ピアノ教室で「発表会」といえば、最も大きな、最も重要な教室行事です。
ここで少々問題になってくるのが、参加は強制(ってちょっときつい言い方ですが)なのか任意なのか、ということかもしれません。
発表会に出て大勢の前で演奏することは、とても良い勉強、良い経験になる。
それは確かです。
そもそも、音楽は人に聴いてもらってこそ意味のあることだと思います。
今は、「参加必須」としている教室は少ないかもしれませんね。
私の教室でも「自由参加」としています。
教室を始めた当初は必須としていましたが、それをやめました。
その理由と自分の考えを書いてみようと思います。
発表会の強制参加をやめることになったきっかけ
私の教室は、2024年4月で開室15年目になりました。
初めての発表会は2年目の冬です。
生徒数は少ないけれど発表会はとっても大事!何とかやりたい。
と考えて、普段のレッスン室でこじんまりとしてでも行うことにしました。
原則全員参加、ということで。
教室規約にもそのようにすでに記していました。
でも・・・
レッスンに来ている子どもたちには、当日から3か月ほど前に発表会について告知をし、曲を決めていくことになります。
そんな中、ある一人の子が、「今度発表会をしようと思うんだけど‥」ということを言ったとたんに今にも泣きだしそうな表情に。
当時その子は小学校1年生。レッスンを始めて10か月目を迎える頃でした。
「みんなの前でピアノを弾く」。もうそれだけで不安と緊張でいっぱいになってしまったんですね。
その日は用事があるから・・出られないと思う・・
などなど一生懸命自分で理由を考えて言います。
そばで聞いていたお母さんは、笑顔で
用事?ないない!どうもこの子、緊張しぃなのよねー
といった感じ。
お母さんのこうした様子もあってか、その後不安そうな様子はちょくちょく見られつつも、発表会にはしっかり出演しました。
でも、私はこの事がきっかけで、発表会の参加の仕方について考えてしまいました。
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発表会に参加する生徒の気持ちはどうあるべきか
「発表会」と聞いただけで、泣きたくなるほどのプレッシャーを感じる。
これほどの強い緊張感を与えてしまっていいのだろうか・・
そんな権限が私にあるのか??
まず、この事を強く思いました。
出ることがすでに決まっている。嫌だろうが何だろうが、出なくてはいけない!
こんな苦しいことってあるだろうか。
そんな風に思いました。
もちろん、みんながみんなこの子のような状態だったわけではありません。
発表会出演を当然のように受け止めた子もいました。
みんなの前で弾くこと自体がとっても楽しみ!という子もいました。
でも、一方でそうではない子がいる。
この事はきちんと受け止めなければいけない、と思いました。
「発表会は良い経験になる」その通りだけれど‥
「音楽は人に聴いてもらってこそ意味がある」と私は思っています。
発表会は、自分の演奏を人に聴いてもらう機会としてとっても重要です。
そうしたことから、「発表会はレッスンの一環と考えているので原則参加です」としていました。
でもね・・。
「発表会は大事」という考えは、私の立場からのことなんです。
子どもたちにしてみれば、「そんなこと知ったこっちゃない」なんですよね。
「いい経験になるよ」
「もっと上手になるよ」
「いい刺激を受けられるよ」
と言われたって、「先生だからそう思うんでしょ」ということでしかありません。
そんなことより緊張するからいやだ、ということなんです。
「出たくない」という気持ちはとっても大事
上に挙げた「発表会」と聞いただけで泣けてきてしまった子。
それがとっても緊張感を伴うことだということまで一瞬で想像し、嫌だ、という感情が生まれたということです。
これは一方で、なかなかすごいことだと感じてしまった私です。
私の立場からいえば、発表会という人前で弾く場を、決して軽く考えてほしくはありません。
ある程度の緊張感をもって、聴いていただくという謙虚な気持ちで臨んでほしいものです。
この子は、そして「嫌だ、出たくない」という気持ちを持つすべての子は、そのことをすでに分かっている、ということでもあります。
そうしたことからも、この気持ちを大事に受け止める必要があると感じています。
その気持ちと葛藤してほしいと考えます。
積極的な気持ちで出てほしいから
「緊張する、嫌だ」という気持ちとしっかり向き合って、その上で最終的には「出る」と、自分の意思で決めてほしい。
こう思っています。
なので、「参加必須」をやめました。
出るかどうかを自分で決めてほしいのです。
初めから参加することが決まっていては、どこまで”葛藤”ができるのか・・。
緊張を克服して気持ちよく出られた、ということもあると思いますが、嫌々参加した、ということになる可能性も高くあります。
それでは、発表会をする意味はあるのか・・と思ってしまいます。
自分の気持ちと向きあった結果「出ない」という結論になっても、その子が自分で決めたことならそれだけで価値がある。
これもまた、発表会をする意味、になるのではないかなと思います。
発表会がなかったら、経験できなかったことですから。
「出てほしい」という私の気持ちはしっかり伝えます
今は、「強制参加ではありません」ということを伝えつつ、発表会をすることの意味も要所要所で伝えるようにしています。
私は出てほしい。でも、決めるのはあなた。
こうしたスタンスで話を進めています。
上に挙げた子のようなことは、あれ以降ありません。
レッスンを始めたばかり、復帰したばかりという子以外は、ほぼ全員参加しています(もともと少ない人数ですが)。
みんながみんな積極的な気持ちで出演しているのかどうか、本人たちに聞いてみなければわかりません。
でも、少なくとも「出なくてはいけないもの」とは思っていないのではないかな。
であれば、それでいいと思っています。
発表会参加方法を自分で選ぶ~コロナ禍を経て~
一堂に会する形が難しかったコロナ禍では、録画発表会を行いました。
その間も、参加するかしないかは自分で決める、を大事にしてきました。
それを経て、今後は、
- 一堂に集まって生演奏を聴いてもらう、これまで通りの発表会。
- 録画を見てもらう発表会。
- 参加自体をしない。
このどれかを選んでもらうことにしました。
レッスンを受けている本人、そして保護者の方の意見も聞いた結果です。
行ったのはまだ1度だけですが、レッスンを始めたばかりという人以外みなさん参加しました。
録画希望が多かったですが、人前で弾くことを選んだ人もいました。
演奏を聴いてもらおう、という気持ちは多かれ少なかれ皆持っているんだな。
というのが私の実感です。
でも、発表の方法が「人前で弾く」という形のみだったら、参加しない人はもっといた。
みなさんの様子を見ていて、そう考えています。
発表をする機会は設け、参加しやすい形で発表してもらう。
「選べる」というのは自分で決められる、決めやすいということ。
これからも、それを大事にしていきたいと思っています。
発表会「大きなホールのいいピアノで」は無理だけれど
発表会は晴れの舞台。
少しでもいいピアノで、そして大きなホールで弾かせてあげたいって思ってしまうんですよね・・
それこそ、ピアノの発表会じゃなきゃなかなか経験できないことだしって。
で、思うんです。
おいおい待てよ、発表会で一番大事にしなくてはいけないことは、大きなホールで弾くこと?いいピアノで弾くこと?
いえいえ、自分の演奏を聴いてもらう経験をすること。
それに向けて、考え、悩み、そして練習すること。
大事なのはこれ!
これからも忘れずにいきたいですね。
任意参加、としている間は、なかなか大きなホールで行うことは難しいかもしれません。
というか、うちのような10人程度の生徒数でホールを借りるなんて、どれだけ参加料をいただかなければいけなくなるのか。
そもそもムリ!
どんな場所で、そんな方法で行ったとしても、出演するみなさんは、そこに向けて一生懸命練習し、緊張しながら丁寧に演奏しています。
これが大事。これで十分ではないかな。
そんな風に思っています。
(公開日:2017年4月18日 最終更新日:2024年6月18日)
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