さぁ、ピアノを始めてみよう!
となった時、まずは楽譜を読んで弾く、ということからスタートさせますよね。
「憧れの曲がある!」
といった、既成の曲を弾けるようになりたいなら、楽譜が読めれば弾けます。
でも、音楽には「調」という、「知らなくても弾けるけど知った方がいい」理論があります。
でもこれなかなかの難物で、すべてきちんと勉強しようと思うと少々大変。
ということで、ピアノ初心者はどこまで知っておけばいいのか。
最低限ここまでの知識があれば、とりあえずはいいんじゃないか。
というところをまとめてみようと思います。
あくまでも私の見解ですのであしからず。
「調」って何?
全くの初心者さんはこのことからだと思うので、まずは基本的なことを。
辞書からきちんとした説明を引用します。
調性
広義には楽曲における特定の音高の支配性を指す。つまり音楽作品においてあるひとつの音(主音)が旋律、和声の中心として働き、他の音がこれに従属的にかかわっている場合、この音楽は調性をもつという。狭義には長短2種の音階に基づく機能和声による調性を意味する。
『新音楽辞典 楽語』(音楽之友社)より
「調性」の項目にまず書かれていたのがこの文章です。
実際にはさらに詳しい文章が続いています。
初心者さんは、狭義の意味「長短2種の音階に基づく機能和声による調性」について知っておけばよいと思います。
「長短2種」とは、つまりハ長調とかイ短調とかいうものですね。
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ここまでは知っておきたい①「長調と短調」
音には「ドレミファソラシド」という音階がある。
これは知っているかと思います。
それには「長調」と「短調」という2つがあるわけですね。
「長調」とは?
「ドレミファソラシド」は「長調の音階」(長音階)ということになります。
長音階は、「全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音」という並び方をします。
「『全、全、半』という並びをした4つの音グループ2つを全音の関係でつなげたもの」
ということです。
この並び方をすれば、どの音からも長音階を作ることができます。
「短調」とは?
長音階の6番目の音から長音階と同じ音を順に弾いていくと、「短調の音階」(短音階)になります。
ハ長調の場合、6番目の音は「ラ」。
ラから順番に「ラシドレミファソラ」となるのが「イ短調」の音階です。
ハ長調とイ短調は、はじまりの音(主音)が違うだけで同じ音でできています。
これを「並行調」といいます。
なので、どんな音から始まる音階にも「長調」と「短調」はセットになっているということですね。
まとめ
「長音階」の音の並びは「全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音」
「短音階」は、長音階の6番目の音から長音階と同じ音が並ぶ
どの音から始まる音階にも「長音階」と「短音階」がある
ハ長調の「ハ」って何?
さらりと「ハ長調」とか「イ短調」とか書いてきましたが、「ハ」「イ」って何でしょう?
これは、日本語音名です。
イタリア語 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
日本語 | ハ | 二 | ホ | へ | ト | イ | ロ |
英語 | C | D | E | F | G | A | B |
これは覚えてしまいましょう!
英語音名も覚えてしまえれば、なおいいですね。
ちなみに、英語でハ長調は「C major(シーメジャー)」イ短調は「A minor(エーマイナー)」。
ここまでは知っておきたい②「調号」
各調を表すのに「調号」を使います。
楽譜の左端に書かれる♯や♭のことですね。
上にまとめたように、音階は音が規則的に並んでいます。
なので、どの音階はどの調号になるのかは決まっています。
それを表にしたのがこちらです。
主音(音階のはじめの音)が5つ上の音になるたびに調号の♯がひとつづつ増えます。
そして、♭へ移りひとつずつ減っていますね。
これを「五度圏」といいます。
例)
ハ長調の主音は「ド」。
ドレミファソと5つ上がって「ソ」が主音となる音階は「ト長調」。
すると、調号は♯がファに1つ付く。「ソラシドレミファ♯ソ」となる。
ハ長調の主音ドから5度ずつ主音を上げていって再びドに戻るので、円にして表すことが多いです。
なので、5度圏は英語で「circle of fifths」といいます。
調号の並び
調号の並び方は決まっています。
♯:ファ ド ソ レ ラ ミ シ
♭:シ ミ ラ レ ソ ド ファ
これは覚えてしまった方がいいです。
調号から調を読み取る
音階の音の並びは規則正しく、調号の並び方も決まっている。
ということは、調号を見れば何調なのかが分かる、ということになります。
例えば、「♯が3つだからイ長調か嬰ヘ短調」と分かるということですね。
♯の場合
♯の調号を見て何調かを読み取る方法はこちらです。
「調号の一番右端の♯の位置の1つ上の音が主音となる」
例)
♯3つの場合一番右端はソ
その1つ上のラが主音→イ長調
イ長調の音階の6番目の音は「ファ♯」→嬰へ短調(「嬰」は♯のこと)
♭の場合
♭の調号を見て何調かを読み取る方法はこちらです。
「調号の一番右から1つ前の♭の位置が主音となる」
例)
♭3つの場合右からひとつ前はミ→変ホ長調(「変」は♭のこと)
変ホ長調の音階の6番目の音は「ド」→ハ短調
*調号から調を読み取る方法は他にもあります。
まとめ
楽譜の調号を見て、この曲が何調かを読み取れるようになろう!
そのために
調号の並び方を覚える
調号から調を読み取る方法を覚える
長調か短調かを見分けるには?
1つの調号に対して長音階と短音階の2つ存在する、と上記で説明しました。
では、この楽曲が長調なのか短調なのかを見極めるには、どうすればいいのでしょうか?
それは、曲の最後の音を確認すると分かります。
曲の最後はたいてい主音で終わります。
主音はそれだけその調にとって大事な音だということですね。
なので、例えば「調号が♯2つ」の場合は・・
調号を見ると♯が2つなので、二長調かロ短調。
二長調の主音は「レ」。ロ短調の主音は「シ」。
曲の最後がレであれば長調の曲(二長調)、シであれば短調の曲(ロ短調)。
ただし、曲によっては主音で終わっていない場合もままあります。
その場合は、最後の音を主音にしても違和感がないか、で調べます。
または、最後の部分のメロディーに主要三和音のⅠを合わせて違和感がないか、でも調べられます。
*主要三和音は、次の項目で説明します。
ここまでは知っておきたい③「主要三和音」
「主要三和音」とは、「ダイアトニック・コード」の1番はじめ、4番目、5番目のコード(和音)のことです。
「ダイアトニック・コード」とは、その調の構成音のみで和音を作ったものです。
その調の音階の1番はじめの音(主音)、4番目の音(下属音)、5番目の音(属音)から作った三和音が「主要三和音」です。
⇩こちらがハ長調のダイアトニック・コード。囲まれているのが「主要三和音」ですね。
和音記号「Ⅰ」「Ⅳ」「Ⅴ」も覚えるとよいですね。
この3つの和音を使うだけで伴奏ができてしまったりします。
その調の雰囲気を決定づけるような重要な和音ということですね。
サラッと弾けるようにしておくことをお勧めします。
まとめ
主要三和音とは、音階の1番目、4番目、5番目の音からできている大事な和音。
短調の主要三和音
短調の場合も、主要三和音の仕組みは同じです。
ですが、長調よりも少し複雑です。
実は、短調の音階は3種類あります。
・自然的短音階(調号の通りの音)
・和声的短音階(音階の7番目の音が半音上がる)
・旋律的短音階(音階の6番目と7番目の音が半音上がるが、下ってくるときには♮になる)
ダイアトニック・コードも3種類になると考えられますが、「和声的短音階」の音を使うことが多くあります。
⇩「主要三和音」を赤で囲っています。
5番目の音から作る三和音の真ん中の音は、音階の7番目の半音上がる音になるわけです。
ここまでは知っておきたい④「音階、主要三和音を弾く」
音階の仕組みを理解するだけではなく、弾けるようにもなりましょう。
練習している曲の調号を見て調を確かめたら、その調の音階と主要三和音を弾いてみます。
弾いてから曲の練習に入る、という順番で行うとよいですね。
ここに、各音階と主要三和音を楽譜で示すことはとっても難しいので、おすすめの教本を紹介します。
名前の通り、音階に特化したテキストです。
シンプルな作りで、ほとんど音階(スケール)とカデンツ(主要三和音の和音進行)の楽譜しか載っていません。
この調は何だっけ?という時にサッと調べるような使い方もできるかも。
初心者さんにも使いやすいのではないかと思います。
関連記事→こちらでこのテキストの紹介をしています。
全部の調の音階を弾けなければいけないの?
調は長調、短調あわせて、全部で24あります。
全24調を弾けるに越したことはありませんが、私は、弾けなくてもいいと思っています。
初心者さんは特に、全部の調を弾けることにこだわらなくてよいと。
まずは仕組みをきちんと覚え、自分が練習している曲の調を弾くこと。
そして、最低♯3つまで、♭3つまでの調は、楽譜でいちいち確かめなくても弾けるようになることを目指すとよいと思います。
よく出てくるのが、♯♭それぞれ3つくらいまでの曲です。
なので、そのくらいはサラッと弾けるとよいですね。
まとめ
長音階と短音階、各調の主要三和音について仕組みを理解する。
最低、♯3つ、♭3つまでの長調、短調は音階と主要三和音がサラッと弾ける。
さらなる知識は追々・・
ピアノ初心者でもここまでは知っておきたい「調」の知識についてまとめてきました。
あくまでも私の考えということですが。
これだけでも知っておけば、ただただ楽譜に書かれている音符1つ1つを追って楽譜通りに弾く、ということから少し脱却できるのではと考えています。
ここまでの知識があれば、楽譜を読むことが少し楽になります。
その曲に使われている音がおのずと分かるからです。
そして、メロディーの変化、曲調の変化にも気づきやすくなります。
それは、ただひたすら楽譜を読むだけよりも少し深く曲を知ることになり、演奏の表現の幅を広げることに結び付きます。
でも、「調」の世界はもっともっと奥の深いもの。
さらなる内容は、曲の難易度が上がることに合わせて、教本など片手に少しずつ勉強を進めていけばよいと思います。
(公開日:2023年11月2日 最終更新日:2024年6月18日)
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