初心者向けのピアノテクニック教本『初歩のピアノ練習曲集』のご紹介です。
様々な作曲家による、「曲らしい曲」でまとめられている練習曲集です。
目次には、その曲の目的が明確に書かれています。
なので、自分に必要なところを選んで練習する、という使い方もできるかなと思います。
今回は『①』のみのご紹介です。ぜひ検討してみてください。
⇩こんな人におすすめ!
『初歩のピアノ練習曲集』とは?
『初歩のピアノ練習曲集』は、「ヤマハ ピアノ ライブラリー」と銘打たれた、ヤマハから出版されているシリーズの中の1冊です。
①~③までありますが、今回は『①』を詳しく紹介します。
この”初歩”シリーズの次の段階の『ピアノ練習曲集』①~③もあります。
これらの練習曲集の大きな特徴は
ということです。
練習曲集で有名な「ツェルニー〇番」のツェルニーさんはもちろん、その他いろんな人です。
それが、私がお勧めしたい大きなポイントです。
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『初歩のピアノ練習曲集①』について
今回は①を詳しくご紹介します。
・掲載されている作曲家
・曲数と内容
・難易度
の3つに分けてまとめてみます。
掲載されている作曲家
上に、様々な作曲家による練習曲が1冊になっている、とご紹介しました。
①に載せられている作曲家と年代を詳しく書いてみます。
なお、「○曲」の数字はこの曲集に載せられている曲数です。
- ツェルニー(1791-1857)・・11曲
- ケーラー(1820-1886)・・5曲
- ベレンス(1826-1880)・・3曲
- シュピントラー(1817-1905)・・2曲
- ホルネマン(1840-1906)・・2曲
- グルリット(1820-1901)・・7曲
- シュンゲラー(1884-1949)・・2曲
- テュルク(1750-1813)・・2曲
- フンメル(1778-1837)・・1曲
- シッテ(1848-1909)・・1曲
- ブレスラウアー(1836-1899)・・1曲
- ブルグミュラー(1806-1874)・・1曲
- ディアベッリ(1781-1858)・・2曲
- ライネッケ(1824-1910)・・2曲
- ヴォールファールト(1797-1883)・・3曲
- ミュラー(1767-1817)・・1曲
- ベルティーニ(1798-1876)・・2曲
- リュリ(1632-1687)・・1曲
- ル クーペ(1811-1887)・・1曲
全19人。
1番古い時代の人が、リュリ(1632-1687)。
1番新しい時代の人が、シュンゲラー(1884-1949)。
1800年代に生きた人が圧倒的に多いですね。1900年代に入って亡くなった人が6人。
ピアノの歴史を見ると、ほぼ今と同じピアノになったのは1800年代半ば。
ということで、現代と同じピアノを弾いていた人の作曲が多いということですね。
曲数と内容
曲数は、全50曲です。
50曲それぞれ、習得したいテクニックの目的をもって書かれています(題名ではありません)。
以下に並べてみます(長いです…)。
右側のカッコは作曲者です。(リンク先は演奏動画です)
- ハ長調のレガート奏(ツェルニー)
- 両手の平行奏(ケーラー)
- 左手の重音(ベレンス)
- カノン(シュピントラー)
- 右手全指の動きと移調奏(ホルネマン)
- 左手全指の動きと移調奏(ホルネマン)
- 6/8のレガート奏法(ベレンス)
- 重音伴奏と8分音符を含む動き(グルリット)
- 模倣による左右の動き(シュンゲラー)
- カノン(グルリット)
- アルベルティ・バスの伴奏(ツェルニー)
- 左手の和音奏(ツェルニー)
- メロディーとバスの動き(テュルク)
- 分散和音とアーティキュレーションのつけ方(ツェルニー)
- スタッカートとレガート(テーマとバリエーション)(フンメル)
- 左手指広げの分散和音(ケーラー)
- 8分音符のスケールと重音伴奏(ツェルニー)
- 3連符(シッテ)
- 左手の指の広がり(ツェルニー)
- カノンの動きと短調への移調(ブレスラウアー)
- スケールのレガート奏と移調奏(ブルグミュラー)
- 左手の分散和音と3/8の動き(ディアベッリ)
- 2声(♯と♮)(シュンゲラー)
- 指よせや指広げのある不規則な動き(ライネッケ)
- 全打音とスタッカート奏(ベレンス)
- タイによるバス保持(グルリット)
- 重音のスタッカートとレガート奏(ツェルニー)
- 付点のリズムのレガート奏(ヴォールファールト)
- 分散和音の交互奏(グルリット)
- アウフタクトのある2声(テュルク)
- 重音伴奏と平行奏(ミュラー)
- スケールと重音(ツェルニー)
- アウフタクトと左手の分散和音(ヴォールファールト)
- 休符のあるスケールのレガート奏(グルリット)
- 短調の響き(ベルティーニ)
- 左右のなめらかなスケール(グルリット)
- 右手の1指の柔軟と転調(ベルティーニ)
- レガート奏(ケーラー)
- 重音奏と同音連打(ディアベッリ)
- 短調のカノン(リュリ)
- ニ長調の分散和音奏とアーティキュレーション(ツェルニー)
- 左手のメロディー奏と右手の和音伴奏(グルリット)
- 左手の跳躍と左右別々の動き(ヴォールファールト)
- バスとメロディーの動きを合わせたレガート奏(ツェルニー)
- アウフタクト、全打音と重音(ツェルニー)
- アーティキュレーションと小さな転調(ケーラー)
- スケール、トリル、重音(ケーラー)
- 3連符の分散和音伴奏(シュピントラー)
- イ長調の分散和音とアクセント、スラー(ル クーペ)
- 半音程を含んだスケール(ライネッケ)
色々ありますよね~~。
はじめから練習曲として作られたもの、1つの作品として作られたものが「○○の練習になる」として掲載されているものがあります。
本書の1番最後に出典が載っています。
演奏動画→『初歩のピアノ練習曲集①』から数曲を選んで弾いてみました。
難易度
この教本「初心者向け」とは書きましたが、実は少々難しいかなと感じています。
①②③の難易度は、出版社によれば次の様になっています。
- ①・・・こどものバイエル上巻後半程度
- ②・・・こどものバイエル下巻程度
- ③・・・バイエル修了程度
『①』でも「こどものバイエル上巻後半程度」。
ということで、バイエルの半ばまでは進んでいる必要があります。
全くの初心者から使えるというものではないですね。
今回は『①』を紹介していますが、『①』の1番最初の曲は以下のような感じです。
- 両手奏で、それぞれ別々の動きをする
- 右手4分音符、左手2分音符
- 左右とも5指固定で5指とも使う
- リピートせずに24小節(リピート2か所)
曲は難易度順に並んでいるので、1番はじめの曲が最も簡単だということになりますが、こんな⇧感じです。
少なくとも、「左右別々の動きをする両手奏」ができるくらいになっていないと弾けないということですね。
上に書いたそれぞれの曲の内容を見ても、様々なテクニックが出てきます。
スラーやスタッカートや和音や3連符や装飾音符や・・・
そして、1曲の長さも長いです。
短くて8小節。長いと1ページ半(7段)の曲も複数あります。
ただ、音符は8分音符までしか出てきません。
練習意図を理解して弾くには、バイエルの中ごろは確実に過ぎていないと難しいのではないかなと思います。
また、弾く力はあっても短い曲に慣れてしまっていると、曲の長さで疲れてしまうかもしれません。
『初歩のピアノ練習曲集①』楽譜はこんな感じ
楽譜の様子もまとめます。
五線の幅は8㎜。初心者用楽譜としては標準的な大きさかなと思います。
基本的には1ページに4段。曲によっては5段のものもあります。
音符は大きい方ではないでしょうか。初心者向けですし。
初心者向けのテクニック教本として有名な、『バーナム ピアノ テクニック 導入書』と同じくらいだと思います。
参考記事→こちらの記事で『バーナム ピアノ テクニック 導入書』を紹介しています。
題名はなく、イラストもない。
その分楽譜を大きくできているのではないかと思います。
『初歩のピアノ練習曲集①』まとめ 練習曲でも曲らしく弾きたいなら
「1曲が長い」と上に書きましたが、それはデメリットでありメリットであると感じています。
この『練習曲集』は、音楽的な”曲”になっています。
アーティキュレーションがテーマではなくても、それらがきっちり書かれていたり。
短いながらも3部形式になっていたり。
なので、明確な目的がありつつも、様々な要素を含んだ一つの楽曲を通してそれを学ぶという形になります。
そのためにはある程度長さが必要で、1曲が長め。
技術が上がってくるとレッスンする曲はどんどん長くなります。
日ごろから長い曲にも慣れていかないと、と思います。
練習曲にも「曲らしさ」を求める人は、ぜひ使ってみてほしいと思います。
(公開日:2017年12月22日 最終更新日:2024年11月21日)
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