昔は『バイエル』くらいしかなかったピアノの導入教材。
でも、今はものすご~くたくさんありますよね。
私も教室を始めるころ、数の多さにビックリ!
どれにしようかすご~くすご~く悩みました。
今は、5冊を決めて常に置いています。
その5冊もそれぞれ特徴があり、今回はそれを比較してみようと思います。
- 5冊の導入教材それぞれの特長
- 音域の広がり方
- リズムの進み方
- 1曲の長さと収録曲数
ピアノ導入教材の”5冊”って何?
今回比較する導入教材は何なのかというと・・⇩こちらです。
私の教室では、レッスン最初のテキストは、基本的にこの中から本人に選んでもらいます。
実際には、上記5冊それぞれの特徴を簡単に説明した上で、体験レッスンでの様子や年齢などを考えて「私のおすすめ」として2、3冊ご紹介し、そこから選ぶという形が多いです。
5冊に共通していること
教室で使う導入テキストを選ぶ際、「これだけは」と思い、こだわった部分があります。
それは・・
音域は中央ドから上下に広がっていること
この形だと、楽譜ははじめから大譜表になり、ヘ音記号が出てきます。
こういうこと⇩
ピアノは両手で弾くようになれば必ず上下二段の楽譜になり、当然ヘ音記号が出てきます。
なので、できるだけ早くからこの形に慣れておいた方がいいと思います。
ト音記号とヘ音記号は別物じゃなくつながっているんですよね。
そのことをしっかり理解してもらうために、大事なことだと考えています。
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ピアノ導入教材5冊の「何」を比較するか
それでは、比較していこうと思います。
何について比較するのか。比較のポイントは以下の通りです。
- 音域の広がり方
- リズムの進み方
- 1曲の長さ
この3点についてまとめていきます。
なお、比較する5冊はすべて1巻のみです。1巻の最後でどの程度難しくなるのかを見ていきます。
〈比較1〉音域の広がり方
まずは、「音域の広がり方」を見てみます。
上に書いた通り、どのテキストも中央ドから上下に広がる形ではあります。
それがどのように広がっていくか、1巻の終わりはどこまで広がるのか。
また、音飛び(ドミとかドソとか)はどんな状況かをまとめます。
音域が広がり方 | 1巻の終わりの音域 | 音飛びの状況 | |
---|---|---|---|
ピアノランド | ・中央ドのみ2曲(左右弾き継ぎ) ・右手から1音ずつ広がる | 上下4音まで(ドレミファ、ドシラソ) | ・8曲目から左右にわたる音飛び ・右手内で3度→左手内で3度、4度 ・左右にわたる音飛びは随時 |
ピアノひけるよ! | ・上下2音(ドレ、ドシ)から(片手ずつ) ・上下同時に広がる ・上下3音から両手弾き継ぎのメロディー | 上下5音まで(ドレミファソ、ドシラソファ) | ・上下3音まで広がったら左右同時に3度から ・左4度(ドソ)右5度(ドソ)まで ・右ミ↑ソ↓ド↑ミの動きあり ・左右にわたる音飛びは随時 |
バスティン | ・上下3音(ドレミ、ドシラ)から(片手ずつ) ・すぐに上下5音(片手→両手弾き継ぎメロディー) | 上下5音まで(ドレミファソ、ドシラソファ) | ・上下5音まで広がったら右3度から ・右3度左4度(ソド)まで ・右ドミソの動きあり ・左右にわたる音飛びは随時 |
ぴあのどりーむ | ・中央ドのみ5曲(片手→両手弾き継ぎメロディ) ・ドレ→シドレ→ラシドレ→ラシドレミと広がる | 上下3音まで(ドレミ、ドシラ) | ・右のみ3度、左なし ・左右にわたる音飛びは随時 |
オルガンピアノ | ・中央ドのみ2曲(両手弾き継ぎ) ・上下1音ずつ広がる(両手弾き継ぎメロディ) ・上下ソまで広がったら左右1オクターブ違いのドレミファソ | 右:中央ドの3度下のラから1オクターブ上のレまで 左:中央ドの上のレから1オクターブ下のラまで | ・上下3音まで広がったら右3度から ・左右5度まで ・右ドミソやミソレなどの動きあり |
狭いのは『ぴあの どりーむ』広いのは『オルガン・ピアノの本』
最も音域の狭いものは『ぴあのどりーむ』ですね。上下3音までです(右ドレミ、左ドシラ)。
中央ドのみの曲が5曲あり、すべて4小節です。
右手だけ左手だけと続き、3曲目が片手で2小節ずつ弾いて1曲となっています。
4,5曲目は中央ドしか出てきませんが、1小節の中で左右弾き継ぐ形が出てきます。
一番音域が広くなるのは『オルガン・ピアノの本』です。
中央ドのみの曲を2曲経験すると、すぐに2音→3音→4音と広がっていきます。
そして、右のみ5音(ドレミファソ)まで広がると、「どのポジション」として左右で1オクターブ離れた「ドレミファソ」の位置を覚えます。
その後「ふぁのポジション」(♭1個)を覚えると、例えば右手は「ふぁ」左手は「ど」といった2つのポジションで弾く曲を経験します。
その後、「らのポジション」「れのポジション」「そのポジション」が出てきます。
つまり、ハ長調イ短調、ヘ長調ニ短調、ト長調のはじめの5音が出てくるということですね。
(調の名前は記されていませんが、調号は付きます。)
1曲の中で1オクターブ半の音域を弾くことになります。
また、「ポジション」を覚えると同時に両手奏が始まります。
右メロディ左伴奏の形で、伴奏は重音が出てきます。1,5の指になっていて、音域が広くなってい
ます。
〈比較2〉リズムの進み方
次に、「リズムの進み方」を見てみます。
何拍子の曲が出てくるのか、どの音符まで出てくるのか、休符はどのようになっているのか、についてまとめます。
出てくる拍子 | 出てくる音符 | 休符の状況 | |
---|---|---|---|
ピアノランド | ・4/4、3/4(2曲)、6/8(3曲) ・約7割が4/4拍子 | ・4分、付点4分、2分、付点2分、8分 ・全音符なし ・8分登場は14曲目から ・4分のみは始めの1曲のみ | ・6曲目から休符登場 ・曲途中の休符は15曲目から ・休符は4分、8分(6/8のみ) |
ピアノひけるよ! | ・4/4、3/4(2曲) ・約8割が4/4拍子 ・アウフタクト1曲あり | ・全、4分、2分、付点2分 ・8分音符なし ・1曲目は4分、2分 | 休符なし |
バスティン | ・4/4、3/4(8曲)、2/4(6曲) ・約6割が4/4拍子 ・始めのうちは拍子記号、五線なし(プレリーディング譜) | ・全、4分、2分、付点2分 ・8分音符なし ・1曲目は4分、2分 | 休符なし |
ぴあのどりーむ | ・4/4、3/4(3曲) ・約9割が4/4拍子 | ・4分、2分、付点2分 ・全、8分なし ・1曲目は4分、4分休 | ・1曲目から休符あり ・曲途中の休符も1曲目から ・4分休のみ |
オルガン・ピアノ | ・4/4、3/4(7曲)、2/4(2曲) ・約8割が4/4拍子 ・アウフタクト1曲あり | ・全、4分、2分、付点2分 ・8分音符なし ・12曲目まで4分のみ | ・3曲目から4分休 ・8曲目から曲途中の休符 ・4分休のみ |
全教材4/4拍子がほとんど 8分音符なしが多い
拍子に関しては、4/4,3/4が主ですが、圧倒的に4/4拍子が多くなっています。
バスティンの『ヤング・ビギナー』で2/4拍子が比較的多いのと、唯一『ピアノランド』で6/8拍子があるのが特徴でしょうか。
また、『ピアノランド』は、これまた唯一8分音符が出てきます。
6/8拍子では当然使われますが、そうではない曲(4/4拍子)2曲にも出てきていますね。
4分音符だけの曲は1曲目のみ。2曲目から2分音符が出てきます。
そういうことでは、リズムが最も難しいのは『ピアノランド』ではないかと思います。
ただ、休符の登場は比較的遅く、場所もはじめのうちは曲の最後に1個だけ。
曲の途中の場合も、メロディーの区切りに一つ、最後に一つ(いずれも4分休)という形です。
(6/8拍子には8分休符が使われています。)
それに比べて『ぴあのどりーむ』は休符の登場が早く、1曲目から曲途中の休符があります。
ほかの教材に比べて、曲途中の休符が比較的多いのではないでしょうか。
もう一つ、『オルガン・ピアノの本』は、はじめのうち4分音符だけの曲が12曲続くというのが大きな特徴ですね。
曲途中の休符は8曲目から始まるのですが、1曲の中の休符の数は多いかと思います(すべて4分休)。
でも、ひたすら4分音符だけ、ということで、拍をとる練習がしっかりできるようになっていますね。
<比較3>1曲の長さ
最後に、曲の長さを比べてみます。また、1冊に何曲収録されているかも調べます。
曲の長さ | 収録数 | |
---|---|---|
ピアノランド | すべて8小節 (8曲目以降は始めに戻るリピートあり) | 19曲 |
ピアノひけるよ! | 4小節2曲 8小節9曲 12小節5曲 14小節1曲 16小節1曲 | 18曲 (練習曲含む) |
バスティン | 4小節13曲 8小節20曲 12小節1曲(リピート含む) 16小節2曲(リピート含む1曲) | 36曲 |
ぴあのどりーむ | 4小節19曲 8小節7曲 | 26曲 |
オルガン・ピアノ | 4小節6曲 8小節18曲 12小節3曲(リピート含む) 16小節4曲(リピート含む) 24小節1曲(リピートあり) 32小節1曲(リピート含む) | 33曲 (連弾含まず) |
8小節が多いが長い曲も
曲の長さは8小節が多いですね。多い小節の曲が入っている教材は、4小節→8小節→いろいろな長さ、という感じの進み方です。
すべて8小節の『ピアノランド』、ほとんどが4小節の『ぴあのどりーむ』が対象的ですね。
曲数が最も多いのはバスティン『ヤング・ビギナー』の36曲。次が『オルガン・ピアノの本』の33曲です。
『ピアノランド』は少なめの19曲ですが、すべて「曲」。楽典的な説明ページや練習曲のようなものはありません。
すべて8小節で統一されているのも、子どもにとっては分かりやすいかもしれません。
まとめ ピアノ導入教材5冊 どれも一長一短
今回は3つのポイントで比較してみました。どれも様々な工夫があって一長一短ですよね。
難易度でいえば、
- 最も易しい・・・『ぴあのどりーむ』
- 最も難しい・・・『オルガン・ピアノの本』
ということになるでしょうか。
『ぴあのどりーむ』は、進み方がゆっくり。
音域の広がりが狭く、曲途中の休符が比較的多く出てきますが、4/4拍子で4分音符2分音符の曲がほとんどです。
『オルガン・ピアノの本』は、最も進み方が早いですね。
音域の広がりが大きく音の動きも少々複雑。後半には両手奏、2音の和音、調性も出てきます。
でも、はじめのうちは4分音符のみの曲が続き、比較的弾きやすいのではないかと思います。
それぞれのテキストの簡単まとめ
残りの3冊は、なかなか難易度の順位をつけにくいかなと思います。
それぞれの特長をまとめます。
ピアノランド
8分音符や6/8拍子が出てきたりしますが、できるだけ隣り合わせの音で動くよう工夫して作曲されているようで、音の動きはそれほど複雑ではありません。
ピアノひけるよ!ジュニア
音の広がりは他とそれほど大差ないですが、少々動きは複雑かと思います。
でも童謡などよく知られた曲が多いため、とっつきやすいし弾きやすい。そこが最大の魅力です。
ヤング・ビギナー(バスティン)
音域はすぐに上下5音まで広がりますが、音の動きは複雑ではありません。隣り合わせの音によるメロディが多くあります。
最大の特徴は、テキストの半分くらいまで「プレリーディング」という拍子と5線の書かれていない楽譜になっているということでしょう。
これは、音符が音の高低どおりに並んでいるだけ(縦線あり)、という楽譜で、音の動き(高低)と指をしっかり一致させることにつながります。
これをしっかりすることによって、ある程度の複雑な動きにも対応できやすいように思います。
プレリーディング譜についてはこちらへ→Bastien「バスティン・メソードとは」
比較したいポイントは他にもあるけれど
今回は以上のような比較をしましたが、他にも比べたいポイントはありますよね。
例えば、楽譜の見やすさ。
音符の大きさや説明ページの書き方、どんなイラストか、も小さな子の場合はすごく重要です。
また、シリーズ全体の進み方がどのようになっているかも重要なポイント。
今回は1巻のみしか調べませんでしたが、2巻3巻と進むにつれまた違った特徴が見えてきます。
シリーズすべて終えるとどの程度まで進んでいるのか、ということも重要ですよね。
レッスンを続けていくと、このシリーズを使い続けるべきか、途中で変えるべきか、そういうことも悩んだりします。
本当は、シリーズごとに比較をした方がよかったかも・・大変だけど・・・
それから、1曲1曲が「曲」としてどうなのか、ということも大事。
魅力的な「曲」として成立しているか、ということです。好みもあることなので比較しにくいですが・・
最近は素敵な曲となるよう、指導者用の連弾譜の付いているものが多いですね。
他にもまだまだ比較できることがありそうです。
何を選ぶかはそれぞれの状況に応じて
色々な特徴があり、それぞれ様々に工夫されている導入期のテキスト。
選ぶときには、使う子の状況に合わせるということが最も大事かなと思います。
まずは年齢。
そして、レッスンを始める当初の理解度やレッスン時の様子(指示の理解や集中度合いなど)なども判断材料になるかと思います。
こうしたことを、体験レッスンのときに見極めることが必要ですよね。
なかなか難しいことですが。
私の場合は、そうしたことを踏まえて2,3冊選んでおすすめし、最終的には本人に選んでもらいます。
教える側は、どれが選ばれてもいいように内容をよく理解しておかなければいけませんね。
本当にたくさんある導入期テキスト。
今回比較しなかったけれど使っている、というものもあるし、使ったことはないし手元にもないけれど、気になっているものもあります。
この5冊にとどまらず、これからもいろいろなものを検討していきたいと思っています。
(公開日:2018年1月10日 最終更新日:2024年3月14日)
各テキストの詳しい内容についての記事です。
『ピアノランド』、『ピアノひけるよ!ジュニア』を実際に使ってみた結果です。
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