ピアノの練習に『ハノン』は大事。
そう思いながら、開いて見てみると、真っ黒楽譜に引いてしまう・・という人も多いのでは?
今は、“本家『ハノン』”をやさしくアレンジした楽譜がたくさん出版されています。
その中で、自分の教室のレッスンで使用しているものを2つご紹介します。
ハノンおすすめアレンジ楽譜その①『毎日の練習12か月・1』
まずはこちら『毎日の練習12か月・1~うたう指づくり~』です。「原田敦子ピアノ基礎テクニック」シリーズの中の1冊です。
”12か月”とあるように、12曲で構成されています。
1曲に4つの課題
こちらの本、厳密にいえばハノンと同じ内容ではありません。
でも、「ほぼ隣り合わせに並んだ音が少しずつ上がって行って下がってくる」という形。
ということで、『ハノン』にそっくり。
本家『ハノン』は16分音符ですが、こちらは8分音符。そして、1オクターブまでしか上がりません。
そうした曲が12曲。
そして、どの曲もA、B、C、Dの4つの課題に分かれています。
具体的な内容は以下の通り。
- A・・・片手ずつで2分音符
- B・・・片手ずつで4分音符と16分音符からなるリズム変奏
- C・・・基本の形
- D・・・リズム変奏課題が4つ
特徴は、Aの課題ではないでしょうか。
Cにある基本の形の音型の1フレーズを2分音符で弾いていきます。
弾く際、次のように弾くよう指示がされています。
- 指に鍵盤をそっと乗せます
- 鍵盤を押さえましょう
- 手首を高め脱力しましょう
- 手首を元の位置に戻します
一音一音ていねいに弾くことで、指先の感覚が研ぎ澄まされ、手首の柔軟さが得られると思います。
4つの課題は、「使う人の状況に応じていろいろと組み合わせるとよい」と書かれています。
柔軟な使い方ができ、長く使えるテキストではないかと思います。
後ろに行くほど難しくなる
12曲は難易度順に並んでします。後ろへ進むほど、音型は複雑になっています。
でも、変化があるのは1フレーズの中の前半だけ。後半の8分音符4つは必ず隣り合った音になっています。
例えば1番目の「ドレミファ ラソファミ レミファソ シラソファ~~」。
「ラソファミ」「シラソファ」の部分は12曲すべて同じです。
これは「目的以外での負担を軽くした」ためだと「はじめに」の部分に書かれています。
また、Dの変奏部分も徐々に難しくなっています。
音型も難しくなっていますが、左右でリズムが違っているものも多く、弾くのに頭を使いますね。
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ハノンおすすめアレンジ楽譜その②『おとなのハノン』
次のご紹介するのは『おとなのハノン~指の動きをよくするピアノ・トレーニング・ブック~』です。
題名の通り、大人の方向けに書かれたテキストですね。
こちらは、”本家『ハノン』”からの抜粋です。
「本書の特徴と使い方」に以下のようにあります。
ハノンの「60の練習曲」の中から、前半部分の抜粋、およびスケール(音階)、アルペジオをやさしく書きなおしたもので構成しました。原書では2オクターブで音型パターンを練習するところを、本書では1オクターブに減らしたり、スケールやアルペジオも音域を減らしました。また読みやすくするため、16分音符を8分音符にしました。
『おとなのハノン~指の動きをよくするトレーニング・ブック~』「本書の特徴と使い方」より
大きく2つに分かれている
こちらの本は、「導入編」と「ハノン編」の2つに分けられています。
導入編
まずは、「ステップ1」。ハノンに似た音型が4分音符で書かれたものを、片手ずつ弾いていきます。
8小節の長さで、10の課題があります。
そして「両手のトレーニング」。
やはり、ハノンに似た音型で4分音符、8小節を今度は両手で弾きます。こちらは6曲。
さらに「ステップ2」として、8分音符でも行います。こちらは片手のみですね。
すべて、メトロノームの速さ指定があります。
ハノン編
こちらは、”本家『ハノン』”の抜粋です。ステップ3~12に分けられています。
「指をひろげる」「指をちぢめる」「トリル」のトレーニングと続き、「音階」「アルペジオ」「全調のアルペジオ」となっています。
すべてに、リズム変奏の例が3つずつ載せられています。(音階やアルペジオを除く)
そして、リズム変奏の部分にメトロノームの指定があります。
また、ところどころに「ゆびのあそび」と題した楽譜が載せられています。
ハノンの音型とは違った形で、気分転換のように取り組みつつも、音の保持やトリルなどの練習ができる、というものです。
初期から使える工夫がいっぱい
ピアノを始めたばかり、という方でも使いやすい工夫がいろいろされているという印象です。
例えば、一番最初に載せられているのは「五線と鍵盤の位置関係」の図です。
また、「音階」に入る前には、日本、イタリア、ドイツ、英・米それぞれの「音名」の表が。
そして、「五度圏」の表も載せられています。
参考記事→「五度圏」についての記事です。手元に五度圏表があると便利です。
指づかいも細かく書かれていますし、トレーニングとして注意すべき部分には印がつけられています。
さらに、上に引用した「本書の特徴と使い方」の中に、具体的な練習の方法も書かれています。
至れり尽くせりな感じ。
独学での練習も可能なように作られている、ということかと思います。
実は・・
実は、著者の大岩桂子さん、私の先生だった方です。
もう30年近く前、社会人になって再びピアノを始めたときに指導を受けていました。
その頃は「大人のピアノ」が注目されてまもない時期でしたが、先生のところには多くの大人の生徒さんが通われていました。
子どものころやっていた、という方から、まったくの初心者まで。
年齢も幅広く、70代80代という方もおられましたね。
「大人を指導する先生」としてはパイオニア的存在です。
そんな方が書かれた、この『おとなのハノン』です。
関連記事→『おとなのハノン』をこちらの記事でさらに詳しく紹介しています。
ハノンおすすめアレンジ楽譜2冊 どちらもレッスンで使っています
今回ご紹介した2つの教材、自分の教室のレッスンでどちらも使っています。
購入してもらうこともありますが、それぞれの状況に合わせてレッスンの中で必要な所のみ弾いてもらう、ということもしています。
例えば『おとなのハノン』の「導入」部分などはよく使います。
ハノン系の教材は、目指すところはどれも同じ。
目的をきちんと抑えておけば、大人向け、子ども向け、はあまり気にしなくてもいいのでは・・と思っています。
もう1つご紹介(おまけ)
今最も売れている”簡単ハノン”は、こちらかもしれません。
amazonのレビュー数は一番多いですね。
私は持っていないので、詳しいことは分かりませんが・・わかる範囲でご紹介。
本家『ハノン』の1番から20番までを、8分音符1オクターブにして載せられているようです。
注意すべき点や練習方法など、細かく解説されているようですね。
また、音階も載っています。でも、全調ではないようです。
今回は、”おまけ”も含めて3冊の簡単ハノンをご紹介しました。
いろいろと出版されている”簡単ハノン”。
中身をよく吟味して、自分に合ったものを見つけられるといいですね。
ぜひ参考に。
(公開日:2017年9月28日 最終更新日:2024年4月10日)
関連記事→『おとなのハノン』の紹介記事です。
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