曲の演奏で、その調の音階(スケール)をキレイに弾けることは大事ですよね。
メロディーの中に音階そのものが出てくるということはよくあります。
また、そもそもがその曲の構成音なわけなので、調性感を身につけるためにも大事です。
ということで、スケールに特化したテキストを探す中見つけたのが、このバスティンの『スケール・カデンツ&アルペジオ』です。
説明書きが少なく、シンプルな作りになっていて分かりやすい印象です。
詳しく紹介します。参考にどうぞ。
こちらは、2023年5月の新版が発売されています。
以下は旧版をもとにまとめていますので、新版とは内容が違っている可能性があります。
バスティン『スケール・カデンツ&アルペジオ』の内容
いきなり内容からご紹介します。それが最も分かりやすいと思うので。
以下、目次です。
- 1オクターブ
- スケールとカデンツ
- 2オクターブ
- Cメジャー(C dur/ハ長調)
- Gメジャー(G dur/ト長調)
- Dメジャー(D dur/ニ長調)
- Aメジャー(A dur/イ長調)
- Eメジャー(E dur/ホ長調)
- Bメジャー(H dur/ロ長調)
- Fメジャー(F dur/ヘ長調)
- B♭メジャー(B dur/変ロ長調)
- E♭メジャー(Es dur/変ホ長調)
- A♭メジャー(As dur/変イ長調)
- D♭メジャー(Des dur/変ニ長調)
- G♭メジャー(Ges dur/変ト長調)
- Aマイナー(a moll/イ短調)
- Eマイナー(e moll/ホ短調)
- Bマイナー(h moll/ロ短調)
- F♯マイナー(fis moll/嬰へ短調)
- C♯マイナー(cis moll/嬰ハ短調)
- G♯マイナー(gis moll/嬰ト短調)
- Dマイナー(d moll/ニ短調)
- Gマイナー(g moll/ト短調)
- Cマイナー(c moll/ハ短調)
- Fマイナー(f moll/へ短調)
- B♭マイナー(b moll/変ロ短調)
- E♭マイナー(es moll/変ホ短調)
- 付録1 いろいろなカデンツ
- メジャー
- マイナー
- 付録2 12調の和声的短音階の主要三和音
- 付録3 調の輪(五度圏)
- 付録4 コード辞典
- 付録5 スケールグレードの実施例
- 付録6 スケール・チャレンジ記録表
目次の文言そのままです。
以下に、もう少し詳しくまとめてみます。
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「1オクターブ スケール・カデンツ」
まずは、目次の一番初めの「1オクターブ スケール・カデンツ」です。
こちらは文字通り、1オクターブのスケールとカデンツです。12の長調の1オクターブの楽譜ですね。
スケール部分は4分音符、カデンツ部分は2分音符で、1段に収められています。
12の長調の順番は・・
つまり・・
- 調号なし
- ♯♭1つずつの調
- ♯系の調(2つ→3つ→4つ)
- ♭系の調(5つ→4つ→3つ→6つ→2つ)
- ♯系の調(5つ)
この順番は、バスティンのメインテキスト『バスティン ピアノベーシックス』の、調を学ぶ順序と同じです。
関連記事→『バスティンピアノベーシックス』をこちらで紹介しています。
この「1オクターブ」の章は、それぞれのページにバスティンのテキストのレベル表示があります。
例えば、見開き2ページに書かれている始めの6つの調は「バスティン レベル2程度」となっています。
各調の楽譜の下には、「○○といっしょに練習してください」と指定楽譜が示されています。
本書の「はじめに」に、必ず指定ページと一緒に練習するよう書かれています。
「2オクターブ」
次は、「2オクターブ」。メインの部分はここですね。
全調のスケール、カデンツとアルペジオが載せられています。
順番は、長調→短調ですが、細かくは以下のようになっています。
- 調号なし長調
- ♯系長調(1つから5つまで順番に増える)
- ♭系長調(1つから6つまで順番に増える)
- 調号なし短調
- ♯系短調(1つから5つまで順番に増える)
- ♭系短調(1つから6つまで順番に増える)
楽譜の書かれ方
楽譜は、2/4拍子で「スケール+カデンツ」、4/4拍子(C)で「アルペジオ」となっています。
1ページにつき1つの調という構成です。
説明書きは一切なく、楽譜のみ。とってもシンプル。
使われている音符は、次の様な状況です。
- スケール部分・・・8分音符
- カデンツ部分・・・2分音符
- アルペジオ部分・・・4分音符
短調では、和声的短音階、旋律的短音階の2つが載せられています。
「和声的→旋律的→カデンツ」で1つの楽譜+「アルペジオ」の楽譜ですね。
速度については、本書の「はじめに」に「♩=80を目安に」と書かれています。
「付録」1~6
以下は「付録」という位置づけになっています。楽譜も小さくなりますし、一覧表のような感じですね。
それぞれの内容をまとめてみます。
付録1「いろいろなカデンツ」
こちらは、全調のカデンツのみが掲載されています。
楽譜は、Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ-Ⅰの、「基本形→第1転回形→第2転回形」の3つが1つの楽譜として載せられています。
練習法としては、1番最初のCメジャーの楽譜に下に「ⅤをⅤ₇に変えて練習しましょう」と書かれていますね。
本書の「はじめに」にも
次のいずれかの方法で挑戦してみてください。
・ⅠⅣⅠⅤⅠ・・・本書の通り
『スケール・カデンツ&アルペジオ』はじめに「効果的に使用するために・・」より
・ⅠⅣⅠⅤⅤ₇Ⅰ・・・Ⅴ(属和音)の次にⅤ₇(属7の和音)を入れる
・ⅠⅣⅠⅤ₇Ⅰ・・・Ⅴ(属和音)をⅤ₇(属7の和音)に置き換えて学習できます。
とあります。
順番は、「2オクターブ」の部分と同じで長調→短調となっていて、それぞれ「調号なし→1つずつ増えていく」という形です。
付録2「12調の和声的短音階の主要三和音」
こちらは、題名そのまま、12の和声的短音階とその主要三和音がまとめられています。
1つの音階につき1段で、音階部分は4分音符、主要三和音部分は2分音符になっています。
主要三和音はⅠ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ₇-Ⅰ(楽譜には小文字で書かれています)の形で書かれています。
ⅤはⅤ₇(属7の和音)になっていますね。
コードネームも付けられています。
各音階に並行調の名前も書かれています。(例:「Aマイナー(Cメジャーの並行調)」)
♯系6つで1ページ、♭系6つで1ページ。なので、見開き2ページのみの項目ですね。
付録3「調の輪(五度圏)」
五度圏の表(輪の形のもの)が、1ページを使って掲載されています。
表の見方の説明もありますね。
付録4「コード辞典」
こちらは、12の音、つまり・・
- メジャー(長)
- マイナー(短)
- ディミニッシュ(減)
- オーグメント(増)
- ドミナントセブンス(属7)
の和音(つまりコード)とコードネームが、1ページにまとめられています。
本書の「はじめに」には、
中学の音楽教科に文部科学省の学習指導要領にコードを使用した指導が盛り込まれました。ご活用ください。
『スケール・カデンツ&アルペジオ』はじめに「効果的に使用するために・・」より
とあります。
付録5「スケールグレードの実施例」
「千里バスティン研究会」によるスケールグレードの例が載せられています。
本書の「はじめに」によると、内容は、
「導入」は、1オクターブのスケールとカデンツの12の長調が該当となります。
「初級」は、2オクターブのスケールとカデンツとアルペジオの全24調が該当となります。
『スケール・カデンツ&アルペジオ』はじめに「効果的に使用するために・・」より
ということです。
他に、中級、上級もあるようですね。
参考→「千里バスティン研究会」(Bastien公式サイトのバスティン研究会紹介ページ)
付録6「スケールチャレンジ記録表」
こちらは、このテキストの練習記録をつけていくための表ですね。
例えば、ハ長調が弾けるようになったらその欄にシールなどを張っていく、といった簡単なものになっています。
表の下に「活用の仕方」が書かれていますが、「弾けるようになった」という基準を自分で決めて行う、ということですね。
その基準の例として・・
・テンポのずれ
『スケール・カデンツ&アルペジオ』「スケールチャレンジ記録表」より
・左右のずれ
・指使いまちがい
・弾き直し
・スケールからカデンツの遅れ
・ミスタッチ など
が挙げられています。
また、付録5のスケールグレードにも対応できるようになっています。
バスティン『スケール・カデンツ&アルペジオ』必要最低限のシンプルな作り
この『スケール・カデンツ&アルペジオ』は、バスティンのメインテキスト『バスティンピアノベーシックス』のテクニック曲集として出されているものです。
英語版『スケール、コード&アルペジオ』の日本語版ですね。
なので、バスティンの他のテキストとの関係が書かれてはいますが、これ単独でも十分に使えると思います。
なんせ、本当にスケールとカデンツとアルペジオのみで、必要最低限の内容なので。
紙面がとてもすっきりとしていて、見やすいです。
目次からして、各調名が並んでいるだけ、というすっきりさ。
「この調の音階ってどうなっているんだっけ?」なんてときにサッと調べる、という使い方もできますね。
解説や練習法など、ごちゃごちゃ書いていあるのはちょっと・・
という人には、とてもいいのではないでしょうか。
(公開日:2019年12月16日 最終更新日:2024年7月12日)
関連記事→『バスティン ピアノベーシックス』をこちらで紹介しています。
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