ピアノでスタッカート意味と弾き方 ホントの意味は「跳ねる」じゃないよ! 

ピアノの弾き方・練習法

スタッカート。とってもよく出てくる音楽記号ですよね。

でも、結構難しい・・。

音が出たり出なかったり、すご~く短かったり・・

不安定な頼りない音になってしまうことがよくあるように思います。

じゃあどうすればいいの?

まずは、スタッカートの意味をきちんと確認し、しっかりと音を出すことから始めなければいけません。

ということで、スタッカートの基本的な弾き方について、まとめてみました。

参考文献として『シャンドールピアノ教本』、『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(共に春秋社)を使用してまとめています。

「スタッカート」とは

まずは、スタッカートの意味を確認することから始めます。

「新音楽辞典 (楽語)」(音楽之友社)には、以下のように書かれています。

演奏記号の一種で、音を明瞭に分離して弾くことを示す。音符上の・、∨、❙であらわされる。その程度により、メッゾ・スタッカートやスタッカティッシモなどに分けられる。

『新音楽辞典(楽語)』「スタッカート」より

ちなみに、「早引き音楽記号・用語事典」(ナツメ社)には・・

この記号が付けられた音符を、記された長さ(音価)よりも短く切って演奏すること。

『早引き音楽記号・用語事典』「スタッカート」より

とあり、「スタッカティッシモ」と「メッゾ・スタッカート」については、それぞれ別に書かれています。

要するにスタッカートとは「短く切って弾くこと」ですね。

「新音楽辞典」は詳しいけど、「早引き音楽記号・用語事典」の方が分かりやすい。

「スタッカート」の意味の誤解

「スタッカート=短く切る」です。

でも、「跳ねる」だと思っている人は多いのではないかと思います。

実際、軽やかな演奏が求められるときにスタッカートが付けられていますよね。

必ずしも「軽やか=跳ねる」でもないんだけど・・

それが、スタッカートの意味の誤解につながっているように思います。

そして、弾き方にも影響を与えている。

スタッカートのイメージは「跳ねる」かもしれない。でも、意味は「短く切る」なんです。

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スタッカートの弾き方あるある

自分の教室のレッスンで子どもたちが弾いているのを見て感じているのが、はじめにも書いた「音が出たり出なかったりする不安定な」スタッカート。

確かに「短く切って」います。でも、なんだか音に覇気がない、頼りない・・。フワフワした感じです。

どうしてこうなってしまうのか・・。

私が思うに、次の3つが原因かなと思います。

  • 「跳ねる」の意識になっている
  • 「短く」にとらわれ過ぎて、上へ上への意識が強い
  • 鍵盤の重さに指が跳ね返されている

「跳ねる」の意識になっている

1つは、やはりスタッカートの意味を「跳ねる」だと思っているということです。

なので、カエルがピョンピョン飛ぶように、指をピョンピョンさせてしまうんですね。

こういう場合は、とにかくスタッカートの本来の意味を確認することから始めます。

つまり「短く切る」ということです。

「跳ねる」じゃないよ!

上へ上への意識が強い

もう1つは、音を短く切るために指を上へあげることばかり気にしてしまうということです。

スタッカートの意味は分かっている。でも、そのために音が出るか出ないかの内に指を上げてしまう。

そうすると、安定感のない音になってしまいます。

鍵盤に指が跳ね返される

3つ目は、鍵盤の重さに指が負けている、ということです。

ピアノの鍵盤は、押すと下がり、離すと元に戻ります。

ということは、押す(音を出す)ためにはある程度の力がいるということです。

その力が弱いと、鍵盤が元の位置に戻ろうとする力に指が跳ね上げられてしまいます。

ましてや、「音を短く切る」スタッカートを弾いているので、鍵盤の跳ね上げる力を助長してしまうような弾き方になりがちですよね。

レッスン室のピアノより軽い鍵盤(鍵盤軽めの電子ピアノとか)で練習している場合に起こりやすいように思います。

安定感のあるスタッカートを弾くために

音が出てるんだか出ていないんだか・・という不安定なスタッカートから、安定感のあるスタッカートにするために、まずやること。

それは、やっぱり「短く切る」という意識を持ってもらうこと。

ピョンピョン跳ねたり上へ上へではなく、とにかく音を切って弾いてもらうことから始めます。

音は長めで、次の音につなげないように弾く、ということです。

そして、少しずつ音を短くしていきます。

とにかく音がきちんと聴こえなければ意味がないので、スタッカートを強調するのではなく「ちゃんと聴かせようよ!」ということですね。

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スタッカートの弾き方(「シャンドールピアノ教本」より)

基本的なスタッカートの詳しい弾き方については、『シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現』からまとめてみます。

『シャンドールピアノ教本』には、「第2部 五つの基本動作」の中に「第7章 スタッカート」として、一項目設けてあります。

スタッカートは「投げ」の動作

ここには、「スタッカートは基本的に投げの動作である」(P.136)とあります。

ピアノの鍵盤は垂直に動く。なので、垂直方向に指を下ろす必要があります。

そのために、上腕を使って指先を投げるように弾かなければいけないということです。

指先が垂直の直線を描くようにする唯一の方法は、上腕を使うことである。上腕の助けがあって初めて、身体のもっとも強い筋肉(肩、背中、胸、腹、横隔膜)が投げに参加できるのだ。

『シャンドールピアノ教本』p.137「手・前腕・上腕を稼働させた指先の理想的な投げ」より

つまり我々は、これらのより強い筋肉を稼働させて他の筋肉と強調させ、胴体そのものから投げが生じるようにするコツを学ばなければならない。手首だけで投げようとする球技の選手など、一人もいないだろう。

(中略)

球技と同じくピアノ演奏においても、同様のコーディネートされた負荷のかからないやり方でもって、指が鍵盤に投げられる。手は前腕によって、前腕は上腕によって、上腕は胴体の強い筋肉のよって投げられるのである。

『シャンドールピアノ教本』p.137~139「コーディネートが不可欠である」より

スタッカートは「指・手・前腕・上腕」の4つをうまく連携させて行う、ということですね。

常にこの4つの部分を意識する、ということがいたるところで強調されています。

スタッカートを弾くとき、時に手首を上下させて弾く場合がありますが、この”手首スタッカート”は「間違っている」と本書では述べられています。

理由はふたつ。

  • 指先が垂直に下りない(弧を描いてしまう)
  • 比較的弱い前腕の筋肉だけを使うことになるので、手首を痛めやすい

ということです。

「腕全体を使って指を投げる」という動作をすることで、鍵盤の重さに指が負けてしまうという状況が改善されるように思います。

指、あるいは手首だけを使ってスタッカートをするのではなく、もっと強い力を持つ部位(腕全体)の助けを借りて、しっかりと弾くということですね。

指を置く時間は短く

鍵盤の上に指のある時間はできるだけ短くすべきだと書かれています。

それは、すぐに次の動作へ移れるようにするためです。

スタッカートを演奏する際には、鍵盤上に指を置く時間は出来るだけ短くする。鍵盤の表面に指がある時間は、一秒の何分の一にも満たないだろう。指が鍵盤に触れた瞬間に、直ちに各部位(指、手、腕)を持ち上げ、次の投げに備えて元の場所へ戻すのである。手と指は、まるでボールをドリブルするように、もしくは鍵盤が沸騰しているかのように、瞬間的にバウンドして戻ってこなければならないのだ。

『シャンドールピアノ教本』p.141「鍵盤上に指を置く時間は最小限に」より

そして、そのために鍵盤からの押し上げる力を利用するよう書かれています。

使える助けはすべて活用すべきなのだから、鍵盤の底からのリバウンドも当然利用するようにしよう。大きな音で速く演奏する時、我々は鍵盤の底まで指を投げる。鍵盤は弾力のある材質でできているので、かなりのリバウンド反応があるだろう。勢いよく落とせば、相当に強い反応を感じられるはずだ。この反動作用は、もう一度手を投げるためにやらなければならない次の仕事、すなわち腕をもう一度元の位置に戻す作業にとって、非常に役に立つ。

『シャンドールピアノ教本』p.142「鍵盤からのリバウンド」より

音を短く切るために「上へ上へ」ではなく、次の動作へ素早く移るためということですね。

その際、鍵盤から押し上げられる力に逆らわず、押し上げられるままに、といった感じでしょうか。

筋肉はまっすぐに

鍵盤にダイレクトに投げによるエネルギーを伝えるために、腕から指にかけてまっすぐにしておく必要がある、と述べられています。

水平/垂直/奥行方向の調節によって、指とそれを動かす筋肉がまっすぐになるようにするのである。このように指と筋肉を直線にすることで、上腕からの投げをはるかに直接的に受け止め、指を通じて投げを鍵盤にまっすぐに伝えることが可能である。

『シャンドールピアノ教本』p.143「調整動作ー指とそれを動かす筋肉をまっすぐにする」より

指(2~5指)を動かしているのは「浅指屈筋」と「深指屈筋」という二つの筋肉で、腕の中にあります。

「浅指屈筋」は腕の表面近くにあり、指を動かすと働いているのが見て分かりますし、ぐっと力を入れて握りこぶしを作ると固くなります。

その指を動かす筋肉と当の指をまっすぐに保った形が最も自然な状態であり、指を動かしやすいということですね。

「深指屈筋」は上腕の骨「尺骨」から指先にかけてつながっていて、腕の奥にあります。

この、小指側につながっている尺骨と小指がまっすぐになっている状態が、腕から手にかけての自然な形なんですね。

なので、それを保って投げを行うことが、最も力を発揮できるということです。

この事は、『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』P.92~100(第4章 腕と手をマッピングする「肘関節」)および、P.126~127(第5章筋肉をマッピングする「親指主導と尺側偏位」)に詳しく書かれています。

関連記事『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』を詳しく紹介しています。

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練習の仕方は?

練習の仕方として、以下のように書かれてます。

スタッカートの練習を開始するにあたっては、すべての部位をしっかり意識しておくことが望ましい。最初は指をわずかに持ち上げて落とすことだけに集中されたい。その次に、手、前腕、上腕の順番で、それぞれをわずかに持ち上げて落とす練習をする。そして四つの部位全部をシンクロナイズさせてみる前に、二つないし三つの部位を組み合わせて練習してみる。

『シャンドールピアノ教本』p.147「まず個々の部位を、その後で組み合わせを練習する」より

スタッカートを弾くために使う「指・手・前腕・上腕」の4つをしっかりと意識するために、ひとつずつ使ってみるということですね。

スタッカートは難しい・・でも大事!

曲を弾くときスタッカートは本当によく出てきます。種類もいろいろあるし。

よく出てくるわりに、きちん弾くのは結構難しい。

今回紹介した『シャンドールピアノ教本』では、スタッカートのみで一章設けて詳しく解説されています。

それだけ重要な奏法だということですよね。

今回いろいろと調べてみて、レッスンでどう教えるかということとともに、自分はどう弾いているかもじっくり見直してみなくては、と思いました。

(公開日2017年6月8日 最終更新日2024年2月13日)

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