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ピアノで薬指が動かない!その理由と3つの練習法

ピアノの弾き方・練習法

ピアノを弾くときの大きな悩みの一つが、「薬指が動かない~~」ということではないでしょうか。

しっかりと上がらないし、他の指につられるし、小さな音しか出ないし・・

クレッシェンドしていった先の音が4の指(つまり薬指)って!クレッシェンドできないじゃん。

アクセントがついてる!4の指(つまり薬指)に・・

これ、実際に自分の教室でレッスンしていて出会った状況です。

どうすればいいんでしょう。

薬指だけをしっかりと鍛える必要があるんでしょうか?

いいえ、弾き方そのものを見直しつつ薬指を意識すること。

そのあたりをまとめてみました。

この記事は、『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム』『シャンドールピアノ教本』(共に春秋社)を参考にしてまとめています。

薬指が動かない その理由は?

薬指の動きが悪いって、つまり、

  • 他の指につられてしまう
  • 薬指だけでしっかりと動かすことができない

ということですよね。

ピアノを弾く際よく言われる「指の独立」ということが、薬指は特に難しい。

でも、そもそも指はそれぞれ独立して動かしにくい作りになっているんです。

指の独立はムリ?でもピアニストは・・

ピアノは1本1本の指をバラバラに動かして弾いていきます。

なので、両手で10本あるそれぞれの指を「独立して動かせることが大事」とよく言われます。

実際、ピアニストは、ピアノを弾かない人よりもずっと指の独立性の高いことが分かっています。

でも、本来の手の役割から考えると、指は独立していない方がよいのです。

日常生活の中で最も多い手の動作は、物をつかんだりつまんだりすることです。

そのためには、指がつかみたい物の方へ一斉に動く必要があります。

それをしやすくするには、指は完全には独立していない方がいい。

その方が、指同士が連携して働きやすいということですね。

手の構造を見ても、人差し指から小指までの4本は、筋肉と骨をつないでいる「腱」がつながっています。(腱間結合

「大阪大学全学教育推進機構」より

そのため、ひとつの指を動かそうとすると、他の指も引っ張られて動いてしまう状態になっています。

また、脳の神経細胞も、それぞれの指を動かす神経がそれぞれ別の場所にあるわけではありません。

ひとつの神経細胞が、複数の指へ指令を送るような仕組みになっています。

手の構造、脳のしくみそれぞれが、指が完全に独立した動きをしないような状態になっているということですね。

参考文献→『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』(春秋社)p.187~189

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ピアニストの指はなぜ独立している?

上に、「ピアニストの指はピアノを弾かない人より独立性が高い」と書きました。

研究の結果、ひとつの指で鍵盤を弾いているとき、弾いていない他の指はその時々の状況によって違った動きをしている、ということが分かっています。

つまり、弾いている指につられていない、ということですね。

参考文献→『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』(春秋社)p.181~183

実験の結果でそのようなことが明らかになっているということですが、なぜそのようなことができるのかについては、まだ完全には解明されていないようです。

ですが、いくつかの研究結果があるということです。

1つめは、解剖学的な理由です。指を左右に動かす際に、どれだけ大きく動かすことができるか(つまり可動域)を調べると、ピアニストのほうが、音楽家でない人よりも大きく動かせることが分かりました。この理由として、筋肉や腱、あるいは腱間結合がピアニストのほうが柔らかいからと考えられます。(中略)

2つめは、脳の中の変化です。通常、人差し指を動かすときに比べて、薬指を動かすときのほうが、より多くの数の神経細胞が活動することが知られています。しかし、ピアニストの指先で力を発揮しているときの脳波を調べた研究によると、人差し指を動かすときでも、薬指を動かすときでも、指の動きに関連する脳活動の大きさは、ほとんど差がありませんでした。おそらく、長年のピアノの訓練によって、すべての指を同じように使えるように脳が洗練され、その結果、指を独立して動かせるようになるのではと考えられます。

『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム』p.189~190より

今の時点では「長年の訓練の賜」としか言いようがないようですね。

関連記事参考文献『ピアニストの脳を科学する』をこちらで詳しく紹介しています。

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薬指が動かない~動きをよくするための練習法~

「長年の訓練の賜」。その訓練はどのようにすればいいのでしょう。

私が考えるいくつかの方法をまとめてみます。

弾き方を見直す

最も基本的なこととして、

そもそもの弾き方を見直してみる

ということは大事だと思います。

弾く際の、手の形、指の動かし方、ということですね。

関連記事ピアノの弾くときの基本的な手の形と動かし方をまとめています。

関連記事指を速く動かすたすための手の形をまとめています。

私がよく参考にする『シャンドールピアノ教本』(春秋社)では、

ピアノを弾く際の手や指の動きは、鍵盤に対して垂直と水平の動きの調整をすることが大事

と述べられています。

「垂直の動き」というのは、鍵盤に対して垂直に指を動かすこと。

鍵盤そのものは垂直にしか動かないので、効率よく動かすためには垂直方向に指をおろさなければいけないということです。

そのためには手首の位置が重要で、親指の時は低め、小指へ向かうほど高めにする必要があるとしています(関節の位置が違うから)。

「水平の動き」というのは、指を動かす筋肉のある前腕と弾くべき指とが一直線になっているのが望ましく、そのために手首と前腕の位置を水平方向に動かしながら弾く、ということです。

参考文献→『シャンドールピアノ教本』P.81~87

4の指に関していうと、手首はやや高め、前腕は少し外側へ、ということになりますね。

ということを意識して弾いてみました。(バーナム・ピアノ・テクニック・導入書 G3 №11)

4の指(薬指)のみアクセントをつけて

4の指でもしっかりした音を出したい、という時は、

4の指を使う時に意識的にアクセントをつけて弾く

というのもよい練習になるのではないかと思います。

4分音符などで動く箇所をゆっくりと弾いていき、4の指のところだけアクセントをつけて弾きます。

4の指に意識を集中させるということですね。

バーナムやハノン系の練習曲を使ってもいいですし、曲の一部分を使ってもいいですね。

その時注意が必要なのは、指だけを大きく持ち上げて弾くようなことはしない、ということです。

そもそも、ピアノは指を高く上げて弾くものではありません。鍵盤に触れない程度に持ち上げられればいいです。

その状態からきちんと音を出すには、腕の使い方が重要です。

肩からのしなりを効かせて鍵盤を押すようにします。

指は鍵盤の少し上に準備した状態から、肩や腕に助けてもらって勢いをつけて鍵盤へエネルギーを投げ込む感じ・・

ってちょっとわかりにくいでしょうか。

関連記事「ピアノを弾く音が小さくて弱いときの弾き方についてまとめています。

一つ一つの音を意識して弾き、特に4の指ではしなりを効かせる、ということですね。

もともと(ピアノを弾くには)動きの悪い4の指でも、他の指と同じような動きをさせるためには、おのずと他の指よりもしなりを効かせて弾かなければいけません。

そのことを意識的に行う、ということですね。

上に書いた、「垂直の動き」「水平の動き」にも注意して弾いてみました。(バーナム・ピアノ・テクニック導入書 G2 №4、№5)

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リズム練習をする

なぜ、ピアノ演奏には指の独立が必要になるのか。

それには2つ理由が考えられるということです。

1つめは、ピアノ演奏は、決められたリズムとテンポで手指を動かす必要があるためです。(中略)
指同士がつられて動いてしまうと、ある一定以上のテンポで弾いているときには、意図したリズムで演奏できなくなってしまうのです。
(中略)
2つめの理由は、ピアノ演奏では、複数の旋律を同時に奏でるために、指同士が異なった動きを同時にすることが求められるためです。
(中略)
物を掴むときのように、すべての指が同じ方向に同時に動いてしまうと、(中略)メロディと内声という2つの旋律がごちゃごちゃになってしまいます。

『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム』p.185~187より

これらの理由の1つ目「決められたリズムとテンポで手指を動かす」というのは、練習に使えるのではないかと思います。

つまり、

リズム練習をする

ということですね。

一定のテンポの中に正確にリズムを入れていくには、指1本1本のコントロールがきちんとできていないと難しいことです。

ハノン系の練習曲で、メトロノームをきちんと使って、地道にリズム練習。

これが大事ですね。

関連記事ハノンの練習ポイントについてまとめました。

「リズム練習」必要ないという考えも

一方で、「リズム練習は必要ない」という考え方もあります。

幾つからの理由から、私はこの種の練習には賛同したくない。リズム・パターンを使ったりすると、ややもすると機械的な練習に陥りがちであるし、付点のついたパターンだと、短い音符には十分な時間と注意が払われないことが多い。楽譜通りに練習し、あなたがかくあるべしと自分の心に刻み込んだような形で楽譜を演奏する技術を身につける方がよいだろう。

『シャンドールピアノ教本』p.249より

上にも挙げたこの本。記事を書く際にもよく引用し、自身の練習やレッスンでも参考にしているのですが、このように書かれています。

本書には、「機械的な練習ではなく意識的な練習を」ということが要所要所に書かれていて、この文章もそういうことのように思います。

リズム練習をすればいいってもんじゃない。

正確にリズムを刻めているか、音をよく聴いて弾くこと。

そして、曲を弾くときにできるようになっているかを確かめることが大事ですね。

まとめ 薬指だけに囚われすぎずに

薬指をスムーズに動かせるように、という視点でまとめてみました。

アクセントをつけることやリズム練習。参考になればと思います。

でも、一方で薬指のことばかりにとらわれてしまうのもどうかな‥ということも思います。

ピアノは5本の指で弾くもの。薬指はその中の一つにすぎません。

また、メロディーの中のごく一部のことでしかありません。

すべての指を使って弾くこのフレーズをどのように弾くのか、弾きたいのか。

大きな視点でとらえ、その中の薬指だと考えた方がいいのではないかと思います。

その視点を忘れて薬指を鍛えることだけに終始するのは、やはりちょっと違うのではないかな‥と。

指の訓練は一方でしつつ、曲の中で弾けなければ意味がない、ということは忘れないでいきたいですね。

(公開日:2018年12月28日 最終更新日:2024年9月18日)

この記事の参考文献↓

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