ピアノのフォルテ(f)乱暴な音にならない弾き方をピアノの構造から考える

ピアノの弾き方・練習法

レッスンの中で

楽譜に”フォルテ(f)”と書いてある。どう弾く?

となった時、子どもたちはとにかく大きな音を出すために、ガンガン鍵盤をたたく弾き方になりがちです。

まーそれは乱暴な音になります!

横にビャッと広がった、まとまりのない、とてもキレイとは言えない音です。

でも、そうならないためにはどうすればいいんでしょう・・。

ピアノの構造 音が出る仕組み

まずは、ピアノの音が出る仕組みを確認してみます。

↑引用元:YAMAHA楽器解体全書「ピアノのしくみ 音が出るしくみ」より

鍵盤を押すとハンマーが上がり、下から弦をたたくことで音が出ます。

弦の振動が”音”ということですね。

この振動は響板、そして楽器全体に伝わり、それが空気を震わせより大きな音になる、ということです。

弦をたたいただけでは、たいして大きな音にはなりませんよね。

鍵盤を押してハンマーが弦をたたくと同時に、ダンパーも持ち上がります。

そのため、鍵盤を押さえている間は音を持続させることができます。

鍵盤を離すとダンパーも下がって弦に触れ、音は切れます。

足でダンパーペダルを踏んでいる間は、ダンパーは持ち上がったまま。

なので、鍵盤を離しても音が切れない、ということになりますね。

鍵盤を押したときに、底まで押し切る前に何かつっかる感じがします。

鍵盤を押すと同時にハンマーが動き、「カクン」とした時が弦に当たる瞬間、ということになります。

つまり、音が出るのはその時です。

鍵盤を押して「カクン」と感じるまでの間をどうするか、が問題だということですね。

音の大きさは弦をたたく速度によって決まる

大きな音を出そうとすると、

鍵盤を力強く上からたたく

ということになりがちです。

大きな力で押せば大きな音が出る、ということですよね。

確かにその通り。大きな音が出ます。

でも、力を込めてたたきつけなくても大きな音は出せます

鍵盤に指をくっつけた状態からでも、大きな音は出せるんです。

それは、自分の経験上分かっていました。

だって、曲の中で大きな音を出さなければならない時、いちいち上からたたきつけていられません。

結局は、鍵盤のごく近く、または完全に触れている状態からフォルテの音を出すことになるんです。

じゃあ、なぜ、たたきつけなくても大きな音が出るのか。

これを読んで納得しました。

『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』です。

音の大きさと質は、鍵盤の底に伝えられる重さや力の量ではなく、鍵盤が下降する速度によって変化するということです。結局のところ、ポイント・オブ・サウンドに到達した瞬間に鍵盤を押さえている力の量は、ピアノにとってはなんの意味もありません。ピアノが反応できるのは、鍵盤が下降する速度だけです。下降する速度のみが、打弦するハンマーの速度を決定し、それが、音の大きさと質を決定するのです。

*「ポイント・オブ・サウンド」とは、上に記した「カクン」と感じる部分のことです。

『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』145頁(下線は原文のまま)

また、「シャンドールピアノ教本」には、以下のような記述があります。

ピアノの音は、ハンマーが弦を打ち、それによって弦が振動することによって、生み出される。つまり音質の良し悪しを左右するのは、ハンマー(フェルトで覆われている)の表面に使われている素材とその質、硬さや柔らかさ、弾力性、湿度の状態である。もしこれらの条件が十分に整っていれば、ハンマーが弦を打つ速度を変えることによって、強弱のレベルや音質を変化させることができるのである。要するに、重量・質量・力・強さ・緊張・弛緩・ポジション・筋肉・神経・関節・骨・肩・腕・手・指はすべて、ハンマーを適切なスピードで動かすという目的に奉仕しなければならないのである。

「シャンドールピアノ教本」28頁

鍵盤をたたく速さが音の大きさの違いを生む

なので、鍵盤に指を乗せた状態からでも、素早く鍵盤を押せば大きな音が出せる、ということです。

もっと言えば、ハンマーが弦をたたくスピードによってしか、音量を(音色も)変えることができない、ということです。

このスピードを微妙にコントロールすることで、様々な音を出していくことになるんですね。

それは、倍音の構成を変え、響板への伝わり方にも変化を与え、結果、音質の違いになって現れるということです。

フォルテ(f)で弾きたい!実際どうすればいいの?

では、実際どう弾けば、美しいフォルテ(f)になるのでしょう‥。

叩きつけると乱暴な音になる。

ならばやっぱり、まずとにかく鍵盤に指を置いた状態から大きな音を出してみることだと思います。

鍵盤を力強く押すのではなく、「速く」という意識を忘れずに。

押し込んでも意味はない

その時、指から前腕にかけて力が入ります。速く押すためには力が必要です。

クッと力を入れて素早く鍵盤を押す。すると、大きな音が出るはずです。

しかも、上からたたきつけるように弾いていた時よりも、なんというか、まとまりのあるきれいな音になっているのではないでしょうか。

音が出たその後は、鍵盤から指が離れない程度に力を緩めます

鍵盤の底をギューギュー押す必要は全くありません。

「カクン」と感じるところを超えればすでに音は出てしまっているんですから、押し込んでも意味ないんです。

それよりも、大きな音を出すために使った指から前腕にかけての緊張を、すぐに解くことが大事です。

これがいわゆる「脱力」といわれるものですが、本当に力を抜いてしまったら手はだらんと下に落ちてしまいます。

ということは、音も切れてしまうことになりますし、そもそも弾き続けることができませんよね。

大きな音を出すには力が必要。つまり、クッと筋肉を緊張させることになります。その緊張だけを緩ませるということです。

弾くための最低限の力だけを使って、あとはやわらか~くしておくこと。

これがポイントだと思います。

ずっと力を込めたままの状態でいると、痛める元にもなります。

いろんな「速さ」を試してみる

指を鍵盤の上に置いた状態から大きな音を出すと、それだけで乱暴な感じはなくなるのではないかと思います。

細かなことは分かりませんが、弦の振動や響板への伝わり方が、上からたたきつけるのとは違ったものになっているということでしょう。

「大きな音」と一口に言っても、音色はいろいろです。

鋭い音なのか、力強い音なのか。大きく柔らかく、ということもあります。

上に書いたように、鍵盤を押す速さ(ハンマーが弦をたたく速さ)によって音色が変わるということなので、いろんな「速さ」で弾いてみます。

様々な音色を想像して、いろいろと試し弾きをしてみるといいと思います。

ピアノの中をのぞいてみる

できれば、ピアノの中をのぞいて実際にハンマーが弦をたたく様子を見てみるといいと思います。

どんな弾き方をすると、どんなふうにハンマーが動くのかを、自分で弾きながら見てみるのです。

すると、とても繊細に反応していることが分かります。

フォルテ(F)だけではなくピアノ(P)も弾いてみて、これもまた、いろいろと試してみるといいと思います。

実際にピアノに触れる指先の神経を鋭敏にして、感覚をしっかり感じ取りながら。

そして、自分の出している音をよ~く聴きながら。

フォルテ(f)もピアノ(p)も「理想の音」を目指して

大きな音を弾くとなった時に、「なんだか乱暴な音になる」。

これにまずは気づいていることが必要ですよね。

レッスンの中で子どもたちを見ていると、弾いている当人はそれに全く気付いていないことが多いです。

録音して聴かせると、「なんか変」「なんかガンガンってなってる」という感じで気が付きます。

「いいと思う!」と言われちゃうこともあるけど・・

そこから初めて話が始まります。「じゃあどんな風に弾きたいの?」という話になります。

音を変えていくためには、理想の音を持っている必要がありますよね。

乱暴な音になっているということだけ伝えて弾き方だけ変えても、中身がない・・というか。

こういう音を出したい。だからこういう弾き方にする。

この順序が大事かな、と思います。

「理想の音を出す」って簡単にはいかないこと。

それを追求していくことがピアノを弾く醍醐味、と言ってもいいくらいです。

私の立場からいったら、「こんな音はどう?」と子どもたちに示していく側。

私もいろいろと研究しなくちゃ、と思います。

(公開日:2017年4月15日 最終更新日:2023年1月25日)

⇩この記事の参考文献はこちらです。

↓ピアノ弾き必携の書だと思います。ぜひ一読を!!

⇩具体的なピアノの弾き方が、「5つの基本動作」としてまとめられています。

また、上に記した「鍵盤の上に指を置いた状態で大きな音を出す」やり方は、こちらの書籍の154ページから始まる「第8章 突き」に書かれていることと同じだと解釈しています。

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