「しってるきょくでどんどんひける」という副題がついている、この『ピアノひけるよ!ジュニア』。
私の教室でも人気のあるテキストで、よ~く使っています。
「知っている曲を弾ける」という喜びは大きいんだなあ、と感じます。
このテキストにしたとたん、お家での練習量が増えた!という子も。
今回は、ピアノ導入教材であるこのテキストの”ジュニア”となっている1,2,3巻について、詳しく紹介します。
”知ってる曲で・・”って実際のところどんな感じなのか。
”知っている曲”だからこその良さ、そして、注意が必要ということもあります。
テキスト選びの参考に、ぜひどうぞ。
⇩こちらは1巻です。
『ピアノひけるよ!』シリーズについて
まずは、基本情報から。
ピアノの導入教材である『ピアノひけるよ!』ですが、シリーズで様々な教材が出版されています。
メイン教材は、
- 『ピアノひけるよ!ジュニア』1、2,3
- 『ピアノひけるよ!シニア』1,2,3
「ジュニア」終了後「シニア」へ進むということですね。
本書の『ピアノひけるよ!』シリーズの紹介ページに、「『シニア3』終了で、ブルグミュラー程度の力がついている」と説明されています。
その他、
- テクニック教本
- レパートリー(つまり曲集)
- 楽典のワークブック
- 変奏曲集
があります。
著者は橋本晃一さん。日本を代表するピアノ教育家、編・作曲家ですね。
教本や曲集はたくさん出版されています。
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『ピアノひけるよ!ジュニア1』について
それでは、「1」から順に中身を見ていきたいと思います。
収録曲は?
「知っている曲を弾ける」というのが最大のポイント。
まずは、どんな曲が入っているのか紹介します。
- チューリップ(井上武士)
- いちばんぼし(わらべうた)
- つきのひかりに(フランス民謡)
- げんこつやまのたぬきさん(わらべうた)
- あるぷすいちまんじゃく(アメリカ民謡)
- きらきらぼし(フランス民謡)
- ゆかいなまきば(アメリカ民謡)
- ビッグ・ベンのかね(外国曲)
- ばけつのあな(アメリカ民謡)
- ふしぎなポケット(渡辺茂)
- こぎつね(ドイツ民謡)
- とんぼのめがね(平井康三郎)
- あかいかわのたにま(アメリカ民謡)
全13曲
よ~く知られた曲ばかりですね。私は全部知っています。
でも、子どもたちは知らない曲もちらほら・・。
「ばけつのあな」とか「あかいかわのたにま」とか。
「ゆかいなまきば」も知らない子が多いですね。
「とんぼのめがね」を知らない子も何人かいて、もうビックリです!
1曲目の前に・・
1曲目に入る前に、説明のページが5ページあります。
- ゆびのばんごうをおぼえよう
- けんばんをみてみよう
- くろいけんばんをひこう(見開き2ページ)
- たかいおととひくいおと
まず指番号を学んだら、黒鍵に注目していきます。
始めに黒鍵を指番号2,3,4で弾いていくわけですね。
4分音符と2分音符のリズム譜が載っていて、その通りに弾きます。
ここで初めて「音符」に触れることになります。
2曲目から五線の楽譜が登場します。
音域は中央ドから上下へ
音域は、中央ドから上下へ広がる形です。
この『ピアノひけるよ!ジュニア1』で、上下5音まで広がります。右ドレミファソ、左ドシラソファですね。
上下1音ずつ、左右同時に広がっていきます。
中央ドだけの曲は無く、ドレ、ドシ、の2音から始まります。
1音広がるごとに8小節の「練習曲」があり、片手ずつ弾いていきます。
そして、それぞれ数曲ずつ、上に挙げた曲を両手メロディー受け渡しで弾くようになっています。
それぞれ、鍵盤と楽譜を対応させた図が載っています。
楽譜は大譜表。両手で弾くので。
拍子やリズムの進み方 音楽記号について
拍子はほとんどが4/4拍子。2曲のみ3/4拍子です。
使われている音符は、全、4分、2分、付点2分。
1番はじめに4分音符と2分音符が同時に出てきます。
リズムは単純。4分音符が主ですね。
例えば「げんこつやまのたぬきさん」は、ふつう付点のリズムで歌いますね。でも、楽譜は4分音符になっています。
音楽記号で出てくるのはタイとリピート記号です。
スラーやスタッカートなどは出てきません。
また、最後はアウフタクトの曲です。アウフタクトについての説明は、特にありません。
音飛びの状況など
「1」は、すべてメロディーを左右で受け渡していく形になっています。
『ピアノひけるよ』は「このテキストのために作られた曲」ではなく実際の曲を弾いていくのが大きな特徴。
なので、メロディーの動きはまあまあ大きいのではないかと思います。
上下3音まで広がった時点で3度の音飛びが出てきます。
上下4音(ドレミファ、ドシラソ)まで広がった際、左でシ⤵ソと指2,4を使う3度の移動が出てきます。
また、左でド⤵ソの4度の動きも出てきます。
上下5度(右ドレミファソ、左ドシラソファ)まで広がった際、右でミ⤵ド⤴ソ⤵ミという3度5度の連続が出てきます。
他の導入期教材と比べて、ちょっと複雑かなと思います。
楽譜はこんな感じ
実際の楽譜も見てみましょう。
五線の幅は14㎜。やはり、大きいですよね。後ろの方も同じです。
大譜表としての幅は約41㎜です。
イラストはすべてカラー。かわいらしくて、私はけっこう好きです。
楽譜は多くて3段。玉は大きく、見やすいですね。
関連記事→『ピアノひけるよ!ジュニア1』を実際にレッスンで使った際の状況をまとめました。
『ピアノひけるよ!ジュニア2』について
次は「2」についてです。
まずは収録曲を見てみましょう。
収録曲は?
「2」に入っている曲は以下の通りです。
- 10にんのインディアン(アメリカ民謡)
- 1しゅうかん(ロシア民謡)
- ロンドンばし(イギリス民謡)
- かたつむり(文部省唱歌)
- おしょうがつ(滝廉太郎)
- まめまき(絵本唱歌)
- こいのぼり(無名著作物)
- たなばたさま(下総皖一)
- かっこう(ドイツ民謡)
- ぶんぶんぶん(ボヘミア民謡)
- ちょうちょう(スペイン民謡)
- あわてんぼうのうた(外国曲)
- さよなら(外国曲)
- こいぬのマーチ(外国曲)
- よろこびのうた(ベートーベン)
- ジングル・ベル(ピアポント)
- せいじゃのこうしん(アメリカ民謡)
全17曲
こちらもよく知られているものばかり。
でも、やっぱりいくつか子どもには馴染みのないものがありますね。
「あわてんぼうのうた」とか「せいじゃのこうしん」とか。
「10にんのインディアン」を知らないという子もいました。
音域はどうなる?
音域は、『ピアノひけるよ!ジュニア1』で中央ドから上下に5度(右ドレミファソ、左ドシラソファ)まで広がりました。
『ピアノひけるよ!ジュニア2』では、下は中央ドの1オクターブ下のドまで広がります。
左の手の位置が変わるわけですね。1の指(親指)をソに持ってきて5の指(小指)が下のドになるわけです。
両手奏が始まる
『ピアノひけるよ!ジュニア1』では、メロディーを左右で弾き継ぐ形でしたが、『ピアノひけるよ!ジュニア2』から両手奏が始まります。
上に書いたように音域が広がった以降ですね。
そのあと、両手ユニゾンの曲を2曲弾き、いよいよ右メロディー左伴奏の形が始まります。
左の伴奏は、
- すべて全音符
- 同じ音で4分音符を刻む
- 2音になってすべて全音符
- 2音で全、4分、2分
- 1小節内で2分音符で音が変わる(2音)
- 1小節内で4分音符で音が変わる(3音)
- 4分休符が加わる(3音)
という順で進んでいきます。
なお、右のメロディーはすべて5指固定で弾くことができます。
拍子やリズムの進み方 音楽記号について
拍子はほとんど4/4拍子ですが、3/4拍子が3曲、2/4拍子が2曲あります。
リズムに関しては、音符は8分音符、付点4分音符が加わり、タ~ンカ(付点4分+8分)のリズムが出てきます。
また、この『ピアノひけるよ!ジュニア2』から休符が登場します。全休符と2分休符です。
新しい音符、休符やリズムは前半で学び、後半は両手奏に集中する、という感じですね。
出てくる音楽記号は、スラーと「リピート記号まで戻るリピート」です。
新しく加わるのはこの2つ。2つとも両手奏に入ってからですね。
なお、アウフタクトの曲は2曲。こちらも、説明はありません。
楽譜はこんな感じ
楽譜の状況をまとめます。
五線の幅は12㎜。ちょっとだけ狭くなります。
大譜表としての幅は約37㎜~47㎜で、曲によって多少の違いがあります。でも、見た目ほとんど変わりません。
1ページの段数は最大3段で、これは変わりません。
『ピアノひけるよ!ジュニア2』のイラストは、フルカラーは始めの方だけで途中から2色刷りになります。
『ピアノひけるよ!ジュニア3』について
最後に『ピアノひけるよ!ジュニア3』を見ていきます。
収録曲は?
まずは、やはり曲の確認から。
- こいぬのマーチ(外国曲)
- あわてんぼうのうた(外国曲)
- メリーさんのひつじ(アメリカ民謡)
- よろこびのうた(ベートーベン)
- むすんでひらいて(ルソー)
- かえるのがっしょう(ドイツ民謡)
- チューリップ(井上武士)
- おもいで(ベイリー)
- こぎつね(外国曲)
- とんぼのめがね(平井康三郎)
- アマリリス(フランス民謡)
- てをたたきましょう(作曲者不明)
- むしのこえ(文部省唱歌)
- かねがなる(フランス民謡)
- すいかのめいさんち(アメリカ民謡)
- つきのひかりに(フランス民謡)
- おおきなふるどけい(ワーク)
- アビニョンのはしのうえで(フランス民謡)
- やまのおんがくか(ドイツ民謡)
- ばけつのあな(アメリカ民謡)
- ゆかいなまきば(アメリカ民謡)
- ぶんぶんぶん(ボヘミア民謡)
- 10にんのインディアン(アメリカ民謡)
- シューベルトのこもりうた(シューベルト)
- あかいかわのたにま
全25曲
曲数が増えてきました。『ピアノひけるよ!ジュニア』1や2に入っていた曲もありますね。
1や2よりも難しいアレンジになっています。
音域は?5指固定では弾けなくなる
音域は、『ピアノひけるよ!ジュニア2』で、左が中央ドから1オクターブ下のドまで広がりました。
『ピアノひけるよ!ジュニア3』では、右の音域が広がります。中央ドから1オクターブ上のドレミファソです。
右手をそのまま1オクターブ上へもっていく形ですね。
出てくるのは最後の方。最後の4曲でこの音域がでてきます。
なお、5曲目以降は5指固定では弾けなくなります。
順次、指変えや指くぐりなどが出てきたうえで、音域がさらに広がるという形になっています。
伴奏はさらに難しく
『ピアノひけるよ!ジュニア2』で両手奏が始まり、右メロディー左伴奏の形になりました。
『ピアノひけるよ!ジュニア3』では、さらに伴奏形が様々になっていきます。
- 常に4分音符で動く
- 4分+2分
- 4分+2分+8分
- 4分+2分+8分+付点2分
- スタッカート、スラー
- 休符が加わる
- 和音が加わる
- 和音スタッカート
- すべて和音
- すべて8分
以上のような順に進んできます。
伴奏の音の動きもだんだん複雑になります。
はじめは「ドソドソ」や「ドソシソ」といったものから、「ソファミ」など横へ動いたり、「ミソド」などと飛んだり、変化に富んでいきます。
また、和音になったり、スタッカートやスラーがついていたり、休符が混じってきたりします。
最後の曲の伴奏は、8分音符のアルベルティバスです。
拍子やリズムの進み方 音楽記号について
拍子は新しいものは出てきません。4/4拍子、3/4拍子、2/4拍子の3種類です。
2/4拍子が増えて10曲あります。3/4拍子は1曲のみ。
2/4拍子が増えたのは、8分音符が加わり書かれる音符が増えたからかな。
『ピアノひけるよ!ジュニア』1や2で4/4拍子だったものが2/4拍子で書かれていたりし、分かりやすくしているためかと思います。
使われている音符も『ピアノひけるよ!ジュニア2』と同じで8分音符まで。16分音符はまだ登場しません。
休符は、8分休符が加わります。
音楽記号に関しては、スタッカート、f、p、mf、mpが新しく出てきます。
また、後半になると速度用語がつきます。Allegretto、Allegro、Andanteの3種類ですね。
なお、アウフタクトの曲は4曲あります。やはり、説明はありません。
楽譜はこんな感じ
最後に楽譜も見てみましょう。
五線の幅は1㎝。さらに狭くなりました。
大譜表としての幅は35㎜~40㎜。曲によって違いますが、見た目はわかりません。
段数も最大3段です。曲が長くなってきた分、ほとんどが3段ですね。
イラストについてですが、『ピアノひけるよ!ジュニア3』は、はじめからブルー基調の2色刷りで、途中からモノクロになってしまいます。
『ピアノひけるよ!ジュニア』1,2,3表にまとめてみた
ズラ~~っと文章で書いても分かりにくいと思うので、ここで表にまとめてみます。
1 | 2 | 3 | |
---|---|---|---|
音域 | 中央ドから上下5音 | 中央ドから上5音 下1オクターブ | 中央ドから 上1オクターブ+5音 下1オクターブ |
拍子、リズム(音符、休符) | 4/4、3/4 全、4分、2分、付点2分 休符なし | 4/4、3/4、2/4 「1」+8分、付点4分 休符・・全、4分、2 | 「2」に同じ 休符・・「2」+8分 |
記号 | タイ、はじめに戻るリピート | 「1」+スラー、リピート間の繰り返し | 「2」+スタッカート、f、p、mf、mp、アレグレット、アレグロ、アンダンテ |
その他 | メロディー受け渡し | 両手奏の始まり | 指変え、指くぐりなど |
『ピアノひけるよ!ジュニア』まとめ 知っている曲が多い!でも・・・
自分の教室で子どもたち自身にテキストを選んでもらうと、この『ピアノひけるよ!』が選ばれることが多いです。
理由はやっぱり「知っている曲が入っているから」。
でも、知っている曲だということは、楽譜を見なかったり、リズムの理解が遅れたりすることにもつながります。
弾けてるから読めてるし分かっている、というわけではない、ということですね。
そこは注意しておかなければいけないな、と思います。
案外曲を知らなかったりすることもあるので、そこを狙ってじっくり教えたりすることも多いですね。
このテキストの印象としては・・
- 音域の広がりは比較的早い(1音ずつではなくて5指を移動させて一気に広げる)
- 拍子やリズムの進み方はゆっくり(3巻まできても、6/8拍子や16分音符は出てきません)
- メロデイーの動きはけっこう複雑(既成曲だから?)
こんな感じでしょうか。
調性についても『ピアノひけるよ!ジュニア3』まで一切触れられません。つまり、黒鍵は使わないということです。
(『ピアノひけるよ!シニア1』から順次学んでいくことになります)
知ってる曲で練習できるのは、こちらが思う以上に子どもたちにとってはうれしいこと。
ここはとっても大事なポイント。
知っている曲だからこその難しさもありますが、これからも、よく使っていくことになると思います。
(公開日:2018年1月27日 最終更新日:2024年10月11日)
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