別のテキストを探していて偶然見つけたこの『ピアノランド こどものスケール・ブック』。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の前段階のテキストだということです。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』はかなり内容が濃いですが、それをかみ砕いて分かりやすく書かれているということですね。
「調」の世界は、大事だけど難解な部分も多いので理解が大変。
そんな風に感じている方、ぜひ手に取ってみてください。
関連記事→『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』をこちらで紹介しています。
『ピアノランド こどものスケール・ブック』って?
まずは、『ピアノランド こどものスケール・ブック』の基本情報から。
初版は2021年1月。音楽之友社から出版されています。
頭に「ピアノランド」とあるように、著者は、ピアノ導入教材『ピアノランド』シリーズの樹原涼子さん。
樹原涼子さんによる”はしがき”によると、この 『ピアノランド こどものスケール・ブック』 は、2016年出版の『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の
その入門編、「こども版」にあたるのが本書です。
『ピアノランド こどものスケール・ブック』「ようこそ『ピアノランド こどものスケール・ブック』へ!」より
ということです。
タイトルは”スケール・ブック”。
なので、内容は「スケールとモード」で、アルペジオは含まれていません。
アルペジオは『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』で、ということだそうです。
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『ピアノランド こどものスケール・ブック』の内容は?
それでは、内容を詳しく紹介していきます。
このテキストには「本書の使い方」というページが設けられているので、そちらに書かれていることをもとにまとめていきます。
「誰のための本か」
「本書の使い方」ページには、まず「誰のための本か」ということが明確に書かれています。
スケールを美しく弾きたいすべての人のために作りました。
『こどものスケール・ブック』本書の使い方「誰のための本か」より
特に、子どもにわかりやすく、を心がけました。
音楽的な知識を豊かにしたい、スケールの仕組みを知りたい、
スケールを弾く具体的な方法を学びたい方のための本です。
特に子どもに、ということはあるようですが、子どもが使うことだけを想定しているわけではないようですね。
「本書の構成」
次に、「本書の構成」という項目があります。
このテキストは、Lesson1~12に分けられています。
その具体的な内容を「本書の構成」では以下のようにまとめられています。
- Lesson1~3
- 「ドレミファソラシド」を研究
- 12の調の輪、五度圏の神秘を味わう
- Lesson4~6
- 「つやつやの美しい音」でスケールを弾く
- ポジション移動かぶせる⤵くぐらせる⤴
- Lesson7
- ハ長調と、並行調のイ短調を学ぶ
- Episode1~3
- 調性音楽に必要な概念・理論・経験を積む
- Episode1~3
- ハ長調と、並行調のイ短調を学ぶ
- Lesson8~11
- 調性音楽以外のスケールがあることを学ぶ
- Lesson12
- 全24調の残りの調(Lesson7以外)を学ぶ
- 全24調の残りの調(Lesson7以外)を学ぶ
つまり、こんな感じ⇩の順番で進められているということですね。
- 調性音楽の音階の基本(音階の音の並び、五度圏など)
- 音階の弾き方(指の動かし方や指づかい)
- ハ長調とイ短調で音階の各音の意味、短音階の種類、調号のつき方など
- 調性音楽以外のスケール(五音音階、半音階、全音階、モード)
- 残りの調すべて
そして、最後に「『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』で本格的にスケール学ぶ」と書かれています。
「本書のキーワード」
「本書の使い方」の右ページは、「本書のキーワード」という項目です。
文字通り、知っておいてほしいキーワードについて、その意味や指導するときの注意点などが説明されています。
キーワードは、「テトラコード」「五度圏」「ポジション移動」など6つ挙げられています。
さらにその下には、指導の際に重点を置いてほしいことや心構えといったことが、キーワードの説明の形で記されています。
例えば、「二段階導入法」や「できないときに責めない」といったことについてです。
このページは、実際にこれを使って教える「先生向け」ということですね。
『ピアノランド こどものスケール・ブック』「Lesson」の特長
上に紹介してきた「本書の使い方」の次のページから、いよいよLesson1が始まります。
その紙面の特長をまとめます。
大きく次の2つに分けて、それぞれの特長を見ていきます。
- Lesson1~11:スケールの仕組みなどについて理論的に学ぶ部分
- Lesson12:スケールを弾く部分
Lesson1~11
こちらは、スケールの仕組みなどについて、理論的に学んでいくページ内容になっています。
大きな特長は、「書き込み式」だということですね。
挿絵や図などを多く使って説明され、実際に書いて学んでいく形です。
例と同じように○で囲んだり矢印を入れたり
指づかいを書いたり、音名や音符、調号を書いたり
もちろん、机上で勉強するだけではなく、弾いて学ぶこともしていきます。
解説は、文章での説明より絵や図がとても多いですね。見て理解できるように工夫されていると感じます。
そして、「先生方へ」という枠が必ずあり、何を学ぶページか、何を大事に教えるのか、教え方などが説明されています。
「先生方へ」の文字は、他の部分より二回りくらい小さいです。
Lesson12
Lesson12は、スケールとカデンツを弾くことが中心となります。
Lesson7でハ長調とイ短調が出てきますが、それと合わせて全調を学ぶことになります。
すべて、長調とその並行調である短調のセットになっています。
掲載順は以下の通り。
- ハ長調、イ短調(Lesson7)
- ト長調、ホ短調:♯1個
- ニ長調、ロ短調:♯2個
- イ長調、嬰ヘ短調:♯3個
- ホ長調、嬰ハ短調:♯4個
- ロ長調、嬰ト短調:♯5個(♭7個:変ハ長調、変イ短調)
- 嬰ヘ長調、嬰ニ短調:♯6個(♭6個:変ト長調、変ホ短調)
- 変ニ長調、変ロ短調:♭5個(♯7:個嬰ハ長調、嬰イ短調)
- 変イ長調、ヘ短調:♭4個
- 変ホ長調、ハ短調:♭3個
- 変ロ長調、ト短調:♭2個
- ヘ長調、ニ短調:♭1個
♯6個まで増えていき、♭5個から減っていく(上記6,7,8は異名同音の調)
という順番ですね。
紙面構成は見開き2ページ。
- 左ページ:長調、自然的短音階
- 右ページ:和声的短音階、旋律的短音階
となっています。
楽譜は、2オクターブのスケールとカデンツです。
カデンツはハノンのものとは違い、Ⅴ₇-Ⅰを基本としています。
少し音を加えた響きのものもありますが、「シンプルで弾きやすい」ようにしたということです。
こちらも、すべてのページに「先生方へ」という枠がありますね。
見やすさ(全体を通して)
紙面が見やすいかどうかは重要な要素だと思いますが、見やすい、とは言えないかな・・という印象です。
全体を通して楽譜は小さめで、スケールを弾くLesson12は楽譜自体に書き込みがあります。
「弾くときに意識すべきところ」、という意味合いで書かれているわけですね。
これを、自分で楽譜に書き込むようになっているところもあります。
Lesson11までは、図やイラストが主で文章は少な目。
Lesson12(とLesson7)は、文章と楽譜、そして、楽譜上に書き込み、という状態です。
解説文、楽譜、イラストの吹き出し、小さな字で書かれている「先生方へ」・・と様々な情報が1ページの中にある。
そのせいか、特にLessonn12は、私自身は視点が定まらない感じで見にくいと感じました。
これは、感じ方の違いが大きいかもしれませんが・・。
『ピアノランド こどものスケール・ブック』まとめ
今回は、『ピアノランド こどものスケール・ブック』についてまとめてきました。
『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の入門編、という位置づけで、特に子どもにわかりやすく、を意識して作られているということです。
調性音楽以外のものも含めて、スケールの仕組みを細かく解説し、全24調のスケールとカデンツを弾く、という内容になっています。
スケールの仕組みを学ぶ部分は、文章の説明だけではなく、絵や図を豊富に使いながら解説されていて、書き込んで学ぶようになっています。
スケールを弾く際の弾き方の解説ページもあります。(練習法ではありません)
「先生方へ」という欄がたくさんあり、教える場合の注意点なども細かく書かれています。
ただ、紙面が見やすいとは言い難く、子どもが使う場合、横で丁寧に解説しながら進めていく必要があるなと感じます。
必ずしも子ども向けとしてつくられたものではないようなので、大人の方は、一つ一つ読んで確認しながら使っていけるのではないでしょうか。
スケールの仕組みを学ぶには、とても分かりやすいのではないかと思います。
スケールに特化した、分かりやすい書き込み式の解説と全調の楽譜を掲載したテキスト。
スケールをきちんと学びたい人は、ぜひ検討してみてください。
(公開日:2022年1月25日 最終更新日:2024年4月25日)
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