今回取り上げた『ピアノ小曲集-バイエル併用-1』。私、子どものころレッスンで使っていました。
なんと今から40年ほど前!古くからある楽譜です。
表紙のデザインが変わっていなくて、たまたま見かけてビックリ!
「キャー懐かし~~」と思わず買ってしまいました。
長く、長~く、ピアノの先生に支持されてきた楽譜ということですね。
その理由は、安心して生徒に勧められる定番曲満載、というところでしょうか。
詳しく中身をご紹介します。
『ピアノ小曲集-バイエル併用-』の基本情報
まずは、この『ピアノ小曲集-バイエル併用-』とは?、ということについてです。
発売から50年!ロングセラー楽譜です
40年前に私自身が使っていた、ということからも明らかですが、この楽譜、とても古くからあるものです。
出版元のシンコーミュージックのサイトによると、発売日が「1972年1月31日」となっています。
今年2022年からさかのぼること50年前ですね。
参考→出版元シンコーミュージックの楽譜紹介ページはこちらです。
楽譜に付いてきた帯にも、
という文字が。
でもAmazonで調べると、同じタイトル同じ著者名で「1957年」「1960年」というものも出てきて、正式な初版はもっと古いのかもしれません。
1957年となると、今から67年前です!
長く使い続けられてきた教材だということが分かります。
ちなみに、1957年はかの有名なピアノ導入教材『オルガン・ピアノの本』の初版が出版された年でもありますね。
数えきれないほどにあふれている現代のピアノ教材ですが、長く残って使い続けられているものというのがしっかりあるんですね。
編者小川一朗さんについて
編著者は、小川一朗さん。
1967年に71歳で亡くなられているようです(このことから考えても初版は1957年かな)。
自宅でピアノ教室をされ、かつ、ピアノや音楽に関する書籍を複数出されていて、ピアノ教育家ということになるかと思います。
この『ピアノ小曲集』は、「まえがき」によると、ご自身の教室で30年にわたって生徒さん方へ与え好評だった曲をまとめたものということです。
また、「まえがき」には以下のようにも書かれています。
★ 日本ではピアノを始めるとなると先ずバイエル教則本をということになっています。(中略)勿論このバイエルもよく出来ていますから、ピアノ奏法の基礎的技術としては、先ず結構でありましょう。しかし日本の子供さん方の心情から見ますと、旋律のもつ風格が純然たるドイツ風であったり、余りにも運指の練習に専念し過ぎていたりするので、年幼い方達にはややもすれば途中で勉強への意欲を減退させる場合が多いようです。
★ 元来音楽は、何かの感じを想いをうたい、心情を美化して、しかも常に心たのしくあってこそ、その値打ちがあるものと思います。従ってピアノ勉強の初心者に対しても、技術の練習と同時に、音楽的表現の種々相を理解させ、且つはその演出効果を上させるよう色々な楽曲を与えることは、寸刻もゆるがせに出来ないものと思います。
『ピアノ小曲集1』「まえがき」(太字は原文のまま)
こうした考えから、バイエルは「運指技術の練習書」、本書は「音楽表現への練習書」という位置づけと考えて作成した、との旨が記されています。
大きくうなずいてしまうような内容ではないでしょうか。
「ピアノを教える身として思いは同じ」
そう考える先生方によって、使い続けられてきたということなのでしょうね。
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『ピアノ小曲集-バイエル併用-1』内容は?・・初心者からブルグミュラーまで
それでは内容を詳しく見てみます。
難易度は?
この楽譜の正式な名前は『音楽表現練習へのピアノ小曲集 バイエル併用』です。「バイエルの併用曲集」ということですね。
なので、すべての曲に対して「バイエル〇番程度」という、難易度表示がされています。
「バイエル10番程度」から10番刻みで「100番程度」まであり、最後は「バイエル終わり頃」となっています。
次の章で全掲載曲を表にまとめていますが、『ブルグミュラー25の練習曲』の曲も2曲(「アラベスク」と「狩猟」)含まれています。
また、以下の曲は以前紹介した『ブルグミュラー併用ピアノ曲集』に入っています。
- すみれ(ストリーボッグ)
- 舞踏の時間に(リヒナー)
- そりに乗って(ケーラー)
- トルコ行進曲(ベートーベン)
というところでは、ブルグミュラーに入ったころまでの難易度が含まれるということですね。
参考記事→『ブルグミュラー併用ピアノ曲集』の紹介記事はこちらです。
掲載曲一覧
それでは掲載曲をご紹介します。
全部で71曲です。多いですね~~
題名 | バイエルの進度 | 作曲者 | |
---|---|---|---|
1 | ドレミファソのうた | 10番程度 | |
2 | 歌調 | 10番程度 | |
3 | ちょうちょう | 10番程度 | |
4 | ワルツ | 10番程度 | |
5 | ぼうやねんね | 10番程度 | オウガステン |
6 | 雨だれのおどり | 10番程度 | エンゲル |
7 | ブンブン小蜂 | 10番程度 | ドイツ民謡 |
8 | ドイツの歌 | 10番程度 | |
9 | 水車 | 20番程度 | イェンセン |
10 | 『ジングル ベル』より | 20番程度 | |
11 | おやすみなさい | 20番程度 | オウガステン |
12 | メリーのかわいい羊 | 20番程度 | |
13 | 春の声 | 20番程度 | ハリオット |
14 | おどり | 20番程度 | バーディー |
15 | 五月に | 30番程度 | ベール |
16 | よろこびの歌 | 30番程度 | ベートーベン |
17 | 子供の歌 | 30番程度 | ベール |
18 | 田舎のおどり | 30番程度 | バーディー |
19 | かっこう | 30番程度 | オーストリヤ民謡 |
20 | 谷川の流れ | 40番程度 | ハリオット |
21 | 狩り | 40番程度 | パガニーニ |
22 | 小川の水車 | 40番程度 | ツィリッヒ |
23 | ハーモニカをふく子 | 40番程度 | コルトー |
24 | クリスマスの鐘 | 40番程度 | ケーラー |
25 | 手品 | 40番程度 | ストリーボッグ |
26 | そよ風 | 50番程度 | ハリオット |
27 | 楽隊あそび | 50番程度 | エンゲル |
28 | 泉のほとり | 50番程度 | エーステン |
29 | オルゴール | 50番程度 | ツェルニー |
30 | ライオンの大行進 | 50番程度 | サンサーンス |
31 | ロング ロング アゴ― | 60番程度 | ベイリー |
32 | 人魚の歌 | 60番程度 | ウェーバー |
33 | ふるさとの小川 | 60番程度 | オーノルド |
34 | 時計交響曲の第二楽章より | 60番程度 | ハイドン |
35 | インディアンのおどり | 60番程度 | コルトー |
36 | 槌音高く | 70番程度 | コルトー |
37 | チクタク時計 | 70番程度 | ツェルニー |
38 | かわいいオーガスティン | 70番程度 | ドイツ民謡 |
39 | ドイツ民謡 | 70番程度 | ケーラー |
40 | 子守歌 | 音感テスト | エンゲル |
41 | オレンジのラプソディ | 70番程度 | エンゲル |
42 | 故郷の人々 | 70番程度 | フォスター |
43 | 夕べの歌 | 70番程度 | グルリット |
44 | ジーク | 80番程度 | アイルランド民謡 |
45 | おもちゃのシンフォニーより | 80番程度 | レオポルト・モーツァルト |
46 | 田舎風の踊り | 80番程度 | フンテン |
47 | ミュゼット | 80番程度 | ダカン |
48 | 子供の謝肉祭 | 80番程度 | ストリーボッグ |
49 | 小鳥のさえずり | 80番程度 | ストリーボッグ |
50 | エコセーズ | 80番程度 | ベートーベン |
51 | ワルツ「黒い瞳のスーザン」 | 80番程度 | ストリーボッグ |
52 | 小舞曲 | 80番程度 | ハイドン |
53 | アリア | 80番程度 | バッハ |
54 | 五月のそよかぜ | 90番程度 | ロルセーズ |
55 | すみれ | 90番程度 | ストリーボッグ |
56 | フリュートをふく人 | 90番程度 | ツェルニー |
57 | 王子のチャーミングなワルツ | 90番程度 | ツェルニー |
58 | ハバネラの歌「歌劇カルメンより」 | 90番程度 | ビゼー |
59 | アラベスク | 100番程度 | ブルグミュラー |
60 | 陽気なかじや | 100番程度 | グルリット |
61 | 春のおとずれ | 100番程度 | グルリット |
62 | 舞踏の時間に | 100番程度 | リヒナー |
63 | 屋根の小鳩 | 100番程度 | フィンク |
66 | 森の小川 | 100番程度 | グルリット |
65 | 狩猟 | 終わり頃 | ブルグミュラー |
66 | そりに乗って | 終わり頃 | ケーラー |
67 | ミヌエット | 終わり頃 | パーセル |
68 | ウィリアムテルより | 終わり頃 | ロッシーニ |
69 | ポロネーズ | 終わり頃 | シュモール |
70 | 聖夜 | 終わり頃 | グルーベル |
71 | トルコ行進曲 | 終わり頃 | ベートーベン |
作曲者は以下の通りです。()は曲数です。
- オウガステン(2曲)
- エンゲル(4曲)
- イエンセン(1曲)
- ハリオット(3曲)
- バーディー(2曲)
- ベール(2曲)
- ベートーベン(2曲)
- パガニーニ(1曲)
- ツィリッヒ(1曲)
- コルトー(3曲)
- ケーラー(3曲)
- ストリーボッグ(5曲)
- エースティン(1曲)
- ツェルニー(4曲)
- サンサーンス(1曲)
- ベイリー(1曲)
- ウェバー(1曲)
- オーノルド(1曲)
- ハイドン(2曲)
- フォスター(1曲)
- グルリット(3曲)
- レオポルド・モーツァルト(1曲)
- フンテン(1曲)
- ダカン(1曲)
- バッハ(1曲)
- ロルセーズ(1曲)
- ビゼー(1曲)
- ブルグミュラー(2曲)
- リヒナー(1曲)
- フィンク(1曲)
- パーセル(1曲)
- ロッシーニ(1曲)
- シュモール(1曲)
- グルーベル(1曲)
全部で34人です。
作曲者の書かれていないものがはじめの方に数曲あります。
著者の小川さん自身によるものかな?あとは童謡などですね。
また、ピアノ曲だけではなく、民謡やオーケストラ曲も含まれています。
おまけの曲?
”おまけ”としてしまってはいけないかもしれませんが、次の2曲は他とちょっと違う位置づけになっています。
- 40番「子守歌」
- 41番「オレンジのラプソディ」
上の表にも書きましたが、40曲目の「子守歌」は「音感テスト」となっています。
この曲を先生が弾いて聴かせ、生徒にその通りに弾かせる、というものです。
変ホ短調で、黒鍵だけで弾くことのできるごくごく単純な曲です。
そして、41曲目の「オレンジのラプソディ」は「余興用」と書かれています。
これも、変ト長調(変ホ短調の平行調)で右手のメロディーは黒鍵だけで弾くことが出来ます。
「オレンジを右手で持ってそのオレンジで鍵盤を押さえて弾く」、というように説明がされています。
ちょっとしたお遊びですね。
様々な解説付き
ページの余白部分には、編著者小川一朗さんによる様々な解説が載せられています。
- 曲の解説(全曲ではない)・・・この曲の構成や注意点など。
- 音楽的な解説・・・以下のようなテーマで弾き方などについて書かれています。
- 五指練習・指使い
- 音感
- 拍子感
- レガートとスタッカート
- 姿勢
- 主旋律と伴奏
- 楽曲の形態
- 分散和音
- 動機
- 楽譜か耳か?
- 八分音符のリズム・和音
- 和音の連打
- 音楽の微妙さ
- 調性
- 曲趣と速度
- 終止法
- ドイツ民謡・付点四分音符のリズム
「曲の解説」は全曲ではありません。後半に行くにつれなくなります。
曲が長くなり余白がなくなってしまうからか?
「音楽的な解説」についても前半部分(48曲目以前まで)に書かれています。
言葉の使い方等が昔風な感じですが、大切なことが書かれていてじっくりと読みたい部分です。
『ピアノ小曲集-バイエル併用-1』楽譜の様子
楽譜の状況についてもまとめます。
五線の幅は8㎜程度。大譜表としては2.5㎝ほど。
楽譜はそれほど大きくはありません。標準、というか初心者が使うには少々小さいでしょうか。
1ページ4段から5段です。3段のページも少しあります。
イラストは少ないですが、全く無いわけではありません。線だけで描いたようなシンプルな感じですね。
解説部分は、子ども向きには書かれていません。
漢字がしっかり使われていてふり仮名もなく、こみこみしていています。
小さな子には、丁寧にかみ砕いて説明する必要がありますね。
見た印象は『トンプソン現代ピアノ教本』ととても似ていると感じました。こちらも古くからある教材ですね。
参考記事→『トンプソン現代ピアノ教本』の紹介記事はこちらです。
『ピアノ小曲集-バイエル併用-1』まとめ 安心感のある定番曲集
いかがでしょうか。
載せられている曲の作曲家が様々で、曲数も多く、これ1冊でバイエルの初期のころからブルグミュラーに入るころまでの難易度。
掲載曲も定番曲が多く、発表会などでも使えそうです。
安心して長く使える曲集だなと思いました。
イラストは少なく楽譜も大きくなく、文章も昔のまま、書体も昔のままで、古い感じはするかな‥
カラフルでステキな感じの新しい楽譜がたくさん出版されている中、そのあたりは「ちょっとね・・」と思う人もいるかもしれません。
いろんな作曲家の曲が入っていて長く使える。私にとってはこれは重要!
クラシックの定番曲ばかり、ということはあるので、ギロックなど現代的な要素のある曲集とセットで使う、という方法が考えられるかなと思います。
(公開日:2018年10月19日 最終更新日:2024年1月18日)
⇩こちらは楽譜のみですが、CD付きもあります。
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