全曲スポーツがテーマになっているピアノテクニック教本『ピアノ・スポーツ』を紹介します。
ピアノとスポーツをミックスさせるって、なんて斬新!
面白いですよね。
様々な音の動きをスポーツからイメージする、というこのテキスト。
ピアノの他に何かスポーツをしているような子(人)には、とってもいいのではないでしょうか。
1巻のみですが、内容を詳しく紹介します。
『ピアノ・スポーツ』とは?
『ピアノ・スポーツ』は、アメリカの教育作曲家キャロリン・ミラーによるピアノテクニックの教本です。
全部で4巻あり、すべてスポーツがモチーフになっています。
今回は、1巻を詳しく紹介します。
著者キャロリン・ミラーについて
キャロリン・ミラーは、出版元の全音楽譜出版社で”ギロックの仲間たち”と紹介されるうちの一人です。
ピアノ教師として指導してきた経験をもとに、レッスン用の曲を多く作曲しています。
この『ピアノ・スポーツ』は、その代表的教本ということです。
『ピアノ・フィエスタ』他数冊の楽譜集が全音から出版されていますね。
なぜピアノとスポーツ?
ピアノとスポーツって、結構かけ離れた存在のように思います。
なぜか?について、本にきっちり書かれていますので抜粋します。
アメリカでは子どもたちはほとんど何かのスポーツをします。
(中略)
教育作曲家であるキャロリン・ミラーは、そんな生活の興味の大半を占めるスポーツなら、ピアノ学習者にとって動きを理解しやすく、アーティキュレーションのイメージを浮かべやすいだろうと考えました。
(中略)
それぞれの動きとピアノの練習とをむすびつけ音楽のイメージと指と身体のトレーニングを目指しています。
『ピアノ・スポーツ』前書き 「なぜ『ピアノとスポーツ』?」より
この教本はもともとアメリカのもの。
アメリカの子どもたちは、みんな何かしらスポーツをするんですね。
日本の子はどうだろう・・
私が子どものころと比べると、地域のスポーツチームが増え、活動も活発なように思うけれど。
みんな、というほどではないような・・。
そのあたりが日本の子どもに合うかな・・という印象はあります。
でも、体を動かすことが好きだったり、実際にスポーツをしている子にとってはイメージしやすいのではないでしょうか。
スポンサーリンク
どんなスポーツ?
スポーツといってもいろいろありますが、取り上げられているのは次の5つです。
- バスケットボール・・12曲
- 野球・・13曲
- 陸上競技・・8曲
- 超冒険的なスポーツ・・12曲
- サッカー・・11曲
全56曲。
これらのスポーツの動きがテーマになっていて、それぞれ8~13の練習曲が入っています。
たとえば、1の「バスケットボール」では、
- ドリブル
- フリー・スロー
- ジャンプでシュート
といった題名が。
3の「陸上競技」では、
- ハードル
- 三段跳び
- 幅跳び
- なわとび
など。
4の「超冒険的なスポーツ」って何かというと、
- バンジージャンプ
- 山登り
- 急流下り
- サーフィン
などが題名になっています。
そして、そのスポーツの特徴的な動きが音になっています。
『ピアノ・スポーツ1』の特長
『ピアノ・スポーツ』の最大の特長は、スポーツがモチーフになっていること。
その他には以下のような特長があります。
- 曲の長さは4小節~20小節
- 使用音符は8分音符まで
- 中央ドから左右に広がる
詳しく見ていきます。
曲の長さは4小節~20小節
曲の長さは、1番短くて4小節。1番長くて20小節(1ページ分)です。
8小節のものが1番多いですね(全56曲中41曲)。
各スポーツの最後の曲は、これまでのまとめという位置づけになっていて、これが長い曲なんです。
題名になっているのは「延長戦」「決勝戦」「試合の日」など。
これまで学んだ弾き方を元に、物語的なイメージを広げることが目的になっています。
使用音符は8分音符まで
出てくる音符は、全音符、4分音符、2分音符、付点2分音符、8分音符です。
ほとんどが4分音符の曲ですね。
最も短いのが8分音符。5の「サッカー」に入って初めて出てきます。5曲あります。
音の並びは、同音か隣り合った音のみです。
中央ドから左右に広がる
音域は中央ドから左右に広がる形で広くなっています。
つまりこういうこと⇩。
音符を読みやすく、鍵盤の位置も把握しやすい形ですね。
3の「陸上競技」からクロスハンドが出てきますが、それまではすべて5指固定で弾くことができます。
『ピアノ・スポーツ1』の難易状況
ここで、このテキストの難易状況をまとめたいと思います。
『ピアノ・スポーツ1』は先へ進むにつれて少しずつ難しくなっています。
以下のような感じです。
- バスケットボール
- 片手ずつドレ、ドシの曲から始まって、右手ドレミファ、左手ドシラまで
- 両手とも3度まで飛ぶ音あり
- 1曲目からスタッカートあり
- 両手とも2度3度の重音あり(指は1,2と1,3)
- 両手とも2音のスラーあり(3度飛ぶ音のスラーも)
- 4分の3拍子あり
- 野球
- 音域は両手とも5度まで広がる
- 両手とも5度まで飛ぶ音あり
- 右のみ指3,5の重音あり
- 右のみ3和音あり(長3和音)
- 両手同時が始まる(左右の指づかいが同じ形)
- 陸上競技
- クロスハンドあり
- 右のみ指2,4の飛ぶ音あり
- 左右ともオクターブ飛びあり
- 超冒険的なスポーツ
- 両手とも♯♭出てくる(長短調、半音階)
- 両手とも指変えの同音連打あり
- 両手とも保持音あり
- 両手とも指くぐりあり
- 右のみ黒鍵含む3和音(短3和音)あり
- サッカー
- 8分音符が出てくる
- 左指2,4の飛ぶ音、1,4の飛ぶ音あり
- 右指2,5の飛ぶ音あり
- 右指2,5の重音あり
基本的に、「右手をまず難しくしてそれから左手へ」という順序になっています。
音域もまず右から広がり、飛ぶ音や指くぐり、指替えなどもまず右からはじめます。
和音も3和音になったり黒鍵が出てきたりするのは右からですね。
また、和音の進め方がていねいだなと思います。
- 右の1,2と1,3の指の重音
- 3和音
- 黒鍵を含む3和音
- 2,4や2,5の指の重音
と進みます。
左手で弾く3和音は出てきません。
『ピアノ・スポーツ1』楽譜の見やすさは?
紙面を少し見てみます。
五線の幅は約8㎜。大譜表にすると3.3㎝ほどになります。
1曲8小節のものが一番多い、と書きましたが、4小節ずつ2段で1曲になっています。
そして、1ページにつき2曲ずつ載せられています。
長い曲では1ページ1曲ですが、楽譜はほぼ4段にまとめられています。(5段の場合あり)
楽譜の右肩に、何に気を付けて弾くのか、といった2~3行のコメントがあり、イラストも所々にあります。
でも、ごちゃごちゃ感はなく、すっきりとして見やすいのではないでしょうか。
イラストは2色刷りで派手ではなく、動きのある絵なんだけれど邪魔にならない感じです。
いろんなスポーツをやっているところの絵ですが、触角らしきものがあるんだけど、これって虫⁇
『ピアノ・スポーツ1』まとめ 『ミニブック』と『導入書』の中間くらい?
今回紹介した『ピアノ・スポーツ』、『バーナム ピアノ テクニック』シリーズととてもよく似ています。
難しさでいえば、『ミニブック』よりはちょっと難しく『導入書』よりはちょっと簡単、といった感じでしょうか。
関連記事→『バーナム ピアノ テクニック ミニブック』をこちらの記事で紹介しています。
関連記事→『バーナム ピアノ テクニック 導入書』をこちらの記事で紹介しています。
全曲4小節の『ミニブック』と比べて『ピアノ・スポーツ』は長い曲もあります。
また、1曲の中で様々な要素が混じっていたりします。
でも、中央ドから左右に広がり「音は違うが指は同じ」という両手奏までしか出てきません。
なので、いきなりユニゾン(音は同じで指は違う)から始まる『導入書』よりは簡単だと思います。
また、いかにも「指の練習」というよりは少し”曲っぽい”ように感じます。
特に各章のまとめの曲。この曲が長いのは、そこを考えてのことのようです。
なので・・
- スポーツに興味のある子
- 長い曲を弾く集中力のある子(長い曲を早くから経験させたい場合も)
- 指の練習曲でも”曲らしさ”を求める場合
などは、この『ピアノ・スポーツ』はいいのではないかと思います。
実は、自分の教室ではこれまでバーナム一辺倒でした。
でも、『ピアノ・スポーツ』を知ってからはこちらも使うようになりました。
「この音の流れをどう弾くか」といった、”表現”に踏み込んでいける内容がとても良いなと感じています。
(公開日:2017年12月28日 最終更新日:2024年7月23日)
関連記事
→『ピアノ・スポーツ』と『バーナムピアノテクニック』を比べてみました。
→『バーナムピアノテクニック ミニブック』をこちらの記事で紹介しています。
→『バーナム ピアノ テクニック 導入書』をこちらの記事で紹介しています。
コメント