ピアノで”指の練習”というと、真っ先に挙げられるのが『ハノン』かもしれません。
16分音符で”ドミファソラソファミ レファソラシラソファ~~”と2オクターブ上がって、そして下がってくる。
この1番は超有名ですよね。
この元祖『ハノン』を、子ども向けにアレンジされたものが何冊か出版されています。
その中から今回は、全音楽譜出版社から出されている『新こどものハノン』を紹介します。
副題は「”しなやかで強い手”を育てる魔法の5分間練習」。
「1日5分で効果的な練習法を」というコンセプトで作られています。
具体的な内容を詳しくまとめてみます。
関連記事→『新編こどものハノン上巻』(学研)はこちらで紹介しています。
『新こどものハノン』の内容は?
元祖『ハノン』を元にして作られている、この『新こどものハノン』。
いったいどこの部分を”元”にしているのかというと・・
- 『ハノン』の1番~20番(第1部)
- 全調のスケール
- 『ハノン』の「1番の変奏の例」より抜粋
以上の3点になっています。
それぞれ詳しくまとめます。
『ハノン』の1番~20番(第1部)
まずは、元祖『ハノン』の第1部、1番~20番までが収録されています。
『ハノン』の中でも、最も基本の部分といえるのではないでしょうか。
楽譜の書き方は8分音符です。
元祖『ハノン』は16分音符ですね。
右手は中央ド、左手はその1オクターブ下から始まります。
1オクターブ上まで上がり元の場所に戻る、という形です。
全調のスケール
そして、全調のスケールとカデンツも載せられています。
楽譜の書き方は、やはり8分音符。2/4拍子になっています。
右手は中央ド、左手はその1オクターブ下のドから始まり、2オクターブ上まで上がり元の場所まで下がります。
そのあとカデンツですね。
左ページに長調、右ページにその並行調の短調、という誌面の使い方になっています。
短調は、「和声的短音階」「旋律的短音階」の2つのみです。
『ハノン』の「1番の変奏の例」より抜粋
最後のページに「変奏(リズム)一覧」があります。
元祖『ハノン』では、第1部に入る前に「1番の変奏の例」というページがあります。
1番の音形を使って、全部で22のリズム練習の例が載せられているものですね。
この『新こどものハノン』では、その中から14の例が抜粋して載せられています。
書き方は、こちらも基本は8分音符。
元の『ハノン』は16分音符が基本なので、拍子が少々変わりますね。
抜粋されているのは、以下のものです。(リズムが逆になっているだけで同じパターン、といったものはまとめて書いています)
- №2・・2/4拍子→4/4拍子
- №3,5,6・・6/8拍子→3/4拍子
- №7,8・・3/4拍子→2/4拍子
- №9,10,11・・2/4拍子→4/4拍子
- №16,17,18,19,20・・2/4拍子→4/4拍子
載せられている場所は、一番最後のページです。
本書は「リズム練習を大事なこととしていますが重視はしていない」という考え方のためだと思われます。(後に詳しくまとめています)
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『新こどものハノン』具体的な練習法「5分間練習」
この『新こどものハノン』は、副題が「”しなやかで強い手”を育てる魔法の5分間練習」となっています。
その”しなやかで強い手”を育てるための方法として、3つの練習法が挙げられています。
次のようなことです。
♫効果抜群”ゆっくり練習”
♫5分で集中!魔法のメニュー
♫やる気を育てる目標設定
『新こどものハノン』本書について より
以下に詳しくまとめてみます。
「効果抜群”ゆっくり練習”」
始めに挙げられている「効果抜群”ゆっくり練習”」についてです。
ここに、「リズム練習はやりすぎてはいけない」といったことが書かれています。
Q.ハノンといえばリズム練習?
A.いいえ!
『新こどものハノン』本書について より
まだ手が育っていないこどもが無理なリズム練習をたくさんすることで、変な癖がついてしまったり、手を壊してしまう危険もあるのです!
こどもの手のことを考えた練習方法が必要です。
そこで、”ゆっくり練習”が必要、ということです。
ゆっくり弾きながら、まずは、正しいフォームを身につけよう、ということですね。
「point」として、3点挙げられています。
『新こどものハノン』本書について
- 姿勢を正しく、腕の力を抜きます。
- 力まずに正しい手の形で重みを鍵盤にのせます。
- 打鍵した指がクネクネしたりすべらないように、よく気をつけましょう。
「5分で集中!魔法のメニュー」
次に挙げられているのが「5分で集中!魔法のメニュー」です。
本書の副題にある「魔法の5分間練習」の、具体的な内容ですね。
次の3つになっています。
『新こどものハノン』本書について より
- エクササイズ(1分)
- ゆっくり練習(2分)
- フリートレーニング(2分)
これらの内容が「Level 1」となっています。
まずはこの3点にしっかりと取り組む、ということですね。
この3点、各曲の右ページ上部に必ず書かれています。
それぞれについて、以下に詳しくまとめます。
「エクササイズ」について
各曲すべてに4分音符で書かれた2小節の楽譜があり、これが①の「エクササイズ」の部分になります。
この曲の指の動きをマスターしよう、といったことですね。
「1音1秒(♪=60)で練習しましょう」とあります。
また、「つなげて弾くことが難しい指は、無理せずに切って弾きます。」とも書かれています。
「ゆっくり練習」について
8分音符で書かれたメインの楽譜を、1音1秒(♪=60)で弾きます。
「正しいフォームで音をよく聴きながら練習しましょう」とあります。
「正しいフォーム」とは、上にまとめた「効果抜群!ゆっくり練習」の3つのポイントのことですね。
「フリートレーニング」について
以下に挙げる4つの内容からいくつかを選び、1音1秒(♪=60)で弾きます。
- スタッカート練習・・すべての音をスタッカートで弾く
- レガート練習・・すべての音をレガートで弾く
- コツコツ練習・・ピアノのフタを閉めて、フタの上でコツコツと練習する
- 変奏(リズム)・・最後のページにある「変奏(リズム)一覧」を参照に弾く
リズム練習はここに入っています。
「無理のない範囲で練習しましょう」とあり、必ずやる、ということにはなっていませんね。
各曲右ページ上部に書かれている「5分間練習」の3つの内容には、リズム練習の何番を行うとよいのか、という番号も入っています。
「Level1」から「Level 2」へ
上にまとめた「5分間練習」を十分にやったら、「Level 2」に入ります。
「Level 2」は、テンポ♪=120~230の範囲で弾く、ということになっています。
「無理のない設定にして、少しずつ速くしていく」ように書かれています。
「やる気を育てる目標設定」
3つ目に挙げられている「やる気を育てる目標設定」についてです。
上にまとめた「5分で集中!魔法のメニュー」は、「Level 1」と「Level 2」の2段階になっていると書きました。
それぞれをいつまでに終えるか、という目標を「自分で」立てて練習をしましょう、ということです。
目次に、日付を書き入れる欄が見開き2ページにわたって設けられています。
「自分でたてた目標を達成することで自信につながり、やる気アップ!」と書かれていますね。
もう一つ、「練習目的をしっかり確認しましょう」ということも書かれています。
№1~20には練習の「目的」があります。各曲タイトル番号の横にある♫pointを生徒と一緒に確認してから練習を開始します。目的が理解できると、生徒自身が積極的に練習する気持ちになり、「やる気」が起こります。
『新こどものハノン』本書について より
「♫point」とは、この曲は何の練習のためなのか、ということが書かれた欄のことです。
例えば、No.1には「4・5指を3度広げる」とあります。
こうしたことが、すべての曲に上部に書かれています。
これをきちんと確認することが大事、ということですね。
「全調のスケール」も3つの練習法で
ここまで、元祖『ハノン』の第1部№1~20の部分について書いてきました。
この『新こどものハノン』は、全調のスケールも載せられているわけですが、その部分の練習方法も同じです。
つまり、「Level 1」の3つの「5分間練習」メニューがあり、それができたら「Level 2」に進む、ということです。
すべての調の楽譜上部に書かれています。
全調のスケールに入る前のページには、やはり目標を記入するための目次ページになっています。
『新こどものハノン』紙面はこんな感じ
紙面の状況についてもまとめます。
『ハノン』の部分については・・
左ページの1番上に「♫point」。この曲の「目的」ですね。
その下には「エクササイズ」、右ページの上に「5分間練習」3つのメニューがあります。
楽譜部分に説明文などはなく、すっきりとしていますね。
全調のスケールについては・・
左ページの1番上に「5分間練習」3つのメニュー、その下に「エクササイズ」となっています。
左ページが長調、右ページ上が「和声的短音階」、下が「旋律的短音階」です。
こちらも、楽譜部分はすっきりとしています。
音符は大きめで余白も多く、見やすくなっているのではないでしょうか。
『新こどものハノン』まとめ 『ハノン』と全調が1冊に
『新こどものハノン』について、内容をまとめてきました。
元祖『ハノン』の第1部の部分と、全調のスケールが1冊に収められています。
そして、「5分間練習」という、具体的な練習法が書かれているのが大きな特徴ですね。
私としては、『ハノン』の基本ともいえる第1部の全部№1~20と、全調のスケールまでが1冊にまとめられている、というのがうれしい所です。
スケールも、短調は「和声的短音階」と「旋律的短音階」の2つが載せられています。
大きな特長である「5分間練習」については、練習方法の一つの目安として参考になりますね。
実際は、生徒の状況を見ながら柔軟に組み入れていく、という形になるかな、と思います。
細かいことをいろいろと・・は、先生の好みがあるのではないかな・・
今回、子どものレッスンでのハノンの導入として使える分かりやすいものはないかと、この『新こどものハノン』を検討してみました。
参考になればと思います。
(公開日:2019年10月8日 最終更新日:2024年7月12日)
⇩元祖『ハノン』はこちらです。
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