「一定のテンポをキープして1曲弾きとおす」ということは、「上手な演奏」の必須条件です。
拍子もリズムも安定したテンポあってのこと。
そして、この安定したテンポに、人は心地よく乗っていくことができるのです。
安心してその音楽を聴くことができる、ということですね。
でも、このテンポキープ、なかなか難しいことだったりします。
曲がある程度の長さになると、始めから終わりまで一定のテンポを保つことが大変になります。
この部分は速く弾けるけどこっちは遅くなてしまう‥
結構”あるある”ではないでしょうか。
今回は、テンポをキープする重要性とその練習法についてまとめてみたいと思います。
「速く弾ける」より「一定のテンポを保つ」
ピアノって「速く弾けることが大事」というイメージないですか?
指がサラサラよく動いて、16分音符が続くようなところを止まることなくザ~~っと弾いていけると「す、すごい~」みたいな。
確かにすごいし大事なことです。
でも、その演奏がテンポキープできていなかったとしたら・・
大きく「音楽」としてみたとき、1曲の中で速くなったり遅くなったり、
ひどいときには、速くなってるのか遅くなってるのかもよくわからん、みたいな状態は、決して良い演奏とはいえません。
「指がよく回るね」というだけのことです。
たとえ、指定のテンポよりもかなりゆっくりな演奏になってしまっても、そのテンポをしっかりとキープして1曲弾きとおした演奏の方がよほど良い演奏です。
それは、「ちゃんと音楽に聞こえるから」です。
つまり、テンポキープは、音楽として聞こえるようにするために重要だということです。
テンポは音楽の根本
音楽は、一定のテンポの上に成り立っています。
テンポは、時間の流れを一定の間隔で区切ったものですね。
それを4つずつにまとめれば4拍子に、3つずつにまとめれば3拍子に・・ということになります。
その拍子の中でさらにまとまりを作れば、それがリズムになります。
テンポは音楽の根本です。
テンポが一定に保たれていなければ、拍子もわからないしリズムも刻めないということです。
演奏している本人は、本人なりのテンポがあり、その中で拍子をとりリズムを刻んでいる。
だから、演奏はできてしまうんです。
でもそれは、「その音楽を聴いている人には分からない、伝わらない」。
本人だけのテンポになっているから。
聴いている人はその音楽には乗れない。
乗れないということは、聴いていても心地よくない。
そういうことになってしまうんです。
人に自分の演奏を聴いてもらおう、人と音楽を共有しよう、となると、一定のテンポを保つことが必要不可欠になるんです。
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自分のピアノ演奏、テンポキープできてる?
一定のテンポを保って演奏することの大事さ、分かっていただけたでしょうか。
すると次は、実際自分の演奏は、ちゃんとテンポキープできているんだろうか・・?
ということになりますね。
それを手っ取り早く知るには、
- 演奏を録音して聴いてみる
- メトロノームに合わせて弾いてみる
この2つをやってみまるとすぐに分かります。
どの部分が遅くなり、どの部分が速くなってしまうのか、それを知ることはとても大事ですね。
よくあるのは、苦手でスラスラと弾けない部分は遅くなり、スムーズに弾けるところは速くなる、ということです。
この状態のときは、自分でもよく分かっていて対策も立てやすいですよね。
でも一方で、テンポキープできていないことの自覚がない、ということも多いです。
全体的にスムーズに弾けているんだけど、実は速くなったり遅くなったりしている、ということです。
その場合、自分はテンポキープできていない、ということをまず知らなければいけません。
そして、なぜ自分はここが速くなってしまうのか、やっぱり弾きやすい部分だからなのか、それとも、気持ちがはやってしまうからなのか・・
いろいろと分析してみるのが大事です。
テンポキープの練習法、それはやっぱりメトロノーム
一定のテンポを保つための練習は、やはり、メトロノームをかけて弾くことです。
でも、テンポキープできていない状況によって、少し方法が変わります。
弾ける、弾けないによってテンポが変わる場合
まず、スムーズに弾けるところは速くなり、まだ苦手なところは遅くなってしまうという場合について。
この場合、苦手な部分の練習が必要なのはその通りなのですが、それとは別に、テンポキープのための練習をした方がいいですね。
苦手な部分が弾けるようになるのを待つ、という必要はないです。
「苦手な部分が止まらずに弾ける速さ」にメトロノームを合わせて全部を弾く、ということをします。
上にも書きましたが、音楽を音楽として聞こえるようにするのは「速さ」ではないんです。「一定のテンポを保つ」ことなんです。
もし原曲よりもずっとゆっくりにしか弾けないという曲でも、テンポが一定に保たれていればきちんとその曲に聴こえます。
原曲と同じ速さで弾けるところはそうして、弾けないところはゆっくり弾いて、という状態よりもよほど良い演奏です。
むしろ、丁寧に大切に弾いている、と好印象を持ってもらえるのではないでしょうか。
苦手で遅くなってしまう部分の練習を続け、だんだん速く弾けるようになってきたら、全体のスピードが上がります。
苦手な部分、得意な部分、ではなく、一つの曲としての認識で練習を進められるのではないかと思います。
弾ける弾けないに関係なくテンポが変わる場合
全体的にスムーズに弾けるけれど、テンポは一定になっていない、という場合です。
この場合は、自分が弾きたい速さにメトロノームを合わせて全体を弾く、ということを続けます。
曲以外の、ハノンなどのテクニックの練習の時にもきちんとメトロノームをかけて練習する必要があります。
むしろそちらの方が大事かな。
このような場合、どんな曲かにかかわらず、そもそもテンポ感が身についていないという状態ではないかと考えられます。
つまり、一定のテンポを刻み続けることが苦手、ということです。
自分の感じたイメージだけで自由に弾いている。
本人は気持ちよく弾いているのだからそれでいい、と言えばそうなんですが・・。
私は、それは音楽と言えるのだろうか、と思ってしまいますし、1つの曲としてのまとまりにも欠けると感じます。
また、人に聴いてもらう場合、なかなか良く聴いてはもらえないのではないでしょうか。
「テンポを揺らす」と「テンポキープができていない」は違う
ここまで読んできて、
テンポキープできていないというけれど、それってテンポを揺らしてるってことじゃないの?
という疑問が浮かぶかもしれません。
確かに、曲の中には1曲の中で部分的にテンポを変えて弾くということがありますね。
特にロマン派以降の曲などは、rit.やaccel.が書かれていなくても、メロディーの流れなどの状況から演奏のスピードを微妙に変えて弾くことがあります。
それを「テンポを揺らす」という言い方をします。
でも、このテンポの揺れは聴いている人が「揺れた」と分かり、この揺れに心地よく乗れることが重要で、それには、根底にある一定のテンポが絶対に必要です。
安定したテンポがあっての「揺れ」で、だからこそ揺れていることが分かり、心地よく感じられるんですね。
テンポを揺らすことが必要な曲も、練習段階ではテンポを揺らさず一定に保った状態で弾くことをします。
そうした練習を重ねたうえで、どのように揺れると効果的か、心地よく聞こえるかを研究していくのです。
好きなところで好きなように揺れているわけではないですし、それでは揺れっぱなしではわけのわからない曲になってしまいます。
メトロノームの使い過ぎはダメ!
テンポキープの練習にはメトロノーム、ということで書いてきましたが、メトロノームの使い過ぎはよくありません。
メトロノームは機械なので正確にテンポを打ちます。
でも、人間が演奏する音楽は、いくらテンポキープが大事といっても機械のように正確な演奏はできませんし、そのような演奏は人間味のないものになってしまいます。
実際は、「一定のテンポに保てているように聞こえる」ことが大事なんですね。
メトロノームに合わせてばかりいると、テンポは正確かもしれないけれど音楽としての機微がない、味気ない演奏になってしまいます。
基本的には、メトロノームはハノンなどのテクニックの練習の時に使い、曲の練習の時には最小限にとどめることが大事です。
それこそ、テンポが一定に保てない、というときにだけ用いる、ということですね。
関連記事→こちらでメトロノームの使い方についてまとめています。
「ピアノ上手!」と言われたいならテンポキープ
音楽の演奏で、テンポを一定に保つことの重要さについてまとめてきました。
「テンポキープ」は良い演奏の必須の条件です。
まだまだ指の動きもおぼつかず、ゆっくりにしか弾けない初心者の方の演奏でも、一定のテンポを保って1曲を弾きとおすことができるなら、立派な演奏です。
そのくらい、テンポを保つことは大事なことです。
ぜひ、日々の練習で取り組んでもらえればと思います。
(公開日:2020年9月29日 最終更新日:2024年2月29日)
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