あまり子どもっぽくなくて、でも初心者向けで、よく知られた曲が多くて、クラシックばかりではなくて・・
こんな曲集を探していて行き着いたのが、この『バイエル併用 ポピュラー・ピアノ曲集』。
「こどもから大人まで」というコンセプトのもと作られたようで、大人の方も納得の選曲ではないでしょうか。
全2巻のこの曲集。1、2巻それぞれを詳しく紹介します。
『バイエル併用 ポピュラー・ピアノ曲集』とは?
まずは、1,2巻通してどんな曲集かをまとめます。
『バイエル併用 ポピュラー・ピアノ曲集』は、2013年にドレミ楽譜出版社から出された全2巻の曲集です。
”バイエル併用”とある通り、バイエルをやっているくらいの人向け。バイエルはピアノ導入教材なので、初心者向けということですね。
- 第1巻・・・バイエル20番~70番ぐらい
- 第2巻・・・バイエル70番~終わりぐらい
となっています。
「はじめに」に以下のようにあります。
本書には、おとなにもこどもにも親しまれているファミリー・ソングの中から、より〈ポピュラー〉な曲が集められ、〔バイエル何番ぐらい〕というグレードに従ってやさしく編曲、配列されています。
引用:『バイエル併用 ポピュラー・ピアノ曲集』「はじめに」より
「はじめに」には、「子どもの通う教室に一緒に通う親の姿もあり、クラシック曲ばかりではなく知っている曲を気軽に楽しんでいる様子がある」ということも書かれています。
そうしたことから、子どもにも大人にも、家族で使ってもらえるような曲集を作ったということのようですね。
第1巻について
まずは、第1巻についてまとめます。
収録曲は?
収められている曲についてです。
バイエル20番から10番ずつに区切って、難易度順になっています。
- バイエル20~30番ぐらい
- 月の光に(フランス民謡)
- きらきら星(フランス民謡)
- バケツの穴(アメリカ民謡)
- ロンドン橋(イギリス民謡)
- ジャンバラヤ(ウィリアムス)
- ユー・アー・マイ・サンシャイン(デービス)
- 一週間(ロシア民謡)
- バイエル30~40番ぐらい
- 赤い河の谷間(アメリカ民謡)
- トム・ドゥーリ―(アメリカ民謡)
- 500マイル(アメリカ民謡)
- ローレライ(ジルヒャ―)
- こげよマイケル(プールトン)
- ぶらんこ(ツェルニー)
- バイエル40~50番ぐらい
- はにゅうの宿(ビショップ)
- かわいいあのこ(インドネシア民謡)
- 旅愁(オードウェイ)
- 故郷の人々(フォスター)
- バロック・ホーダウン(ジャクエス&キングスレイ)
- ともしび(ロシア民謡)
- 愛のロマンス(スペイン民謡)
- 黒い瞳(ロシア民謡)
- 五月に(ベール)
- ケンタッキーの我が家(フォスター)
- バイエル50~60番ぐらい
- 荒野のはてに(讃美歌)
- おめでとうクリスマス(イギリス民謡)
- 峠の我が家(アメリカ民謡)
- マイ・ボニー(イギリス民謡)
- アメイジング・グレイス(アメリカ民謡)
- スカロボー・フェア(サイモン&ガーファンクル)
- クラリネットこわしちゃった(フランス民謡)
- レディース・ブルース(橋本晃一)
- 太陽がいっぱい(ロータ)
- エーデルワイス(ロジャース)
- バイエル60~70番ぐらい
- ともだちの歌(ノビコフ)
- ロッホ・ローモンド(スコットランド民謡)
- ピアノ・オン・ザ・ロック(橋本晃一)
- ミッキーマウス・マーチ(ドット)
- 不思議の国のアリス(フェイン)
- 右から2番目の星(ピーターパンより)(フェイン)
- シェルブールの雨傘(ルグラン)
- サバの女王(ローレン)
- 蒼いノクターン(モーリア)
- いつか王子様が(白雪姫より)(チャーチル)
全44曲
どうでしょう。知っている曲が多いのではないでしょうか。私も、知らない曲が少しありますがほとんどが知っている曲。
曲名を見ると、子どもより大人向けのような気がしますね。
難易度は?
難易度については、「はじめに」に以下のように記されています。
第1集は〔バイエル前半ぐらい〕のため、ハ長調とイ短調という調号のない曲ばかりで、楽しいホームソングの他に、ビデオなどでおなじみの映画音楽や、ポール・モーリアなどのイージー・リスニング曲が弾けます。
引用:『バイエル併用ポピュラー・ピアノ曲集』「はじめに」より
すべての曲に調号はありません。
でも、臨時記号の付いている曲はあります。
- ローレライ
- バロック・ホーダウン
- ともしび
- 愛のロマンス
- 黒い瞳
- ケンタッキーの我が家
- 荒野のはてに
- おめでとうクリスマス
- 峠の我が家
- マイ・ボニー
- スカロボー・フェア
- クラリネットこわしちゃった
- レディース・ブルース
- 太陽がいっぱい
- エーデルワイス
- ともだちの歌
- ピアノ・オン・ザ・ロック
- ミッキーマウス・マーチ
- 不思議の国のアリス
- 右から2番目の星
- シェルブールの雨傘
- サバの女王
- 蒼いノクターン
- いつか王子さまが
全部で24曲。って半分じゃん!
有名な曲ばかりなだけあって、そう単純ではないということですね。
すべての曲が両手奏
この曲集は、1番はじめの「月の光に」からすべて両手奏です。
難易度はバイエル20番~になっていますが、バイエル20番はどのくらいなのかというと・・
- 音域は左右とも1オクターブ離れたドレミファソ(左手が中央ドの位置で、左右ともにト音記号)
- 右メロディー左伴奏
- 左の伴奏は四分音符で動く
という状況ですね。
使われている音符は、全、4分、2分、付点2分の4つですが、20番以降左右ともに4つの音符が混じって使われる楽譜になっていきます。
『曲集』を見てみると、4曲目「ロンドン橋」の後半の左伴奏が4分音符で動く形になりますが、それまでは2分音符や全音符になっています。
以降、10番ごとにどのくらいの難しさか書いてみます。
バイエル30~40番ぐらい
特徴としては次のようなことです。
- 8分音符が加わる
- 伴奏に和音が加わる(2和音+単音→3和音)
- 臨時記号が加わる
バイエルでは44番から8分音符が加わりますが、『曲集』では少し早く、この「30~40番」の中の9番「トム・ドゥーリ―」からメロディーに8分音符が出てきます。
伴奏に8分音符が出てくるのは14番「ぶらんこ」からです。「30~40番」というくくりの最後の曲ですね。
伴奏に和音が出てくるのは8番「赤い河の谷間」からです。13番「こげよマイケル」で3和音が出てきます。
臨時記号初登場は11番「ローレライ」ですね。1ヵ所だけです。
バイエル40~50番ぐらい
こちらの特徴は、以下のような状況です。
- ヘ音記号の登場
- 伴奏に和音8分音符が加わる
- リピート記号が加わり曲が長くなる
- メロディーに和音が加わる
18番「故郷の人々」で初めてヘ音記号が出てきます。それまでは両手ともト音記号です。
その後は、ヘ音記号があったりト音記号のみだったりといろいろですね。
バイエルでは、50番の後にヘ音記号の説明があり、51番以降に順次ヘ音記号の楽譜が出てきます。
バイエルで和音が出てくるのは67番からですが、この曲集では8番「赤い河の谷間」で2分音符の和音の伴奏がすでに登場し、16番「かわいいあのこ」で8分音符の伴奏で和音が使われています。
そして、メロディーにも和音が登場するのは19番「バロック・ホーダウン」です。
その後、メロディーの和音はしばらく出てきませんが、伴奏の和音はこの章だけで全部で5曲ありますね。
この章からリピート記号が登場し、曲が長くなります。1カッコ2カッコやD.C.も出てきます。
バイエル50~60番ぐらい
こちらの特徴は以下のような感じです。
- 伴奏が複雑に
- メロディーも複雑に
- 臨時記号が増える
一つは伴奏が複雑になってくることでしょうか。4分音符だけとか8分音符だけといった感じからいろいろな音符が混じりリズムが出てきます。
メロデイーも複雑になってきて、29番「アメージング・グレース」では3連符が、31番「クラリネットこわしちゃった」では8分+16分のタッカのリズムが出てきます。
臨時記号も増え、1曲に何か所も出てくるようになります。
バイエル60~70番ぐらい
最後になるこの章では、次のような特徴があるかと思います。
- 1曲の中の音域が広い
- メロデイー伴奏ともさらに複雑に
これまでよりも音域が広いという印象があります。メロディー伴奏とも動きが大きいということですね。
一気に1オクターブ飛ぶこともわりとしょっちゅうだったりします。
1曲の中で使われる音符が増え、より複雑になっています。
後ろに行けば行くほど、より曲らしい曲になっているといえるかもしれません。
バイエル〇番は目安
こうしてみてくると、出てくる事柄がバイエルの順番に沿っていないものも多くあります。
”バイエル〇番”はあくまでも目安。40番までしか進んでいないから「バイエル50~60番ぐらい」に含まれる曲は弾けない、ということはないと思います。
第1巻は明らかに後ろへ行くほど難易度が上がっているので、ほぼ順番通りに進めていった方がよいとは思いますが。
楽譜はこんな感じ
実際の楽譜の様子はこんな感じです。
はじめのページ⇩
最後のページ⇩
最後の曲はかなり難しくなっているのがわかるでしょうか。
1ページの段数も、4段だったものが5段になっています。
でも、楽譜は大きめです。次の紹介する第2巻の方が小さいですね。
演奏動画あります
この第1巻の中から10曲を選んで弾いてみました。
どんな曲か、どんなアレンジか、どんな雰囲気か・・
参考にしていただければと思います。

楽譜ネットでもどうぞ。
出版元であるドレミ楽譜出版社もどうぞ。
第2巻について
それでは、2巻に入ります。
収録曲は?
まずは、入っている曲についてです。
こちらも70番から終わりまで10番ずつに区切られています。
- バイエル70~80番ぐらい
- 愛のよろこび(マルティーニ)
- 小さな木の実(ビゼー)
- さんぽ(となりのトトロより)(久石譲)
- 君をのせて(天空の城ラピュタより)(久石譲)
- オオカミなんかこわくない(チャーチル)
- 小さな世界(シャーマン兄弟)
- くまのぷーさん(シャーマン兄弟)
- ロミオとジュリエット(ロータ)
- バイエル80~90番ぐらい
- フニクリ・フニクラ(デンツァ)
- アニー・ローリー(スコット)
- ワルツィング・マチルダ(オーストラリア民謡)
- さらばジャマイカ(西インド諸島民謡)
- アロハ・オエ(リリウオカラニ)
- モルダウの流れ(スメタナ)
- 遠い日々(風の谷のナウシカより)(久石譲)
- 風の丘(魔女の宅急便より)(久石譲)
- 愛の夢 第3番(リスト)
- バイエル90~100番ぐらい
- アルハンブラの思い出(タルレガ)
- さらばナポリ(コットラウ)
- 愛のプレリュード(グノー)
- サウンド・オブ・ミュージック(ロジャーズ)
- ル・ローヌ(服部克久)
- 空をみあげて(黒人霊歌)
- ショパンのノクターン(ショパン)
- いつか夢で(眠れる森の美女より)(フェイン&ローレンス)
- バイエル終わりぐらい
- 星のセレナーデ(セヌヴィル)
- 私のお父さん(プッチーニ)
- 帰れソレントへ(クルティス)
- 星に願いを(ハーライン)
- ムーン・リバー(マンシーニ)
- エンターティナー(ジョプリン)
- アメリカン・パトロール(ミーチャム)
- ウキ・ウキ・ブギ・ウギ(橋本晃一)
全33曲
こちらも有名な曲ばかり。私もほとんど知っています。題名だけでは「?」という曲はありますが。
難易度は?
バイエルは、すべて終えるとブルグミュラーへ進むのが一般的ですね。
なので、こちらの曲集も、終わりの方はほぼブルグミュラー程度の難しさといえるかと思います。
バイエル70番~がこの2巻になりますが、バイエル70番以降の特徴は調号が出てくることです。
調号なしの長短調(ハ長とイ短)、そして、♯4つまでと♭2つまでの長調がでてきますね。
そうしたことからか、この第2巻も調号が出てくるようになります。
とはいっても、♯、♭ともに1つまでで、圧倒的に多いのはハ長調ですね。
数えてみました。
- ♯1つ(ト長調)・・・6曲
- ♯1つ(ホ短調)・・・2曲
- ♭1つ(ヘ長調)・・・5曲
- ♭1つ(ニ短調)・・・なし
- 調号なし(ハ長調)・・・14曲
- 調号なし(イ短調)・・・4曲
- イ短→イ長(♯3つ)に転調・・1曲
- ハ長→ハ短(♭3つ)に転調・・・1曲
調号なしから同主調で転調して一気に調号3つになる、という曲が2曲ありますね。
1曲が長い
もう一つの特徴としては、第1巻と比べて1曲が長いということでしょうか。
ほとんどの曲が見開き2ページになり、さらにリピートする曲もあります。
1ページに収められている曲も8曲ありますが、ほとんどがリピートするようになっていますね。
難易度の差はあまりない
第2巻になると、終わりへ行くほど難しくなっているとは思いますが、始めの方の曲と終わりの方の曲の難易度はそれほどないように思います。
バイエルの70番以降のむずかしさ、ということになっていますが、バイエルは106番まででで、主な特徴は
- 調号
- 16分音符が多い
- だんだん曲が長くなる
といったところかなと思います。
『曲集』でも調号は1曲目から出てきますし、曲もはじめから長めです。ただ、16分音符の頻度は全体的に少ないという印象ですね。
若干の難易度の差はあるにしても、バイエル80番過ぎくらいまで進んでいればどの曲も弾くことはできるのではないかと思います。
楽譜はこんな感じ
楽譜はこんな感じです。第1巻よりは少し小さくなりますね。
始めの方⇩
終わりの方⇩
第1巻よりは、5線の幅が狭くなり音符の玉の大きさも小さくなっています。
1ページの段数は、4段か5段で、これは変わりません。
演奏動画あります
この第2巻の中から8曲を選んで弾いてみました。
ぜひ参考にしてください。

楽譜ネットでもどうぞ。
出版元であるドレミ楽譜出版社もどうぞ。
おとなの方のレパートリー集の1冊として
大人のピアノ初心者用の楽譜は、まだまだ少ないのが現状のような気がします。
そんな中、この『バイエル併用 ポピュラー・ピアノ曲集』は、子どもにも使ってもらえるように考えられているためか、バイエルの難易度で2冊に分かれ、様々な有名曲が入っています。
(はじめから「おとな向け」となっているものは、1冊でブルグミュラー程度まで含んでいるものが多いように思います。)
第1巻は始めから順番に、第2巻は好きな曲を選んで・・・知っている曲を演奏する楽しみを感じられる曲集ではないかと思います。
また、「子どもから大人まで」がコンセプトのこの『曲集』、1冊の中から家族で弾きあう、という楽しみ方もできるかもしれません。
レッスンでの副教材から発表会の選曲、自分や家族で楽しむため等、いろいろなシーンで使える曲集ではないでしょうか
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