生きていくのに必要だと感じる「自己肯定感」。
ピアノの先生として音楽との関係を考えると、音楽を演奏することは、自己肯定感を高める一つの方法ではないかと思います。
他にはどんな方法があるのでしょう。子どもとのかかわり方ということから考えてみました。
「自己肯定感」を高める~その子自身のすべてを認めるために
「自己肯定感」という感覚。
いきいきと前向きに生きていくために、とっても大事なことだと考えています。
自己肯定感とは、以下のようなことです。
自己肯定感(じここうていかん)とは、自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉である。
ウィキペディア「自己肯定感」
私は、自分に対する「根拠のない自信」と解釈しています。
何があるわけじゃないけれど「自分は大丈夫」と思える。
「〇〇ができるから自分は大事なんだ」ではなくて、「これ」というはっきりしたものはなくても「自分はこれでいい」と思える、ということです。
根底にこういう感覚があれば、ちょっとやそっとのことでは心が折れない、強い精神力を持てるようになると思います。
だって、何の根拠もなく「大丈夫」と思えているんですから。
そして、自分は大丈夫と思えていれば、まわりに対しても何かと配慮ができ、やさしく接しられるのではないかと思います。
自分に自信がなければ周りを見ることはできません。自分のことばかりが気になってしまうものです。
だって、自分に自信がないから・・
「自己肯定感」は、生きていくうえでとても大切なものだと思います。
自己肯定感を高めるうえで必要なのは、その子のすべてをそのまま受け入れるということでしょう。
〇〇ができるとかできないとか、そんなことは関係なく、存在そのものが大事と感じる。
そして、子どもに感じさせる、ということではないでしょうか。
「無償の愛」ですよね。
でも、具体的にどうすればいいのか・・けっこう難しいことのように思います。
その一つは「ダメ」という言葉を極力使わないようにする、ということではないかと思います。
自己肯定感を高める方法~「ダメ」ではなくて「なぜ?」と
私は大卒後の約10年間、学童保育所の指導員をしていました。
「自己肯定感」という言葉を知ったのは、この時です。今からもう20年以上昔の話ですね。
教えてくださったのは、先輩指導員。これまで生きてきた中で唯一尊敬している人物です。
「子どもたちとかかわるときに一番大事なのは、子どもたちのありのままを受容することだ。それは、子どもたちの『自己肯定感』を育てることになる。」
ということを、常々言われてきました。
具体的なかかわり方としては、「子どもを絶対に否定しないこと」。これを徹底させられました。
例えば・・
子どもたちの間でもめ事、けんかは日常茶飯事。これに介入するのが指導員の仕事、と言ってもいいくらい。
「こいつがオレのことバカって言った!」「〇〇が先に蹴った!」「△△が掃除しないで遊んでる!」などなどなど・・・
子どもたち自身で解決できればいいですが、本人たちも何が何だかわからなくなってくる。
すると誰かが呼びに来たりして、ハイハイハイ・・・と間に入っていきます。
そうしたとき、「バカと言った」「蹴った」「遊んでる」ということを叱る、つまり「ダメでしょ」とは絶対に言いません。
その前に、なぜそうなったのかを順序立てて聞いていきます。
必ず理由がある、ということです。
「そういうことをされたから、バカって言っちゃったんだね。」ということが分かったら、「それは嫌だったねぇ」としっかり気持ちを受け止めます。
その上で、「でもバカって言っていいの?」「ダメ」「じゃぁ、バカって言っちゃったことを謝ろうか」「ごめんね」となり、さらに、相手の子に「何でバカって言われちゃうようなことをしたの?」と続いていきます。
簡単にまとめるとこんな感じですが、実際はすご~く時間のかかることです。
ですが、一つ一つ丁寧に聞き出し、一つ一つ丁寧に受け止める、ということを徹底的にやるよう求められました。
もめ事の介入をしているときには、他の仕事は免除されていたくらいです。
これはすごく大事なことだった、と今でも思っています。
子どもが否定的な行動をとったとき、必ず背景に何かある。それを探って、その気持ちをきちんと受け止める。
気持ちを分かってくれたと感じた子どもたちは、自分を否定的にとらえるようなことはしなくなる、ということです。
私は今子育て真っ最中ですが、私の子育ての指針になっています。
実際は難しいことです。目に見えることをつい怒ってしまう。いちいちこんなことをしていたら時間もかかります。
当時は、仕事だからできた、という部分は大きいなと思います。
でも、忘れてはならない大事なこと、と思っています。
ピアノのレッスンの時も「ダメ」を使わない
今の私の仕事、ピアノのレッスンの時も、子どもたちを否定するような言葉は使わないよう心掛けています。
「もっともっと弾かないとダメだよ。弾けるようにならないよ。」
「練習してこないからダメなんでしょ。」
「そんな風にしか弾けないんなんてダメだよ。」
こんな言葉は・・・
「もっともっと弾こう!そうすれば絶対に弾けるようになるよ。」
「練習できなかったから弾けないんだね。ってことは、練習すれば弾けるってことだよ!」
「そんな風になっちゃうんだね。じゃあこういう風にやってみよう。」
と、こんな感じでしょうか。
今レッスンに来てくれている子どもたちは、当時かかわっていた子どもたちとちょうど同じ年代です。
なので、半分無意識に「『ダメ』はダメ」と思っているようなところがあります。
「ダメ」を使わない言い回しを、無意識のうちに頭の中でぐるぐる考えている自分がいます。
「ダメ」は結構きつい言葉。言う方が考える以上に言われる方は傷つくように思います。
以前の記事に「音楽の演奏は自己肯定感を育むことにつながる」と書きましたが、それは、曲に入り込んで気持ちよく演奏できてこそ。
関連記事→以前記事はこちらです。
そういう演奏ができるようにするためにも、演奏の過程での「ダメ」はダメだよな、と思います。
子どもたちが音楽を心底楽しみ、自分の感性で演奏できるようにするために、否定的な言葉を使わない。
これからも、そのことを大事にレッスンを続けていきたいと思っています。
(公開日:2016年8月30日 最終更新日:2022年11月22日)
関連記事
→『自己肯定感』本当の意味と音楽でできることを考えてみました。
→自ら楽器を演奏することは自己肯定感を高めることに結びつくと考えています。
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