします。
弾いているうちに鍵盤から指がずれてしまうこともあるので、そうなったらそのたびに置きなおします。
とても重要な「準備」です。
音を出す
1音につき1本の指がきちんと置かれたら音を出します。
まずはしっかりと指を見て、1本ずつ動かします。
「見る」というのが大事なポイントだと思っています。
どの指を動かすのか、目からしっかりと情報を入れるということです。
そして、音名や指番号を言いながら弾くこともします。
「見る」「言う」そして、思った音が出ているか「聴く」。
弾いている指先の感覚も鋭敏にして、「今〇の指を動かしてるぞ」と考えながら弾く。
身体のいろんな機能を使うことが大切だと考えています。
指示された音を出す
順番に音を出していったあとは、言われた音を出すことをします。
レッスンでは私がランダムに音名を言い、その音を出すということですね。
この時に起きやすいんですよね、「ミ」と言われたのに「レ」を弾いてしまう、ということが。
これもまずは手を見ながらやります。
音名を復唱したり、指番号を言ったりしながら弾いてもいいですよね。
また指示を出す方も、音名ではなく指番号を言ったり、5指の場所を変えたり(ドレミファソをソラシドレにするとか)して行うこともした方がいいと思います。
一人でこの練習をする場合は・・
自分一人で練習をする場合もあるかと思いますので、その方法も少し。
その場合は、ランダムに音名を書いた紙を事前に用意しておいて、それを見ながら弾く、ということになるでしょうか。
どなたかに「ドレミファソをいろんな順番で書いて!」と頼んでもいいですね。
どなたか音名を言ってくれる人を探せれば一番よいですが。
手をカバーで隠す
最後に、ここまでと同じことを手を鍵盤カバーなどで隠して見えないようにして行います。
隠す前に、きちんと指が置かれているかをしっかりチェック。これができていないと意味ないです。
そして、まずは順番に弾き、そのあと言われた音を弾きます。
「違う指が動いてしまう」状況はこちらの方が起こりやすいですよね、指の感覚だけで弾くことになるので。
「ん?音違うね」など言いながら、必ず正しい音を出してもらいます。
カバーの下で指の場所がずれていることもあるので、何度弾いても違う音のときには一度カバーを取って確かめます。
きちんと置きなおしてもう1回挑戦です。
もちろん、カバーで隠さず、上を向くなどして見ないようにして行ってもオッケーです。
毎回のレッスンで
始めてしばらくは、毎回のレッスンで行います。
スムーズに指が動き、音を出せるようになってきたら、バーナムなど初期のテクニック教本に入るのが、私の教室での通常の流れですね。
レッスンしている曲がスラスラと弾けるからといって、指が思うように動くようになったのかというとそうでもないです。
上に書いたことをやってもらうと、やっぱり間違っちゃうということは多いです。
曲は何度も同じことを練習するから弾けるようになった、ということなんですね。
もちろん動くようになっているのだと思いますが、まだまだ応用が利かない、ということだと思います。
なので、上の方法でスムーズになるまで続けるようにしています。
「弾きたい指が動ない」地道な努力の後に・・!
今回は、「弾きたい指が動かなくて、違う指が動き、違う音を出してしまう」という状況に対する練習法をまとめて見ました。
そもそも1本1本を別々に動かすことをしにくくできている人間の指。
地味~な練習を地道に続けていくことが何より大切です。
日々の練習の参考になれば・・
(公開日:2018年2月27日 最終更新日:2024年5月10日)
関連記事
→手先の器用不器用とピアノを弾くこととの関係をまとめてみました。
参考文献紹介記事
→『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』をこちらで紹介しています。
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