「楽譜を開いて弾く」というレッスンしか受けてこなかった私・・。
音楽経験、そして、人生経験も積み、音楽療法を勉強する中、「音楽ってもっと自由でいいんじゃない」という気持ちが強くなりました。
そして、ピアノ教室を開いてレッスンをする中「もっと音楽で遊びたい」という思いがありつつ・・でもどうしていいのか悩みつつの日々。
そして見つけた『即興演奏12のとびら』。
”音楽をつくってみよう”という副題がついていて、楽譜から離れて、音楽と遊ぶためのヒントがいっぱいのこの本。
中身をじっくりご紹介しようと思います。
『即興演奏12のとびら』の12って?
早速中身を紹介していきます。
タイトルの”12”って何か・・?目次は以下の通りです。
- オノマトペで遊ぼう!
- 五音音階の世界
- コードの響き
- アルペジオって万能!
- かざる、ハモる、くっつく半音階
- 全音音階の魔法
- モードは不思議
- 循環コードをつくろう
- リズムでキメる!
- 気持ちをつたえよう♡
- 変化はステキ
- 合わせ技でいこう!
以上の”12”です。
1つの単元の中は4つの段階に分かれていて、少しずつ発展させていくようになっています。
目次のタイトルだけ見てもいまいち意味が分からないと思うので、以下にもう少し詳しく紹介します。
1、オノマトペで遊ぼう
ぽつぽつ、ザーザー、ピカピカ、ふわふわ・・・
こういった言葉(擬音語、擬態語)が「オノマトペ」ですね。これを使ってメロディーをつくるわけです。
まずは、いろいろなオノマトペを探してみることから始め、そのイントネーションから音型をつくります。
それを繰り返したり、音の高さを変えたりしてメロディーをつくります。
それに別の言葉をくっつけたり、音型をさかさまにしたりしてフレーズをつくったりしていきます。
2、五音音階の世界
「五音音階」は、文字通り5つの音でできている音階のことですが、世界中の民族音楽の中に存在していますね。
もちろん日本にも。
まずは、長音階、半音階から自分の好きな5つの音を選び、メロディーを作ってみることから始まります。
そして、実際にある五音音階を使ってメロディーを作ってみます。
5つの音の鍵盤に手を置いて、弾きたいように弾いてみる、という形になっています。
3、コードの響き
「コード」とは、和音のことですね。
まずは、先生に弾いてもらったコード(CとCm)をじっくり味わうことから始まります。
そして、浮かんできたメロディーを歌ったり、コードに使われている音を使ってメロディーを作ったりします。
最後にCsus4、Cmaj7のコードを聴いて、メロディーを思い浮かべ、歌ったり弾いたり、五線に書いたりします。
4、アルペジオって万能!
「アルペジオ」はコードを一つ一つ分解したものですね。
まずは、分解して弾いてみることから始まります。
そして、その音をジグザグに弾いたり高さを変えて弾いたり、上へ下へすばやく弾いたり・・
いろいろとやってみます。
5、かざる、ハモる、くっつく半音階
まずは、アルペジオに半音で飾りを付けてみることから始めます。
そして、半音階を入れて作ったメロディーを、3度や6度など一定の音程で一緒に弾いてハモらせます。
また、半音階を順番に弾いていくうち、途中で止めたり戻ったり、行ったり来たりしたり・・離れた音に向かってポルタメントするように半音階でつなげてみたり。
6、全音音階の魔法
「全音音階」とは、全音関係にある音でできた音階のことですね。
まずは、いろんな音から始まる全音音階を作ることから始めます。
そして、既成の曲を全音音階に直して弾いてみます。
また、最初にやった「オノマトペ」を全音音階で弾いたり、曲の途中に全音音階で飾りをつけてみたりします。
7、モードは不思議
「モード」とは、いわゆるクラシック音楽が発展してくる前に主に使われていた音階(音列)で、教会旋法といわれますね。
今も使われています。
この項では、黒鍵を使わない7つのモードをじっくり味わうという内容です。
本書の著者、樹原涼子さん作曲のモードを使った曲を聴き、それぞれの特長を知るということですね。
モードを歌ってみたり、その音を使ってメロディーを作ってみたりします。
8、循環コードをつくろう
「循環コード」とは、コードの流れのことですね。
よく使われるいくつかのパターンがあるので、それを味わうことから始めます。
実際に弾いてみて、思いついたメロディーをうたったり、別のコードを加えてみたりします。
また、自分で循環コードを作ったり、それにメロディーをつけたりしてみます。
9、リズムでキメる!
まずは、4分音符だけの単純なリズムに音をつけて、メロディーにしてみます。
そして、自分でリズムを作っていきます。
4分音符で分けられるリズムカード(8分音符2つ、とか、3連符、とか)を使うと作りやすいですね。
最後に、自分で作ったリズムのメロディーをコードで弾いてみます。
10、気持ちをつたえよう♡
こちらでは、まず、本書の著者、樹原涼子さんによるピアノ教本『ピアノランド』の中から、”気持ちをつたえている曲”を探すことから始めます。
そして、自分の”伝えたい気持ち”を書いてみて、リズム、メロディーを作っていきます。
具体的な状況を例に、どんな音がいいかな‥と考えていきます。
11、変化はステキ
時間の経過を、音を使って変化させていくのが音楽という芸術です。
この「変化」を具体的に見ていくのがこの項の内容です。
まずは、本書の著者、 樹原涼子さんによるピアノ教本『ピアノランド』 の曲をいくつか聴いて、いろいろな変化を感じることから始めます。
そして、自分で変化を考えてみたり、実際の方法をまねしてやってみたりします。
12、合わせ技でいこう!
これが最後の単元になります。
今までやってきたことを振り返り、それらを組み合わせてみます。
どれとどれを組み合わせるのか、どんな順番で組み合わせるのか、いろいろと考えていきます。
そして、自分の好きな曲の楽譜を開いて、実際の曲がどのようになっているのかを見てみます。
最後に、自分の弾いてみたい内容を書き出し、演奏をしてみる、ということで終了です。
『即興演奏12のとびら』テキスト形式になっています
『即興演奏12のとびら』の内容を、各単元ごとにまとめてきました。
この本は、即興演奏をするための「解説書」ではなく、始めから順番に進めていくテキストの形式になっています。
思いついたメロディーや考えたことを実際に書き込めるように、五線やスペースが設けられています。
一つ一つの単元をそうした方法で進めて行き、最後に即興演奏をすることを目指しています。
本書の「はじめに」には、以下のようにあり・・
『即興演奏12のとびら』は12のレッスンを1年でマスターできます。例えば、1カ月に1レッスン(中は4つに分かれているから、毎週1つずつ!)進めば1年。1ではレッスンに興味を持ってもらい、2で少し詳しく、3では実践、4で応用!と段階的に進みます。年齢や理解力によっては[中の4つに分かれている部分の]1だけでも、2まででもよし、レッスン12まで進んだら、2周め、3周めと繰り返してらせん階段状にレベルアップできます。
『即興演奏12のとびら』「はしめに」より
テキストとしての使用が想定されています。
細かな「解説」付き
それぞれの単元には、ページの下に「解説」が書かれています。
この単元の目的は何か、どのように進めるとよいのか。
かなり細かく書かれていますね。
用語の説明もされています。
子どもから大人まで幅広く使える
文章の書き方はとても分かりやすく、小学生くらいから十分に使えるのではないでしょうか。
かわいらしいイラストがところどころにあります。
でも、本文を邪魔するような派手なものではないので、大人の方も抵抗なく使えるのではないかと思います。
大人向けの解説ページが
実際、本書のはじめには「大人の皆さんへ」と題した3ページにわたる文章があり、大人の方も対象になっていることが分かります。
「即興演奏、アドリブってな~に?」というタイトルの文章で、クラシック音楽におけるアドリブ、ジャズやポップスのアドリブについて解説されています。
その最後には、次の様に書かれています。
ここで紹介した3つの楽語は「譜面から自由になる」喜びに溢れた言葉です。構築された美とは対極にある、偶然性を重んじた芸術の一つの形と言えます。
(中略)
「でも、準備なしに弾くなんて怖くてできな~い!」と言う方は、「準備なしに弾くための準備をご一緒に!」(笑)。そう、あり合わせの料理を作るためには、冷蔵庫をいろんな材料でいっぱいにしておきます。
『即興演奏12のとびら』「大人の皆さんへ」より
大人になってから即興に興味を持つようになった者としては、「譜面から自由になる」「準備なしに弾くための準備」という言葉に惹かれますね。
「即興のスペシャリストからのメッセージ」
本書の真ん中、単元6と7の間に「即興のスペシャリストからのメッセージ」と題して、プロの音楽家2人のインタビューが載っています。
こちらも、どちらかというと大人向けかもしれません。
もちろん子どもが読んでもいいですよね。
2人とは、朝ドラ「あまちゃん」の音楽を担当して一躍有名になった大友良英さん。
そして、ウィーン国立歌劇場バレエ団専属ピアニストの滝澤志野さんです。
二人の「即興って・・」という考えに触れると、「やってみようかな・・」という気持ちがわいてきます。
『即興演奏12のとびら』まとめ どれかを選んでやってみよう!
『即興演奏12のとびら』の内容を紹介してきました。
1から12まで順に進めていくテキストの形で書かれていますが、「自由に音楽と遊ぶための12の方法が書かれている」とも捉えられますね。
私自身はそう捉えたいなと思います。
自分の教室のレッスンでも、子どもたちのその時々の様子でどれか1つ選んでやってみる、という使い方をしています。
あまり難しく考えず、音楽であそぼう!という感じです。
これまでも似たようなことをやっていて、これからはその引き出しがずっと増えるぞ!と思ってます。
本書の「はじめに」の最後にも、
『即興演奏12のとびら』と名付けたのは、それが作曲の入り口でもあるからです。まずは音楽が生まれる瞬間を楽しみ、鼻歌を堂々と歌い、即興的な閃きを楽しみましょう!
あなたは、「12のどびら」のどこがお気に入りになるでしょうか?
『即興演奏12のとびら』「はじめに」より
とあります。
やるぞ~!と意気込まず、「これ、ちょっとやってみようかな‥」で始めてみるのも大いにアリだなと思います。
(公開日:2019年12月27日 最終更新日:2024年5月1日)
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