ピアノのレッスンを受けていると、「手元を見ないで楽譜を見ながら弾きましょう」と、先生に言われることがあるのではないでしょうか。
私も一応小さなピアノ教室の先生ですが、やっぱり言います。
楽譜を見ながら同時に弾いていく。
これ、できる人とできない人がいるんですよね。
自分の教室のレッスンで見ていても、わりと簡単にやっちゃう子もいれば、なかなかできない子も・・
この違いは何なんだろう・・と思い、考えてみました。
始めに言ってしまいますが・・
ピアノは楽譜を見ながら弾けた方が断然いいです!
ぜひできるようになってください。
- 楽譜を見ながら弾ける人と弾けない人の、楽譜の見方の違い
- 楽譜を見ながら弾けるようになるための練習法
「楽譜を見ながら弾く」そのうちできる、というものではない!
「楽譜を見ながら弾く」ということは、レッスンが進んでいけばそのうちできる。
というものではありません!
私の教室の様子を見ていると、何年かピアノを続けてきて決して初心者じゃないけれど、手元ばかりを見て弾く子もいます。
大人の、やはり初心者じゃない方で「暗譜しないと弾けないんです~」という人もいますね。
一方で、レッスンを始めて間もない場合でも、初めての曲を楽譜を見ながら同時に弾いていく子もいます。
全く手元を見ないわけではないですが、視線は基本的に楽譜に向いています。
もちろん、スラスラ弾いていくわけではないですが。
こうしてみていると、「楽譜を見ながら弾く」というのは、ピアノを弾けるようになるに連れて、そのうちできるようになる、というものではないようです。
ピアノを始めたばかりの頃から、意識的に行っていくことが大事ですね。
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楽譜を見ながら弾ける人はどういう風に弾いている?
それじゃあ、楽譜を見ながら弾ける人はどういう風に弾いているのか。
そこをまとめていきます。
私自身は、楽譜を見ながら弾くことはできます。
(一応先生なんで、出来なきゃまずいだろう‥と思いますが)
自分はいったいどういう風に弾いているんだろう・・ということ、そして、レッスンでの様子や書籍を引用するなどしてまとめてみました。
楽譜を見ながら弾くことができるようになるには、以下⇩のことが必要です。
詳しく書いていきます。
楽譜を”音の流れで”スラスラと読んでいける
まずは、やっぱり、楽譜の音をスラスラと読んでいける必要はありますね。
”音”を認識しないと、鍵盤のどこを鳴らしていいのかわからないですもんね。
「音を読んでいける」ということは、ただ音符の羅列を1個1個読んでいくのではなく、音の流れで読んでいくということです。
これ、とっても重要です。
⇩例えばこのような楽譜があった時、矢印のような音の流れ、ということです。
次の音は上がっているのか下がっているのか、はたまたおんなじ音なのか。
それだけではなく、1個飛んでいるのか、すぐ隣りなのか。
そのことも同時に認識する必要があります。
レッスンを始めて間もなくても楽譜を見ながらすぐ弾ける、というのは、これができているかどうかが大きいのですね。
ぶっちゃけ、音を読めなくても弾けちゃうんです!
始めの音だけわかれば、それを基準に上がるのか、下がるのか、で弾いていけるんですね。
なので、弾けていても音を1個1個読んでもらいます。
弾けるからといって読めるとは限らないんですよね。
こんな感じで、音を読めなくても弾けちゃったりもするわけですが、音は読めた方がやっぱりいいです!
当たり前ですが。
レッスンが進んでもっと難しい曲を弾くようになると音の動きが大きくなってくるので、流れを見るだけでは正確な音を把握できなくなってしまいます。
上がるというのは分かるけど、何の音?になってしまうということですね。
関連記事→楽譜を読めるようになる方法をこちらの記事にまとめています。
⇩音符をスムーズに読めるようになるための手順をまとめた有料記事を販売しています。
音符をスラスラ読めるようになるための学習手順と外せない重要ポイント
楽譜と鍵盤の位置関係が分かっている
もう一つ重要なこと。それは、楽譜の音と対応する鍵盤の位置が分かっている、ことです。
上に、「音符の横の流れを把握することが大事」ということを書きましたが、それが鍵盤のどこなのかが分かっていないと、やっぱり弾けません。
先ほどのこの画像。1小節目の4つの音(レミファソ)は右上へあがっています。
鍵盤も右側の方の音を弾きますね。
次の4つの音(ファレドラ)は右下へ下がっています。
鍵盤の位置は、左の方の音を弾くことになりますよね。そして、手の場所が大きく変わることはありません。
そういう位置関係です。
時々レッスンで遭遇するのは、
「次の音はソだ!」と音の認識はできた。でも、楽譜とは全く違うソの音を弾いてしまう。
ということ。
楽譜の音符は上へがっているのに、1オクターブ下の音を弾いてしまったり。
「え~~?!」って思うんですが、これ、楽譜の音の流れと鍵盤の位置を結びつけて考えていないんですね。
「音の場所」としては間違っていなんだけど。
とにかく音を必死で読み、”流れ”として見ていない。
そして、音だけで鍵盤をとらえてしまう。
音の流れと鍵盤の位置とを、常にセットで考えるようにしていかなくてはいけませんね。
認識した音にふさわしい指が対応できる
「楽譜を見ながら弾く」ためには、指の動きも重要です。
音は分かったし鍵盤の位置も分かった。指はなんでもいいんだよね。
では、結局弾けません。
そもそも、とにかく音を出す、ということだけで弾いていると、スムーズに次々弾いていくことは出来ないですよね。
楽譜を見ながら同時に弾いていくためには、「この音の流れにはこの指の順番で弾く」ということが、サッと判断できなければいけません。
ピアニストの様々な演奏能力を脳の働きから解説した『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』に、以下のような記述があります。
トレーニングを受けて、音のピッチ(高さ)と対応したピアノの鍵盤を正しく押さえられるようになると、上頭頂小葉という脳部位の活動が強くなることが分かりました。これは頭の頂点にやや後ろ側にある脳部位で、目から入った情報の中でも特に、空間に関する情報を動きに変換するときに働く部位として知られています。
『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』p.91~92
そして、上頭頂小葉の大きさは、「音楽家ではない一般の人<アマチュアの音楽家<プロの音楽家」ということも分かっているそうです。
また、ピアニストは、指番号を示されただけでその指で弾くべき音がイメージされてしまう、ということも実験の結果わかっているそうです。(引用:同書p.94)
楽譜の音に全く対応していない指番号が書かれていると、少々混乱してしまうということです。
楽譜を読む能力のある人は、楽譜を見ているだけで体を動かす脳の回路が働く、ということも分かっているそうです。(引用:同書p.95)
関連記事→引用した『ピアニストの脳を科学する』をこちらで紹介しています。
つまり、音の流れに合った指使いで弾くことは、楽譜を見るだけで自動的に指が動くようになることに結びつく、ということですね。
ピアノは、「この音形にはこの指使い」ということがある程度決まっています。
指の長さなど手の形から判断される”自然な指使い”ということです。
それを考えながら弾くことは、とても大事だということですね。
【練習法】ピアノを楽譜を見ながら弾けるようになるためには・・
楽譜を見ながら弾ける人はどのように弾いているのか・・
自分がどうしているのか振り返りながら、レッスンでの様子や書籍からの引用で考えてみました。
では、楽譜を見ながら弾けるようになるにはどうすればいいでしょう。
まずは・・
指1本に音1つ担当制で弾ける曲(ドレミファソの5つの音しか出てこないような曲など)、あるいは曲の一部を用意し、以下の2つのことを常に意識して練習してみてはいかがでしょう。
音の流れを意識し歌ってみる
まずは、楽譜に書かれている音の流れ、つまり、音の高低をしっかりと意識することが必要です。
それには、歌ってみることです。
- 楽譜に音を書き入れ
- 弾いて音を確認し(手元を見ながらでいいです)
- 楽譜の音符をなぞりながら歌う
歌うと、自分の喉で音程を調整することになるので、音がどの程度上下するのかがつかみやすいのではないかと思います。
歌ったら、また弾いてみます。
弾いたり、歌ったり、弾きながら歌ったり、音符をなぞりながら歌ったり・・
いろいろなパターンでやってみるといいのではないでしょうか。
指使いを意識して弾く
上に、用意する楽譜は「1本1音担当制」と書きましたが、そのような曲を使うと、指使いがおのずと決まってきます。
- 指1本につき1音担当制(五指固定)の楽譜を用意
- その指づかいをきちんと守って弾く
これを、徹底してやることが大事だと思います。
子ども用のピアノ導入テキストは、そうした形から始まるのがほとんどです。
弾くとき注意しなければいけないのは、、始めに弾くべき鍵盤の場所に5本の指をきちんと置いてから弾き始める、ということです。
指の準備は大事です!
弾いているうちに場所がずれてしまうことはよくありますが、そうなると、「指はなんでもいい、とにかく音を出す」になりがちです。
そうすると、”自然な指使い”が身につかないんですよね。
指の場所がずれたら、その都度直す、をきちんと行います。
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番外編:とにかく弾いてみる
あんまり難しいことを考えず、「とにかく弾いてみる」というのもいい練習ではないかと思います。
荒っぽいやり方かもしれませんが。
上に書いた「1本1音担当制」で弾ける短い曲を用意し、いきなり「楽譜を読みながら弾く」をしてみるということです。
実は、自分の教室のレッスンでは時々やっています。
新しい曲に入ったら、音を読んでみたりせず、弾くべき鍵盤の場所に手を置くことだけをして、「ちょっと弾いてみて」と言って弾いてもらいます。
そうすると、楽譜を見ながらとにかく弾いていこうとするんですよね。
そして、わりと弾けてしまう。
もちろん、全く始めからはしません。
同じような曲を数曲弾いてきたうえで新しい曲に入った時に、ということです。
なので、音を読んで、歌って・・ということを何度かしたら、「楽譜を見ながら弾く」ということをどんどんするといいのではないかと思います。
「楽譜を見ながら弾く」を癖にしてしまう、という感じですね。
「楽譜を見ながら弾けない」というのは、手元を見ることが癖になってしまっている、ということもあるように思います。
「楽譜を見ながら弾く」は演奏することの楽しさを得られる
「楽譜を見ながら弾く」というのは、新しい曲も初見である程度弾ける、ということです。
初見で弾ける、ということは、この新しい曲がどんな曲なのか、ある程度はすぐに分かる、ということです。
それは、曲が仕上がるまでにかかる時間を、大幅に減らせることにつながります。
どんな曲なのかが始めからある程度分かるので、どんなふうに弾こうか、つまりどのように表現しようか、ということに取りかかりやすくなります。
「ある程度」「ある程度」としつこいですが、あくまでも「ある程度」です。
音楽を演奏する楽しみは、どんな風に表現しようかと作っていくことではないかと思います。
そのことにじっくりと時間をかけられるようになります。
楽譜を見ながら弾けるようになるには、上に書いたようなことに注意しながら、「楽譜を見ながら弾く」を地道に続けるしかないです。
でもその先に、演奏することの本当の楽しさが待っています。
(公開日:2019年10月1日 最終更新日:2024年9月17日)
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