ピアノ教室で「発表会」といえば、最も大きな、最も重要な教室行事です。
ここで少々問題になってくるのが、参加は強制(ってちょっときつい言い方ですが)なのか任意なのか、ということでしょう。
発表会に出て大勢の前で演奏することは、とても良い勉強、良い経験になります。
それは確かです。
そもそも、音楽は人に聴いてもらってこそ意味のあることだと思います。
でも、私の教室では「参加は自由」としています。強制参加をやめました。
その理由を書いてみます。
発表会の強制参加をやめることになったきっかけ
私の教室は、2022年4月で開室13年目になりました。
初めての発表会は2年目の冬です。
生徒数は少ないけれど発表会はとっても大事!何とかやりたい。
と考えて、普段のレッスン室でこじんまりとしてでも行うことにしました。
原則全員参加、ということで。
教室規約にもそのようにすでに記していました。
でも・・・
レッスンに来ている子どもたちには、当日から3か月ほど前に発表会について告知をし、曲を決めていくことになります。
そんな中、ある一人の子が、「今度発表会をしようと思うんだけど‥」ということを言ったとたんに今にも泣きだしそうな表情に。
当時その子は小学校1年生。レッスンを始めて10か月目を迎える頃でした。
「みんなの前でピアノを弾く」。もうそれだけで不安と緊張でいっぱいになってしまったんですね。
「その日は用事があると思うから、出られないと思う・・」などなど一生懸命自分で理由を考えて言います。
そばで聞いていたお母さんは、笑顔で「用事?ないない!どうもこの子、緊張しいなのよねー」といった感じ。
お母さんのこうした様子もあってか、その後不安そうな様子はちょくちょく見られつつも、発表会にはしっかり出演しました。
でも、私はこの事がきっかけで、発表会の参加の仕方について考えてしまいました。
発表会に参加する生徒の気持ちはどうあるべきか
「発表会」と聞いただけで、泣きたくなるほどのプレッシャーを感じる。
これほどの強い緊張感を与えてしまっていいのだろうか・・そんな権限が私にあるのか??
まず、この事を強く思いました。
出ることがすでに決まっている。嫌だろうが何だろうが、出なくてはいけない!
こんな苦しいことってあるだろうか。
そんな風に思いました。
もちろん、みんながみんなこの子のような状態だったわけではありません。
発表会出演を当然のように受け止めた子もいますし、みんなの前で弾くこと自体がとっても楽しみ!という子もいました。
でも、一方でそうではない子がいる。この事はきちんと受け止めなければいけない、と思いました。
「発表会は良い経験になる」その通りだけれど‥
「音楽は人に聴いてもらってこそ意味がある」と私は思っています。
発表会は、自分の演奏を人に聴いてもらう機会としてとっても重要です。
そうしたことから、「発表会はレッスンの一環と考えているので原則参加です」としていました。
でもね・・。
「発表会は大事」という考えは、私の立場からのことなんです。
子どもたちにしてみれば、「そんなこと知ったこっちゃない」なんですよね。
「いい経験になるよ」「もっと上手になるよ」「いい刺激を受けられるよ」と言われたって、「先生だからそう思うんでしょ」ということでしかありません。
そんなことより緊張するからいやだ、ということなんです。
「出たくない」という気持ちはとっても大事

上に挙げた子、「発表会」と聞いただけで泣けてきてしまうというのは、それがとっても緊張感を伴うことだということまで一瞬で想像し、嫌だ、という感情が生まれたということです。
これは一方で、なかなかすごいことだと感じてしまった私です。
私の立場からいえば、発表会という人前で弾く場を、決して軽く考えてほしくはありません。
ある程度の緊張感をもって、聴いていただくという謙虚な気持ちで臨んでほしいものです。
この子は、そして「嫌だ、出たくない」という気持ちを持つすべての子は、そのことをすでに分かっている、ということでもあります。
そうしたことからも、この気持ちを大事に受け止める必要があると感じています。
その気持ちと葛藤してほしいと考えます。
積極的な気持ちで出てほしいから
「緊張する、嫌だ」という気持ちとしっかり向き合って、その上で最終的には「出る」と、自分の意思で決めてほしい。
こう思っています。
なので、「全員参加」をやめました。
出るかどうかを自分で決めてほしいのです。
初めから参加することが決まっていては、どこまで”葛藤”ができるのか・・。
緊張を克服して気持ちよく出られた、ということもあると思いますが、嫌々参加した、ということになる可能性も高くあります。
それでは、発表会をする意味はあるのか・・と思ってしまいます。
自分の気持ちと向きあった結果「出ない」という結論になっても、その子が自分で決めたことならそれだけで価値がある。
これもまた、発表会をする意味、になるのではないかなと思います。
発表会がなかったら、経験できなかったことですから。
「出てほしい」という私の気持ちはしっかり伝えます
「私は出てほしい。でも、決めるのはあなた。」
今は、こうしたスタンスで話を進めています。
上に挙げた子のようなことは、あれ以降ありません。
でも、「強制参加ではありません」ということをきちんと伝えつつ、発表会をすることの意味も要所要所で伝えるようにしています。
これまで、人前で生演奏をする形の発表会は8回行いました。(2020年、21年はコロナのため録画を見ていただく形)
レッスンを始めたばかり、復帰したばかりという子以外は、ほぼ全員参加しています(もともと少ない人数ですが)。
みんながみんな積極的な気持ちで出演しているのかどうか、本人たちに聞いてみなければわかりません。
でも、少なくとも「出なくてはいけないもの」とは思っていないのではないかな。
であれば、それでいいと思っています。
発表会「大きなホールのいいピアノで」は無理だけれど
私の教室の発表会は、これまで8回行ってきたうちの4回が普段のレッスン室、4回が公共のホールの練習室を会場に行いました。
レッスン室も練習室もグランドピアノです。
もちろん、どちらのピアノもきちんとメンテナンスのしてあるものです。
でも、思ってしまうんですよね~。もう少しいいピアノで、そして大きなホールで弾かせてあげたいって。
それこそ、ピアノの発表会じゃなきゃなかなか経験できないことだしって。
で、思うんです。
おいおい待てよ、発表会で一番大事にしなくてはいけないことは、大きなホールで弾くこと?いいピアノで弾くこと?
人前で弾く、という経験をすること。それに向けて、考え、悩み、そして練習すること。
大事なのはこれ!
これからも忘れずにいきたいと思います。
任意参加、としている間は、なかなか大きなホールで行うことは難しいかもしれませんね。
というか、うちのような10人程度の生徒数でホールを借りるなんて、どれだけ参加料をいただかなければいけなくなるのか。
そもそもムリ!
こじんまりとした場所で、こじんまりとやっていますが、それでも出演する子どもたちは、そこに向けて一生懸命練習し、緊張しながら丁寧に演奏しています。
これで十分ではないかな、と私は思っています。
ちなみに、参加料については、このような場所なので5000円を切る値段です。でも、赤字を出さずに行っています。
その辺は、きっちりさせていただいています。
(公開日:2017年4月18日 最終更新日:2022年12月7日)
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