今回は『ぴあの どりーむ』を取り上げます。
永田萌さんのやさしくやわらかいイラストが印象的な、子ども向けのピアノ導入教材ですね。
イラストがとにかく豊富で、絵本を見ているような感じ。心がほっこりしてきます。
今回は1巻のみを紹介します。
ゆったり無理なく進めていけるような、優しい感じのテキストです。
『ぴあの どりーむ』とは?
『ぴあの どりーむ』は、学研ホールディングスのグループ会社である学研プラスから出版されています。
初版は1993年。今から約30年前になりますね。
著者は田丸信明さん。
この『ぴあの どりーむ』シリーズを始め、『おんがくドリル』や併用曲集『ピアノの森』の著者でもあります。
テキスト、ワーク、併用曲集がシリーズで
『ぴあの どりーむ』は全部で6巻。
すべて題名のつけられている”曲集テキスト”となっています。
他に、「ワークブック」と「レパートリー」がありますが、それぞれ第6巻まであります。
並行して使っていけるということですね。
明確な記載が見当たらないですが、収録曲から考えると、第6巻終了でブルグミュラーに入る程度の難易度になるようです。
幼児版、そして第7巻も
『ぴあの どりーむ』には、「幼児版」もあります。
テキストとワークブックの2冊に分かれていて、「2歳6か月から使える」となっています。
また、2018年9月に「ぴあのどりーむ7」が発売されています。
内容は、「第6巻終了からソナチネ導入まで」。
ここまでフォローされているシリーズは他にないのではないでしょうか。
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『ぴあの どりーむ1』内容と進み方について
それでは、具体的な内容をご紹介します。
本書は、目次の次のページに〔第1巻のカリキュラム・ポイント〕という枠で、内容が箇条書きでまとめられています。
以下に転記します。
1、右手・左手における指番号の順序の違いを理解させます。
『ぴあのどりーむ』第1巻〔第1巻のカリキュラムポイント〕より
2、子供にとって大切な絶対音感とソルフェージュをつけるために、ハ(一点ハ)の音を中心として、大譜表と鍵盤の関係を理解させます。
3、音域と指番号は次の通りです。
・ト音記号・・・1,2,3の指で中央ドからドレミ
・ヘ音記号・・・1,2,3の指で中央ドからドシラ
4、1指による右手奏・左手奏と交互奏の体験から始まり、右手および左手の1・2・3指を使った演奏を習得していきます。
5、楽譜の要素として4/4、4/3、4分音符、2分音符、付点2分音符、4分休符が出てきますが、それぞれの読み方、意味等は2巻以降で改めて学びます。
これで、目的や内容が分かると思いますが、もう少し詳しく書きます。
曲を弾く前に指番号を覚える
まずは、見開き2ページで指番号を覚えます。
テキストにそのまま手を置いたような形で、左ページに左手、右ページに右手のイラストがあり、それぞれ番号が振られています。
そして、左手の方にはヘ音記号の五線があり、中央ドへ向かってラシドの音が書かれ、指番号も付けられています。
右ページはその逆。ト音記号の五線があり、中央ドからドレミの音が書かれ、指番号が付いています。
下部には、「ゆびのうた」というタイトルの楽譜があります。コードネームの付いた1段譜で、歌詞が書いてあります。
先生の伴奏で歌って、指番号を覚えましょう、ということですね。
この『ぴあの どりーむ』第1巻は、中央ドから上へドレミ、下へドシラの音域しか出てこないということですね。
上に引用した〔第1巻のカリキュラム・ポイント〕の3番にある通りです。
このページですべての音が示されている、ということになりますね。
「曲」の部分について
次のページから、すべて題名のついた「曲」を弾くことになります。
特長は以下のようなことになります。
- 全部で26曲
- 24曲が著者、田丸信明さん作曲+わらべうた2曲(「いちばんぼし」「ほたる」)
- 15曲目までは4小節 16曲目以降に8小節の曲が7曲が混ざる
- ほとんどの曲が歌詞つき(無い曲が2曲)
- 伴奏譜付きは12曲 付いたり付かなかったり
曲の進み方
曲の進み方、つまり、音域の広がり方や左右の使い方などをまとめてみます。
音域の広がり方
上にも書いたとおり、第1巻で出てくる音域は中央ドを挟んで「ラシドレミ」の5音のみです。
広がり方は次の様になっています。出てくる拍子や音符についてもまとめます。
- ド(5曲 4/4拍子4小節 4分音符、4分休符)
- ドレ(5曲 +2分音符)
- シドレ(6曲うち3/4拍子8小節が1曲)
- ラシドレ(6曲うち8小節3曲 3/4拍子2曲 +付点2分音符)
- ラシドレミ(4曲うち8小節3曲)
始めは中央ドだけの曲が5曲続きます。
すべて4/4拍子4小節で、4分音符、4分休符のみです。
音域の広がりとともに、2分音符が加わり、8小節と長くなります。
そして、3/4拍子が出てきて、付点2分音符が加わります。
左右の手の使い方
左右の手は、以下のような弾き方で進められます。
右手でドレミ、左手でドシラを1,2,3の指で、ドは左右どちらでも弾くようになっています。
- ドのみ・・右4小節で1曲→左4小節で1曲→左右弾き継ぎ3曲
- ドレの音域・・右手のみ1曲→左右弾き継ぎ4曲(左はドのみ ドは右でも弾く)
- シドレの音域以降・・始めから左右弾き継ぎ(ドは左右どちらでも弾く)
左右を弾き継ぐ形になっても、手を変えるタイミングは分かりやすく工夫されています。
1小節ずつ交代であったり、4拍子なら2拍ずつになっていたりという形です。
(ドのみの曲では、1拍目のみ左手という部分があります。また、3拍子の曲も3拍目のみ右手となっているものがあります。)
音の飛び方
音域が広がってくると音が飛ぶ部分も出てきます。その状況をまとめます。
音が飛ぶのは、音域がシドレになって以降ということになりますね。
- 音域シドレ・・最後の曲でシ→レが1ヵ所
- 音域ラシドレ
- ド→ラ(左のみ)1ヵ所
- 1曲の中でレ→シ、シ→レ1ヵ所ずつ
- シ→レ1ヵ所
- 1曲の中でラ→レ2か所
- 音域ラシドレミ
- ミ→ラ1ヵ所
- 1曲の中でド→ミ(右のみ)2か所、レ→シ、レ→ラ1ヵ所ずつ
- 1曲の中でレ→ラ2か所
- 1曲の中でラ→ミ3か所、ラ→レ1ヵ所、ミ→ラ1ヵ所、ド→ラ2ヵ所
右手でド→ミといった具合に、片手の中で音が飛ぶのは2か所のみです。
あとはすべて左から右、右から左という形での飛び方です。
理屈での説明は無し
音符の読み方や意味などについての説明は、一切ありません。鍵盤と楽譜の位置が示されているだけ。
〔第1巻のカリキュラム・ポイント〕の5にある通りです。
そういったことは「第2巻以降で学ぶ」と書かれていますね。
なので、音楽記号や速度表示なども全く出てきません。
まずは、簡単な旋律を弾きながら体でリズムなどを感じていく、ということですね。
『ぴあの どりーむ1』の特長 指導ポイントが明確
全部で26曲あるこの『ぴあの どりーむ』第1巻ですが、すべての曲で指導すべき内容が書かれています。
上に書いた〔第1巻のカリキュラム・ポイント〕の次から1ページ半にわたってまとめられています。
例えば・・
2.ことりがトントントン……鍵盤奏の前に歌詞を言わせながらリズム打ちを行ってください。伴奏をつける場合はスタッカートをはっきりと出すようにしましょう。
*赤字部分は原文のまま
『ぴあの ドリーム』第1巻 各曲の指導のポイントより
これは、2曲目の「ことりがトントントン」に対するものですが、全曲でこのような形にまとめられています。
どういった目的の曲で、どういったことに注意が必要で、どういった練習をさせるのか・・
もっと長い文章のものもあり、かなり具体的に書かれています。
新米ピアノ教師にはとってもありがたい。
また、これだけ丁寧に書かれていたら、親子で教える場合もよいかもしれません。
『ぴあの どりーむ1』楽譜の状況
最後に楽譜の状況についてまとめます。
新しい音を覚えるときには、必ず1ページを割いて、鍵盤の絵と楽譜が二つを対応させた形で載せられています。
鍵盤の絵には音名が、楽譜の方には指番号が書かれています。
曲の楽譜は、ページの上部がイラストで下に1曲という場合もありますし、1ページ2曲の場合もあります。
1ページ2曲の場合は、反対のページは全面イラストです。フルカラー!美しいです・・・
楽譜はそれほど大きくはありません。五線で7㎜、大譜表としては4㎝程度。
子ども用の導入教材としては小さい方ではないでしょうか。
文章での説明が一切なく、楽譜周りがごちゃごちゃしておらず、それが見やすさにつながっているのかなと思います。
イラストは、すべてイラストレーター永田萌さんによるものです。
あ
『ぴあの どりーむ1』まとめ やさしさにあふれた教材です
『ぴあの どりーむ』第1巻についてまとめてきました。
音域、リズムなどなどすべてにおいて、進み方はとてもゆっくりですね。
そして、色鮮やかな美しいイラストが、とってもやさしい雰囲気を作っています。
楽譜は決して大きくありません。
でも、見た目がすっきりとしていて分かりやすく、集中しやすいのではないかと思います。
「これからピアノを楽しんでいこうね」という気持ちが、テンション高くにぎやかな雰囲気ではなく、やさしく包み込むような、おちついた印象であらわされているなと感じます。
進み方はゆっくりではありますが、「指導ポイント」はかなり細かくはっきりと書かれています。
この通りに進めれば、しっかり着実に進歩していけるのではないでしょうか。
お値段が「1400円+税」と少々高めで、バイエル終了程度で6巻まである。
ここがが少しネックにはなるでしょうか。
でも、この雰囲気がぴったり合う、という子もいますよね。
これからも常備しておきたいと思っています。
(公開日:2018年11月22日 最終更新日:2024年7月9日)
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