日本でも人気の高いピアノ教本「バスティン・シリーズ」。
新しい導入教材が発売され、2017年から順次日本語版が出されています。
その名も『バスティン・オールインワン』。
副題に「よむ ひく かくを1冊で」とあり、これらが1冊のテキストにまとめられているということです。
バスティンは自分の教室でも使っている(いた)ため、内容を知りたいと思い購入しました。
結果、私の中では、「バスティンを使うなら『オールインワン』!」という結論に。
とっても分かりやすくなっていて、とっても丁寧。教えたい内容を、効率よく伝えられます。
今回は「プリマーA」の中身を詳しくご紹介したいと思います。
参考記事→『バスティン・オールインワン』レベル1Aをこちらで詳しく紹介しています。
バスティンメソードってどんなもの?
バスティンは超有名なピアノレッスン教材です。
ピアノの先生でバスティンを知らない人はいないと思いますが、そうではない人向けにまずは基本情報から。
「バスティン」は、ジェーン・バスティン、ジェームス・バスティン夫妻が開発したアメリカ発のピアノ教育メソードです。
最大の特徴は、「全調メソード」といわれる導入期のころからどんどん調を学んでいくというシステムですね。
これまでのバスティンのテキスト
新たに出版された「オール イン ワン」は、上にも書いたように「よむ ひく かく」が1冊になっているのが特徴です。
ということは、これまでバラバラだったということですね。
バスティンの基本のテキストは「バスティン ピアノ ベージックス」シリーズの以下の4冊です。
- ピアノ・・・・・・・「弾く」ことを中心とした基本のテキスト
- セオリー・・・・・・「楽典ワーク」に当たるもので「書く」が中心
- テクニック・・・・・文字通りテクニックに特化したテキスト
- パフォーマンス・・・併用曲集
「バスティン ピアノ ベーシックス」はプリマーからレベル4までの5段階になっていますが、以上の4冊がそれぞれ5つに分かれています。
今回出版された「オール イン ワン」はこの4冊を1冊にしたもの、ということです。
「オール イン ワン」を紹介したバスティンのサイトに以下のようにあります。
現在発売中のベーシックスシリーズのメイン教材「ピアノのおけいこ」「セオリー」「テクニック」「パフォーマンス」の計4冊の重要な要素を1冊に集約しました。
バスティン「バスティン・オールインワン(プリマーA)日本語版」
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『バスティン・オールインワン プリマーA』その内容は?
それでは、中身を詳しく見ていきます。
まず大前提として確認しておかなければいけないのは、「よむ ひく かくを1冊に」というのは「よむ ひく かくを同時に進めていく」ということです。
「よむ」が〇ページから〇ページまで。「ひく」は・・ということではありません。
構成としてはごちゃまぜになっていて、ページを順番に進めていくことで順次それぞれを学んでいくという形です。
また、副題は「よむ ひく かく」となっていますが、目次では次の4つに分かれています。(書かれている通りに示すためあえて漢字を使っていません)
- ポジション、けんばん、おんめい
- どくふ、おんてい
- リズム
- おんがくきごう
「ポジション、けんばん、おんめい」の進み方をメインに、あとの3つがどのように関連付けられているか、という形でまとめていきます。
ピアノを弾く前に・・
まずは、実際にピアノを弾く前段階で9ページが使われています。
- 座り方
- 手の形
- 指番号
- リズムをたたく
という内容です。
ここまでで出てくる他の単元は「リズム」と「おんがくきごう」です。
「リズム」について
ここで4分音符と2分音符が登場します。4分音符と2分音符のみのリズム譜で、リズム打ちをします。
そのリズム譜の通りに「好きな場所を弾く」という課題もあり、これがテクニックに当たる部分として示されています。
そして、4分音符と2分音符(縦線、終止線も)を書くページもあります。
「おんがくきごう」について
縦線、終止線、そして、ピアノ(p)とフォルテ(f)が出てきます。
左右の手それぞれで好きな場所を弾いてリズム練習をするときに、pやfで弾くという課題になっています。
黒鍵を弾く
ここから本格的に弾くことが始まりますが、まずは黒鍵のみです。
- 黒鍵は2つと3つのまとまりがある
- 低い音、高い音(鍵盤上の関係、聴き分け)
- 音が上がる、音が下がるということ(鍵盤上の関係、聴き分け)
- 黒鍵で曲を弾く
以上のような内容になっています。
まずは、鍵盤の絵を見て黒鍵を見分けること。
そして、黒鍵をチョキやグーで鳴らしてみる(これはテクニックの扱い)ことから始めます。
さらに、先生の弾く音の高低を聞き分けたり、自分で弾いて確かめたりします。
「曲を弾く」ことに関しては、2つ、3つの黒鍵を同時に弾いたりバラバラに弾いたりします。
これにはすべて題名があり、先生用の伴奏譜がついています。
楽譜は「プレリーディング譜」。音符記号や拍子記号、五線の書かれていない楽譜です。
参考→プレリーディング譜については、こちら⇩のバスティンの公式サイトをご覧ください。
「どくふ、おんてい」について
「どくふ、おんてい」は、音の上がり下がりの部分になりますね。
楽譜そのものが、斜めになっていたりして上下して書かれているものを弾いてみることで、音符の位置と音の高低との関係を学びます。
「リズム」につて
ここで、4分休符と全音符が出てきます。
これらが混じったリズム譜でリズム打ちをします。
また、4分休符を書く課題もあります。
「おんがくきごう」について
ここで出てくる音楽記号は、リピート記号とメゾピアノ(mp)、メゾフォルテ(mf)です。
リズム打ちをしたり、曲を弾いたりする中で学んでいきます。
白鍵を弾く
白鍵を弾くことで音名や音の並びを覚えていきます。
まず「ドレミファソラシ」という7つの音の名前を覚え、鍵盤上の様々な場所を弾いてみることから始まります。
音名は、英語音名、日本語音名の両方が書かれています。日本語音名はひらがなですね。
それから
- ドレミ(左は中央ドの1オクターブ下で3,2,1 右は中央ドから1,2,3の指)
- ファソラ(左は中央ドの下のファから3,2,1 右は中央ドの上のファから1,2,3の指)
- 右は中央ドの上のファソラシ(指1,2,3,4)、左は中央ドへ向かってファソラシド(指5,4,3,2,1)
の順で、それぞれの指を使って弾いていきます。
すべて題名の付いた「曲」となっていて、曲を弾きながら学んでいきます。
その内の数曲はテクニックの扱いになっています。
片手ずつ弾きますが、左手⇒右手の順序になっています。
引き続き、楽譜はすべて「プレリーディング譜」です。
最後に、ここで学んだドレミファソラシドを聴き分ける課題(聴音)があります。
「どくふ、おんてい」について
この部分は、上に書いたことと重なります。
鍵盤の絵の新しく出てきた音の場所に斜線を書き入れたり、プレリーディング譜と関連付けて音の高低を学んだりします。
「リズム」について
ここで2分休符が登場します。
ここからは「リズム譜」は無くなりますが、これまでも含めて、曲はすべてリズム打ちをしてから弾くようになっています。
「おんがくきごう」について
ここで出てくる音楽記号は「オクターブ記号」です。
同じメロディーを、1オクターブ上げたり下げたりして弾くことで登場します。
音の高低や手のポジション移動などを学ぶことと同時ですね。
飛ぶ音を弾く
ここからは「飛ぶ音を弾く」のが大きな特徴です。
これまでは、必ず隣の音へ続く形でしたが、ここから、ドミやドミソミなどの飛ぶ音(3度のみ)の動きが加わります。
そして、左手⇒右手と弾いて1曲、という形や、メロディーを両手受け渡しで弾く形の曲が主になります。
つまり、両方の手を使って広い音域を弾くようになるわけですね。
左手だけの曲、右手だけの曲が「テクニックの曲」と位置付けられています。
指くぐりは出てきませんので5指固定で弾くことができますが、弾く場所は曲によって変わります。
基本は「まんなかCポジション」という中央ドから左右に分かれる形ですが、そうではない曲もあります。
さらに、右手で和音を弾く形が1ヵ所だけ出てきます。
また、2、3の指で1つずつポジションを移動させて弾く(例:ドシド⇒シラシ⇒ラソラ・・を2,3,2の指で弾いていく)練習も1か所あります(テクニックの扱い)。
鍵盤上のドレミ・・の位置をきちんと覚え、指の動きが少しずつ複雑になっていくということですね。
その他、復習ドリルが2つあります。
- 鍵盤の絵に音名を書き入れていく
- 拍子のかぞえ方を数字で書く
- 学んだ音符や休符を書く
- 音の動きを答える(飛んでいる音なのかとなりの音なのか)
ドリルの内容は、このような感じです。
「どくふ、おんてい」について
飛ぶ音を弾くことで、「音が飛んでいる」ということ、「どれだけ飛んでいるか」を覚えていきます。
鍵盤やプレリーディング譜の音符の動きと関連付けて学びます。
2度、3度という音程の数え方はまだ学びません。
「リズム」について
ここから拍子記号が出てきます。4/4拍子と3/4拍子です。
それに伴い、プレリーディング譜にも拍子が書かれるようになります。
引き続き、各曲でリズム打ちをする課題が書かれています。
3/4拍子が出てくることで、付点2分音符も登場します。
「おんがくきごう」について
ここでは、1オクターブ低い音を弾く、下に書かれたオクターブ記号が出てきます。
様々な鍵盤の場所を弾き、音の高低を感じることを引き続き行っていくということですね。
また、これまで出てきたf、mf、mp、pの4つの強弱記号が、楽譜の中に書かれるようになります。
Cポジションで弾く
これで『プリマーA』は終わりです。
ここでは、「Cポジション」で弾くことが最大の課題になっています。
「Cポジション」は、左右ともドレミファソの位置で演奏するということですね。
右は中央ドから、左はその1オクターブ下のドからドレミファソになります。
これまでは、曲によって弾く場所が変わっていましたが、ここではすべてCポジションで弾くようになっています。
一番初めの曲が「テクニック」となっていて、まずCポジションをしっかり理解して次へ入る、ということですね。
いちばん最後の曲で、ドソの重音が出てきます。左で弾きます。
また、復習ドリルがここでも2つあります。
内容はこれまでとほぼ同じですが、
- 音符、休符の長さを答える
- 強弱記号の読み方と意味を答える
の2つが新たに加わっています。
「どくふ、おんてい」「リズム」について
この2つに関しては、新しいことは出てきません。
復習ドリルをやることでしっかり覚えましょう、ということのようですね。
「おんがくきごう」について
ここではペダルの記号が出てきます。
- ダンパーペダルの場所
- 記号の意味(踏むヵ所上げるヵ所)
- 踏み方
- 踏んだ時の響きの聴き分け
などが「ねらい」として書かれています。
その他のことについては、やはり復習ドリルでしっかり覚えるということですね。
『バスティン・オールインワン プリマーA』紙面はこんな感じ
紙面の様子についても、少しまとめます。
全ページカラーで、とってもカラフルです。
そして、イラストがやわらかい雰囲気!
バスティンのイラストは、何というか・・とてもアメリカ的で好き嫌いがあるんですよね。
こちらはがらりと様子が変わっていて、万人受けしそうな感じです。
音符の大きさは、「ベーシックス」のプリマーと同じですね。
すべて「プレリーディング譜」なのですが、右手で弾く部分、左手で弾く部分それぞれ2.5㎝ほどの幅です。
拍子記号は、「ベーシックス」より大きくなって分かりやすい。
そして、何を学ぶのかといった「ねらい」や「課題」が、▢で囲まれていたり、色付けされていたり。
それも、とても分かりやすくていいなと思いました。
『バスティン・オールインワン プリマーA』まとめ 小さい子向きでとっても丁寧
今回、プリマーAのみを詳しく見てみました。
進み方がかなりゆっくりで、とっても丁寧という印象です。
対象年齢が4歳からということなので、小学校に上がる前ならこのくらいがちょうどいいかもしれませんね。
私の教室では、これまで小学校3年生前後くらいの子に、「ベーシックス」のプリマーを少しやって、レベル1から使い始めるという形をとってきました。
なので、レベル1以降がどのようになっているのか知りたい、ということで・・
関連記事→こちらで『レベル1A』を紹介しています。
この『オール イン ワン』。2020年11月に日本語版「レベル4B」が発売され、これでシリーズすべてそろったということになります。
「プリマーA」から「レベル4B」まで、全部で10冊になるということですね!!
率直に、多いな~という印象です。
「ピアノ」「セオリー」「テクニック」「パフォーマンス」を1冊に、ということだから、そのくらいになりますか・・
すべてが1冊にということでは、効率よく進めていけると思います。
これまで「ピアノ」と「セオリー」を主に使ってきましたが、進み方のバランスがどうも崩れてしまって・・
指導力の問題かしら・・
そうした悩みを持っている場合には、とってもいいと思います!
これからバスティンのテキストを使う場合は『オールインワン』で決まり!です。
(公開日:2018年3月31日 最終更新日:2024年7月11日)
こちらもチェック
→『バスティン・オールインワン』レベル1Aをこちらで詳しく紹介しています。
→バスティンの基本テキスト『バスティン ベーシックス』についてこちらの記事で詳しく紹介しています。
→『バスティン ヤングビギナー』を含む5冊の導入教材を比較してみました。
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