以前から気になっていたこの『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』。
ついに購入し、中身を見てみたら・・これぞ私の欲しかったもの!と感動。
音階(スケール)を弾くだけではなく、仕組みをしっかり理解するのに最適だと感じました。
ただ、練習法も説明もかなり細かく、合う、合わないがあるかもしれません。
今回は、内容を詳しくご紹介します。
参考にしていただければと思います。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』について
中身を詳しく見る前に、この本そのものについて紹介します。
初版は2016年8月。音楽之友社から出されています。
著者は樹原涼子さん。あの大人気ピアノ導入教本『ピアノランド』の人です。
関連記事→『ピアノランド』についてこちらの記事で詳しく紹介しています。
「『ピアノランド』シリーズがスタートして25周年を記念して」と、著者によるまえがきに書かれています。
まえがきには以下のようにあります。
テクニックは音楽を自由自在に表現するために必要なもので、日々磨いていくべきものですが、意味もわからず指を動かす習慣は「何も考えないで弾く人」を生み出してしまいます。私は、弾くたびに音楽的知識と感性が豊かになるようなテキストを作り、楽譜を見てよく考えて弾く人、自分の音をよく聴く人、真に美しい音を求める人を育てたいと願い、音楽的教養とテクニックの両立をと考えました。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』より
「意味もわからず指を動かし、何も考えないで弾く人」という言葉は、痛いところを突かれたなぁと感じました。
著者の思いが伝わる文章ですね。
スポンサーリンク
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』「スケール」について
こちらの本は、次の3つの章に分かれています。
- スケール
- モード
- コード&アルペジオ
題名の通りですね。
まずは「スケール」についてのページから詳しく書いていきます。
並行調でセットに
長調短調合わせて24ある「調」ですが、並行調でセットになって書かれています。
つまり、調号が同じ長調と短調で組まれているということですね。
はじめのハ長調とイ短調はそれぞれ2ページずつですが、次からは左ページ長調、右ページ短調という見開きの形になっています。
長調で5つの課題、短調で4つの課題に分けられています。
長調の課題の内容は・・
まずは、長調の課題についてです。
その前に・・・
長調のページの1番上には、音階を第1テトラコード、第2テトラコードに分けた楽譜の図が書かれています。
⇩「テトラコード」とは、こちらのことです。
こちらは私が作ったものなのですが、すべての長調のページの上部に⇧このことを説明した楽譜が載せられています。
次からが課題。
「スケールの練習方法」というページに、それぞれの課題の練習法がかなり細かく書かれています。
それを少し簡単にして、以下にまとめます。
- 指づかいを確認しながら美しく弾く。調の名前と音程関係を覚える。
- 指づかいを書き込む。カデンツ(ハノンと同じ)は、ドミナントモーション(Ⅴ₇からの解決のエネルギー)を感じて終わる。
- 反行形を使ったスケール練習。両側に離れていく、近づいていくエネルギーを表現する。カデンツのメロディーラインを美しく。
- 離れた位置からスタートするスケール練習。カデンツは内声をデリケートに感じてバランスよく機能を表現する。
- 3度、6度、5度、4度の音程を感じて弾くスケール練習を下記の2通りで行う。
- 【二声】両手で2つの音程が寄り添うようにレガートで演奏する。
- 【重音】片手ずつ、指定の指づかいで重音で、ノンレガートで演奏する。慣れたら両手奏。
各調の楽譜ページにも、さらに細かく弾き方等の説明書きがあります。
短調の課題の内容は・・
次に、短調についてです。
こちらも課題に入る前のページの上部に、長調と短調の関係を表した楽譜が載せられています。
「長調の第6音から始まるのがその並行調にあたる短調」ということが、楽譜の図で表されているわけですね。
こちらも、すべての短調のページに書かれています。
そして、課題に入ります。
短調には、「自然的短音階」「和声的短音階」「旋律的短音階」の3つがあります。
それぞれに以下の4つの課題があります。
こちらも、「スケールの練習方法」というページに書かれていることを簡単にしてまとめます。
- 平行調の仕組みを理解して指づかいを覚える。
- 3つの音階の名前と違いを覚え、スムーズに弾けるようにする。
- それぞれのオクターブユニゾンと反行形のスケール、それぞれのスケールの音のカデンツを弾く。
- 和声的短音階のみ、3度、6度のハーモニーの練習をする。
短調は、はじめに出てくるイ短調のみ、3つの短調の音階それぞれに課題が楽譜で書かれています。
でもそれ以降は1ページになっていて、楽譜になっているのは
- 3つの短調の音階
- 自然的短音階の反行形
- 3つの短調のカデンツ
- 和声的短音階の3度の音程の楽譜
のみです。
なので、必要な時にはイ短調のページで確認しながら進めていくことになりますね。
五度圏
24すべての調が上に挙げた形で示された後、「五度圏」のページが見開きであります。
見開きの左上から右下にかけて斜めに、各調の音階がテトラコードに分けて載せられています。
右ページ上部に五度圏表があり、左ページ下部に自分で音階を書き入れて五度圏表を完成させるようになっています。
関連記事→「五度圏」について書いた記事です。
半音階、全音音階
次のページには、半音階、全音音階について、それぞれ1ページずつ書かれています。
そして、それぞれ3つの課題があります。
少し簡単に書き換えて、以下にまとめます。
- 半音階の課題
- 1本指で音程を感じながら弾く
- 指づかいについて
- 指づかいを考えながらオクターブユニゾン⇒反行形を弾く
- 全音音階の課題
- 黒鍵3つを含むパターン、黒鍵2つを含パターンそれぞれを雰囲気を感じながら弾く
- 上の2つのパターンをクロスハンドで弾く
- 上の2つのパターンの音で増三和音を弾く
ディミニッシュトスケール、その他のスケール
「スケール」の章の最後は、ディミニッシュトスケールとその他のスケールについてです。
それぞれ1ページずつにまとめられています。
ディミニッシュトスケール
本題に入る前に、まず、ディミニッシュトスケールって何なのか、簡単に説明します。
本書には以下のようにあります。
Cディミニッシュトスケールの構成音は以下の通りです。
ということで・・ディミニッシュトスケールについては、3つの課題があります。(こちらも簡単に書き換えてあります)
- ディミニッシュトスケールの課題
- 3種類(C、C♯、D)のディミニッシュトスケールを弾く
- 音の構成を考えながらディミニッシュトコードを弾く
- それぞれ3つに分けられる全12のディミニッシュトスケールを弾く
3の、「3つに分けられる」というのは以下のことです。
- C・・・E♭、F♯、A
- C♯・・E、G、B♭
- D・・・F、A♭、B
はじまりの音が変わるが構成音が同じということですね。
その他のスケール
「その他のスケール」では、五音音階が説明されています。
五音音階というのは、5つの音でできている音階です。
日本の昔ながらの音階もそうですし、世界中にいろいろな五音音階がありますね。
紹介されているのは・・
日本の五音音階としてわらべ歌や沖縄音階。
その他の五音音階として黒鍵の五音音階とヨナ抜き音階。
マイナーペンタトニックとブルーススケールについても書かれています。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』「モード」について
次は、モードについて書かれています。
まずは、「モードのしくみ」として、1ページを割いて説明されています。
そのあと、実際に弾いてみるという段階に入ります。
「モードのしくみ」について
1ページを使って、モードのしくみの説明があります。
まずは、現代一般的に使われる長調、短調が、アイオニアンモード、エオリアンモードと同じ構成音だということが、楽譜を示して説明されています。
そして、中心音(調性音楽でいう主音)が変わることで変化する各モードについて書かれています。
現在も使われているモードを紹介する、ということで、以下のモードが書かれています。
- 第2音が中心音・・・ドリアンモード
- 第3音が中心音・・・フリジアンモード
- 第4音が中心音・・・リディアンモード
- 第5音が中心音・・・ミクソリディアンモード
- 第7音が中心音・・・ロクリアンモード
また、各モードの音の並び方の違いも表で示されています。(「全音+全音+半音・・」とか「全音+半音+全音・・」とか)
楽譜のページについて
「モードのしくみ」の説明ページの後から、各音を中心音とした各モードの楽譜が示され、実際に弾くようになっています。
C、D、E、F、G、A、B、D♭、E♭、F♯、A♭、B♭の各音を中心音とした、上に挙げた7つのモードの楽譜が示されています。
その左側には、調性音楽でいうところの長調の楽譜が載せられていて、関係性がわかるようになっています。
例えば・・
「Cドリアンモードは、変ロ長調の第2音Cから始まる」ということが、楽譜を示して説明されている、ということです。
各ページの下には・・・
「〇を中心音とするモード」ということで、1ページずつとられているわけですが、各ページの下にはモードを学習するコツ、ヒントの様な事柄が書かれています。
以下のようなこと。
- モードの練習の進め方
- モードを覚えるコツ
- モードの曲を見分けるには
- 各モードの使われた作品紹介(導入教材『ピアノランド』の曲や著者樹原さんご本人作曲によるものが多い)
こうした中から1つ引用してみます。
モードの曲を見分けるには?
「この不思議な雰囲気は、もしかしてモードかな?」と思ったら確認してみましょう。
「ピアノランド スケール・モード・アルペジオ」p.40
長調、短調、五音音階などではないか確認→使われている音列を書き出す→中心音を探す→モードのページの該当する中心音の中にその音列があるか、特徴音が使われているかを調べる→該当するものがあれば、○○モードとわかります。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』「コード&アルペジオ」について
最後の章が、「コード&アルペジオ」です。
ここには、次のようなことがまとめられています。
「コード&アルペジオの練習方法」について
まずは1ページを使って、「コード&アルペジオの練習方法」について書かれています。
次のページから楽譜が載せられていますが、これをどのように練習していけばよいか、ということが、6つに分けて書かれています。
楽譜のページは、
- 基本形
- ポジション移動
- アルペジオ
- 転回形
- 転回形のアルペジオ
- 根音
の6つの楽譜が1段で書かれていますが、それぞれの弾き方ということですね。
主には、スムーズに弾いていくために、どのような指づかいをすればよいかということです。
子どもに弾かせること考慮してか書かれていて、「手が小さい場合は~~」ということが要所要所で出てきます。
楽譜のページについて
次のページから楽譜が載せられ、実際に弾いていくことになります。
載せられているのは、C、D♭、D、E♭、E、F、G♭、G、A♭、A、B♭、Bの各音を根音とした12のコードの楽譜です。
12のコードとは、Cを根音とした場合・・・
C、Csus4、C6、C7、Cmaj7、Cmaj7、Cm、Cm6、Cm7、Cm7♭5、Cdim7、Caug
の12個です。
これらのコードを上記の6つの弾き方で弾いていく、ということになります。
楽譜のページは、基本的には1つの根音に1ページですが、一番最初の「C」の項目だけは、見開き2ページを使って6つすべてが楽譜になっています。
次から「ポジション移動」「転回形のアルペジオ」の楽譜はなくなり、1つの根音1ページになり、自分で考えて弾くことになります。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』まとめ 1冊でスケールやコードについて総合的に学べる
スケールに特化した内容で、これだけ分かりやすくきっちりまとめられている本は他にあるんでしょうか?
私個人のことでいえば、モードについてしっかりと知ることができたのがうれしかったです。
これまでは名前だけしか知らないというレベルでした。
これは何らかのモードだな、と思っても何なのかがわからない。
音楽辞典などを引っ張り出して調べてもよくわからない・・・モヤモヤモヤ・・・
こんな状況だったのが、これを読んで、「お~~!そういうことか~~」となりました。
実際に弾いて学んでいくものなので、文章ではなく楽譜で説明されているのがいいなと思います。
そして、練習法まで書いてある!
子どもたちに使ってもらうことを想定した作りになっていて、練習法はかなり細かいですね。
ただ内容が盛りだくさんで、楽譜はとても小さいですし、楽譜のページにも説明書きがあって少々ごちゃごちゃした感じです。
つまり、見にくい。
初心者の方だと、読むのが嫌になってしまうかも・・説明書きも音符も・・・
初心者向きではないですね。
内容はとても充実しているので、独学初心者の方でも1冊持っておくといいかもしれません。
でも、普段の練習用としては使いにくかもしれません。
レッスンで使う場合でも、先生がしっかり中身を理解していないと使えないと思います。
自分の教室では、まあまあ進んだ子の音階練習に使っています。
(公開日:2018年2月23日 最終更新日:2024年7月23日)
コメント
はじめまして。
こちらのサイトを参考に「ピアノランド スケール・モード・アルペジオ」を購入したのですが楽譜や文字が小さいように感じ、内容も自分にはまだ難しく別のものを探しています。
自分は独学で一年前よりトンプソンを開始、現在BOOK2後半(バイエル後半に相当)を履修中です。
これまでトンプソン一本でやってきたのですが基礎練習の必要性を感じて本書を購入しました。
当初は「おとなのハノン ~指の動きをよくするピアノ・トレーニング・ブック~」を考えていたのですが、youtubeのとある講師の方が動画で「スケール練習が肝心」と言われているのを聞きかじり「NEW こどものスケール・アルペジオ」と迷った末、本サイトでも評価が高く、表紙のイラストが美しい「ピアノランド スケール・モード・アルペジオ」を選びました。
地方なので近くに専門書の豊富な書店がなく、自分の目で確かめて購入できないのが残念です。
よろしければ、次に選ぶべきトンプソンと併用できる教本のアドバイスをお願いいたします。
高原様
コメントありがとうございます。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』を購入されたとのこと。
確かに、こちらはかなり内容が濃く、難しいと感じられるかもしれません。
でも、一冊持っておかれると、のちのち「調」に関して分からないことがあった時に開いてみるなど、役に立つのではないかなと思います。
他のスケールに関する教本ですが、指練習として使われるのでしたら、コメントにも書かれている『おとなのハノン』も良いのではないかと思います。
全長のスケールとアルペジオが、指づかいが細かく書かれた状態で載せられています。(カデンツはⅠとⅤ7のみですが)
抜粋ですが『ハノン』も載っているわけですし。
よろしければお読みください。→https://daisukiongaku.com/introduction-of-otonanohanonn/
いかがでしょうか?ご検討ください。