小さな子向けの、分かりやすいスケールのテキストはないか、と思い探す中、この『こどものおんかいれんしゅう』を見つけました。
指使いの練習から始めて、ゆっくりていねいに進めていける内容で、レッスンを始めた初期の段階から使ことができます。
自分の出す音に注意を向けて、集中して弾くことが大事にされています。
『こどものおんかいれんしゅう』目的は”集中力”

この『こどものおんかいれんしゅう』、副題は”集中力を育てる”となっています。
本書の「はじめに」にも、著者である原田敦子さんが以下のように書いています。
重大な特徴は、音楽表現の土台として欠かせない、注意力、集中力を養うことを、第一の目標にしている点にあります。
音色に注意する注意力、心に感じているとおりに表現しようとする集中力は、学習する音の少ない時点から養われなければなりません。鍵盤から弾き出される一音一音に、心を寄りかけさせる学習は、生徒の音楽生活を決定するほどに大切な訓練です。
引用:『こどものおんかいれんしゅう』「はじめに」より
自分の気持ちや様々なイメージを持って曲を演奏しようとすると、とっても集中力が必要になるのは、言うまでもありませんよね。
自分の出した音に敏感になるために、ピアノを始めたばかりのころから、集中して弾く、ということをしっかり経験していこう、という考えで作られています。
『こどものおんかいれんしゅう』内容の紹介
それでは、具体的な内容を紹介していきます。
音階はどこまで載っている?
本書は”おんかいれんしゅう”なので音階(スケール)が載せられているわけですが、全調ではありません。
掲載されている音階は、♯2つ、♭3つまでの調です。
以下は、記載順序です。
- ハ長調・イ短調
- ト長調・ホ短調
- ヘ長調・ニ短調
- ニ長調・ロ短調
- 変ロ長調・ト短調
- 変ホ長調・ハ短調
調号なし→♯1つ→♭1つ→♯2つ→♭2つ→♭3つの順番ですね。
なお、短調は「旋律的短音階」になっています。
各調の練習順序は?
それぞれの調をどのように学んでいくかというと・・まずは「指使い」から入ります。
見開き2ページで、左ページは左手、右ページは右手について書かれています。
そして、上行の指使い→下行の指使いという流れになっていて、それぞれ2ページです。
⇩実際の楽譜です。左手の上行の指使いですね。
そのあと、1オクターブの音階を弾くことになります。
右手、左手それぞれ一段譜で書かれていて、片手ずつ弾くようになっていますね。
⇩音階部分の楽譜です。
そして、最後にカデンツのページがあります。
「ドミソ」「ドファラ」「シレソ、シファソ」
の3つに分けて、楽譜に書かれていて、ドミソ→ドファラ→シレソ→ドミソ、の順で弾く楽譜があります。
楽譜はヘ音記号のみで、左手で弾くようになっています。
⇩カデンツページの楽譜
『こどものおんかいれんしゅう』練習の進め方は?
この『こどものおんかいれんしゅう』をどのように練習していけばよいか、著者の言葉も載せながら見ていきます。
指使いの練習部分
指使いは、上行、下行それぞれに練習楽譜があります。
内容は同じ。4/4拍子で、4分音符+8分音符2つの「ドレレミファファ、ソララシドド」2小節。
それと、付点4分+8分の「ド~レミ~ファ、ソ~ラシ∼ド」2小節です。
下行は逆になりますね。
進め方として、著者は以下のように述べています。
これから弾こうとする音を、弾く前に歌うように指導してください。歌った音を想像してから、鍵盤を押さえる習慣を養います。
引用:『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
ピアノの練習で「歌う」ってとても大事ですよね。一度声に出してしっかりと分かったうえで、それと同じ音が出せているかよく聴く、ということですね。
弾く前にひと作業置くことで、弾くときに集中することができますね。
音階の練習部分
音階の練習部分は、いわゆる「リズム練習」ということになります。
長調、短調で少し内容が違います。
まずは長調から。
4分音符で書かれた楽譜と、8分音符で書かれた楽譜があります。
4分音符の楽譜は、5/4拍子3小節で1オクターブを弾くようになっています。
つまり・・「ドレミファソ、ラシドシラ、ソファミレド」と弾くということですね。
8分音符の楽譜は、4/4拍子4小節です。1オクターブを2回弾きます。
「ドレミファソラシド、シラソファミレドレ、ミファソラシドシラ、ソファミレド」
と弾きます。最後は2分音符ですね。
それぞれアクセントやクレッシェンド、デクレッシェンドが書かれていて、拍子を感じて弾くようになっています。
次に、短調。
短調は「旋律的短音階」になっています。
4/4拍子で、4分音符+8分音符。
「ラーシドレミファソ ラーソファミレドシ、ラー(2分音符)」
「ラシドレミファソー ラソファミレドシー、ラー(2分音符)」
の2つです。
ここの部分について、著者は・・
初期の段階では、正確なリズムの演奏を目指すのではなく、指番号の、より深い認識を目指す再学習と考え、遊びのような雰囲気で楽しい練習になるよう、配慮してください。
引用:『こどものおんかいれんしゅう』「先生方へ」より
覚えた指使いをいろいろな形で弾いてみる、ということですね。形が変わっても弾けるよう、しっかり考えながら弾くことが大切になりますね。
アクセントの弾き方についても、
アクセントは心の強調と考え、指をきゅっと引き締める程度にしてください。決して、大きな音で打ちつけたりしないよう、気をつけて練習してください。
引用:『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
とあり、指先へ意識を集中することが大切に考えられています。
カデンツの練習部分
カデンツは、伴奏の意味合いで書かれています。
メロディを引き立てる伴奏の、最も簡素な音形での練習を提案しています。初回は、必ず、先生が手を添えて、歌いながら心のふくらみを大切に学習してください。
引用:『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
ただ漠然と弾くのではなく、「ハーモニーの流れを感じながら弾く」よう書かれていて、やはり、音を想像して集中して弾くことが求められています。
カデンツも、長調と短調で内容が少し違います。
まずは長調から。
カデンツの練習部分には、3つの楽譜が載せられています。
1つ目は6/8拍子。「ドミソドミソ、ドファラドファラ~~」と弾いていきます。
2つめは5/4拍子。4分音符で「ドミソドミ、ドファラドファ~~」と弾きます。
3つ目は4/7拍子。4分音符で「ドミソドミソミ、ドファラドファラファ~~」となっています。
そして、短調。
やはり楽譜は3つです。
楽譜の方が分かりやすいので、そのまま載せます。
『こどものおんかいれんしゅう』まとめ
小さな子ども向けのスケールのテキスト『こどものおんかいれんしゅう』。
音階は、音楽の根幹をなす大切な要素です。その音階を、どんな音を出そうかと意識を集中させて弾くことは、重要な練習ですね。
音階って難しい・・と敬遠されがちだし、教える側としても、ピアノを始めたばかりでまだ早い、と思ってしまいがち。
こうしたテキストを使いながら、早い段階から弾いていくことは大事だな、と改めて感じました。
ちなみに、もう少しレッスンの進んだ人向けに、同じ著者のこちら⇩もあります。
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