感動する演奏ってどんなもの?必ずしも”上手”な演奏ではない

私の考え

音楽を聴くと感動します。時には涙が出るくらい。

人は、どんな演奏に感動するのでしょう。

それは、音間違えの一つもないような、いわゆる”完璧な演奏”でしょうか?

そうではないように思います。

私が思う「感動する演奏」について、実際に経験したことを元に、考えを書いてみようと思います。

私が感動した演奏~2つの出来事

ミスタッチの一つもないような演奏に、人は感動するわけではありません。

難易度の高い曲を懸命に弾きこなした、という演奏に感動するわけでもありません。

そのことを知らされた、二つの経験があります。

ひとつは、大人の初心者の方の演奏にとても感動した、という経験です。

大人の初心者の方の演奏に感動!

私が大人になってから師事した先生の教室は、大人の生徒さんの多い所でした。

昔からあこがれていたピアノを、仕事の退職、または子育てを終えて思い切って始めた、という方が多く通っておられました。

つまり、大人の初心者の方がたくさんいらっしゃったのですが、その方々の演奏がとてもステキだったのです。

その教室の 先生の方針は、どんな方でも発表会の舞台に立ってもらう、というもの。

なので、全くの初心者の方でもホールの舞台で演奏されます。

人生の大先輩といえる方々が、見るからに緊張され、ピアノを弾かれるのです。

その演奏は、本当に心動かされるものばかりでした。

なんというか・・人生背負って弾いているというような奥深さを感じます。

本当にお好きなんだな、あこがれていたんだな、ということが伝わってくる。

一音一音の丁寧さ、フレーズ間の絶妙な間・・・

技術的にはまだまだなんです。それこそ私の方が難しい曲を弾ける。

でも、私はこんなふうに演奏できているんだろうか・・・と本気で考え込みました。

あ~、感動する演奏って難しい曲を弾きこなすような技術じゃないんだなぁ・・

この時、心からそう思いました。

曲への想いが、ピアノを弾ける喜びが 、もう、ひしひしと伝わって来る。

ご本人たちにしたら、「緊張しかない!」という気持ちなのかもしれません。

でも、その緊張感すら楽しんでいる、というか・・

人に聴いてもらう喜びになってしまっている、というか・・・

みなさんの演奏を聴いているときは、自分の出番を待っている状態なのですが、さて、その時の自分を振り返ると・・

間違えませんように!間違えませんように!

その時の私の演奏、みなさんにどう伝わったでしょう。

少なくとも、何年たっても、私があの時のみなさんの演奏を思い返すような、そんな印象に残るものではなかっただろうと思います。

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子どもたちは純粋に音楽を聴いている

もう一つの経験は、自分の教室のレッスンで子どもたちから教えられたことです。

以前の数年間、毎年3月末にグループレッスンを行っていました。

そこでは、ひとりひとりに「今年度レッスンをした曲で一番のお気に入り」を弾いてもらいます。

そして、みんなの演奏を聴いて「もう一度聴きたいと思った曲」を選んでもらうアンケートを行い、 最も票が集まった子には、もう一度演奏してもらいました。

ある年に、二人の子が同数トップとなり、二人ともに弾いてもらいました。

演奏してくれた曲は、二人ともわりと簡単な曲。他にもっと難しい曲を弾いた子はいました。

それに、ミスタッチひとつなく完璧に弾き通したというわけではなく、ちょっとまちがえて止まってしまったところもありました。

でも、選ばれたのはこの二人の弾いた曲。

こういう曲が選ばれたのは、私としてもちょっと意外な結果でした。

子どもたちがアンケートに書いてくれた感想は

とってもきれいな曲だったから

クリスマスらしい曲だなと思ったから

といったもの。(一人はクリスマスの曲でした)

間違えて止まっちゃったことなんて、全く気にしている様子はありません。

もちろん、別の曲を選んだ子もいます。

でも、書かれていた感想に「一つも間違えないで弾いて凄いと思ったから」というようなものはありませんでした。

その時、子どもたちは曲の難易度や演奏の完璧さを聴いているんじゃない、もっと純粋な気持ちで聴いているんだ、と思いました。

とてもうれしく思った瞬間です。

自分も含め、少し弾けるようになってくると、自分と比べてうまいとか下手だとか・・難しい曲だとか簡単な曲だとか・・

そんな基準で聴きがちです。

演奏の良さはそんなところに表れるんじゃない。

子どもたちはそこら辺をわかっている、と思いました。

やっぱり、二人の演奏からは何かが伝わったのだろうと思います。

感動する演奏をするには、その曲がどれほど好きかにかかってくる

感動する演奏は、演奏者のその曲への愛情が伝わってくるもの、といえるのではないかと思います。

好きな曲だからこそ、曲への思いが演奏に込められ、それが聴く人の心を動かす。

そういうことではないかと。

子どもたちには、好きな曲を弾いてほしい。

「好き」という気持ちが伝わるように演奏する事、を大事にしてほしい。

それが、演奏する喜びになるはずです。

そうしたことが、結局は、人を感動させる演奏につながるのだと思います。

(公開日:2016年9月22日 最終更新日:2023年12月1日)

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