大人の初心者向けの教本はたくさん出版されていますが、「超初心者」の方向けとして、こちらの『シニア・ピアノ教本』を紹介します。
ピアノは全く初めて、指が動くかどうか不安、楽譜を読むのも自信がない・・・
そんな方にお勧めします。
1~3までありますが、今回は『1』のみ詳しくまとめます。
初めの1冊でどこまで進むのか、参考にしていただければと思います。
『シニア・ピアノ教本』とは
『シニア・ピアノ教本』はどういうテキストかをまずは見てみましょう。
『シニア・ピアノ教本』という名前で出版されているのは1~3の3冊あります。
実はこのテキスト、同じ著者(橋本晃一さん)による『おとなのためのピアノ教本』の簡単版なんです。
「はじめに」の部分に以下のようにあります。
「おとなのためのピアノ教本」全5巻の導入部分を、よりやさしく、どなたにも無理なく進めるように改編したものです。
引用:シニア・ピアノ教本「はじめに」より
「『おとなのためのピアノ教本』の導入部分」というとどのくらいか。
『おとなのためのピアノ教本』を開いてみると、
- 第1巻 バイエル前半程度
- 第2巻 バイエル後半程度
- 第3巻 ブルグミュラー程度
- 第4巻 ソナチネ・アルバム程度
とあります。第5巻はソナチネ~ソナタ程度のレパートリー曲集になっています。
「導入」というとバイエル程度を指すのが一般的です。
なので、『シニア・ピアノ教本』は、シリーズ3冊を使ってバイエル終了程度まで進む、ということになります。
3巻を終えたら、『おとなのためのピアノ教本』の3巻に進めるということですね。
関連記事→「【ピアノ教材】ブランクの長い大人のピアノ経験者へ『おとなのためのピアノ教本』」
1曲目に入るまでに
それでは中身を見てみましょう。
第1巻は、鍵盤の説明や楽譜の読み方といった基礎の基礎から始まります。
1曲目に入るまでに6ページが割かれています。
何について書かれているかというと・・
- ピアノの鍵盤
- 楽譜の読み方
- 右手の練習
- 左手の練習
それぞれについて書いてみます。
「ピアノの鍵盤」
これには1ページ使われています。
ピアノの鍵盤の図が載せられていて、黒鍵から白鍵の音を見つけるよう説明されています。
つまり・・
2つの黒鍵部分から「ドレミ」を。3つの黒鍵部分から「ファソラシ」を探します。
「どの指でもいいから音を言いながら弾いてみる」ということが促されています。
「楽譜の読み方」
このことに3ページ充てられています。
1ページ目には5線の説明。
- 加線について
- ト音記号とヘ音記号について
- 小節について(小節線や終止線)
の3点について書かれています。
2ページ目には音符の説明。
4分音符、2分音符、全音符の3種類のみです。
それと、4分休符、2分休符、全休符も載せられています。
基本の3つ、ということですね。
このテキストでは、この3つ+付点4分音符、付点2分音符、8分音符が出てきます。
休符については、この3つ+8分休符が出てきますね。
3ページ目には拍子記号と指番号。
2/4拍子、3/4拍子、4/4拍子の3つです。
拍子については、出てくるのはこの3種類のみです。
指番号は、左右の手の写真にそれぞれ番号がつけられています。
「右手の練習」
いよいよここから実際に弾いていきます。
右手の1,2,3の指を使って、ドレミを弾きます。鍵盤に手をのせ、指番号が付け加えられている写真が1番上にあります。
そして、手の形についても書かれていて、良い例、悪い例が写真で示されています。
その下に鍵盤と楽譜とを対応させた図が乗っていて、1番下に4小節の楽譜があります。
楽譜には、4分音符、2分音符、全音符が使われています。先に出てきた基本の3つですね。
1,2,3,4・・・と拍のかぞえ方として数字が書かれています。
「左手の練習」
今度は左の1,2,3の指を使ってドシラを弾きます。
右手同様、手を鍵盤の上に乗せて指番号がつけられた写真があります。
そして、鍵盤と楽譜を対応させた図があり、下に4小節の楽譜も載っています。
こちらも右手と同様、使われている音符は4分音符、2分音符、全音符のみで、拍のかぞえ方の数字もあります。
進み方は?
基礎的な説明と弾き方が終わり、さあ、いよいよ曲を弾いていきます。
具体的にどのようにレッスンが進んでいくのかを見てみましょう。
収録曲は?
まずは、掲載されている曲についてです。
大人のためのテキストは、よく知られている曲で練習するというものが多いですね。
こちらもやはりそうです。
どんな曲が載っているのかというと・・
- 月の光に(フランス民謡)
- ボルガの舟歌(ロシア民謡)
- オーラ・リー(プールトン)
- ビッグ・ベンの鐘(外国曲)
- 愛の喜び(マルティーニ)
- 赤い河の谷間(アメリカ民謡)
- 竹田の子守歌(京都地方民謡)
- アンダンテ(ハイドン)
- 峠の我が家(アメリカ民謡)
- 愛の夢(リスト)
- ラ・クカラチャ(メキシコ民謡)
- 聖者の行進(アメリカ民謡)
- さよなら(ドイツ民謡)
- ジングル・ベル(ピアポント)
- 喜びの歌(ベートーベン)
簡単バージョンと少し難しいバージョンと2回載せられている曲もいくつかありますが、曲としては以上の15曲です。
ああ知ってる、と思うものが多いのではないでしょうか。
レッスンの進み方
基本的に、「1つのテーマに1曲」という形で進んでいきます。
表にまとめてみます。
曲名(拍子、長さ) | テーマ | 内容 | |
1 | 月の光に (4/4拍子、全8小節2段) | 両手の練習 | 大譜表の説明 片手ずつ弾く(右手→左手) 全休符 |
2 | ボルガの舟歌 (4/4拍子、全8小節2段) | 4指の練習 | 左右4の指まで音域広がる(右ドレミファ、左ドシラソ) 2分休符 |
3 | オーラ・リー (4/4拍子、全12小節3段) | 反復記号(1) | 曲の頭に戻るリピート記号 4分休符 |
4 | ビッグ・ベンの鐘 (3/4拍子、全12小節3段) | 4分の3拍子 | 3/4拍子 付点2分音符 最後の4小節のみ両手同時弾き |
5 | 愛の喜び (3/4拍子、全16小節4段、アウフタクト) | タイ | タイ |
6 | 赤い河の谷間 (4/4拍子、全16小節4段、アウフタクト) | 5指の練習 | 左右5の指まで音域広がる(右ドレミファソ、左ドシラソファ) |
7 | 竹田の子守歌 (4/4拍子、全8小節2段) | 8分音符 | 8分音符 |
8 | アンダンテ (2/4拍子、全8小節2段) | 4分の2拍子 | 2/4拍子 |
9 | 峠の我が家 (3/4拍子、全16小節4段、アウフタクト) | 付点4分音符 | 付点4分音符 8分休符 |
10 | 愛の夢 (3/4拍子、全24小節4段、アウフタクト) | 新しいポジション(1) | 右レミファソラの場所で5指固定 |
11 | ラ・クカラチャ (3/4拍子、全16小節2段(リピート含む)) | 反復記号(2) | 1カッコ2カッコのリピート記号 |
12 | 聖者の行進(1) (4/4拍子、全16小節4段、アウフタクト) | 新しいポジション(2) | 左 中央ドの1オクターブ下のドからドレミファソの場所で5指固定(曲は左のみで弾く) |
13 | 聖者の行進(2) (4/4拍子、全16小節4段、アウフタクト) | 両手のオクターブ(1) | 両手ユニゾン弾き |
14 | さよなら(1) (3/4拍子、全12小節3段) | 両手のオクターブ(2) | 同上 |
15 | ジングル・ベル(1) (4/4拍子、全16小節4段) | 両手のオクターブ(3) | 同上 |
16 | 喜びの歌(1) (4/4拍子、全16小節4段) | 両手のオクターブ(4) | 同上 リピート記号間のリピート |
17 | さよなら(2) (3/4拍子、全12小節3段) | 両手の独立 | 右メロディー左伴奏 スラー |
18 | 喜びの歌(2) (4/4拍子、全16小節4段) | 強弱記号 | p、mp、mf、f |
19 | ジングル・ベル(2) (4/4拍子、全16小節4段) | 速度標語 |
|
基本的に見開きで1テーマという形の構成です。左ページ説明、右ページ楽譜ですね。
すべて、伴奏譜が載っています。
「弾く」ということに関しては、まずはメロディーを両手受け渡しで弾く形から始まり、途中から両手奏になります。
進み方は、メロディー受け渡しが11曲あり、両手ユニゾンで4曲弾いた後、右メロディー左伴奏という形(3曲)になります。
この1巻は、右手メロディー左手伴奏という形での両手奏まで進む、ということですね。
左手の伴奏はほとんど動きがありません。全音符(3/4拍子なら付点2分音符)か、2分音符、4分音符しか出てきません。
音も2音のみ。すべてハ長調の曲ですが、ドかソ(主音か属音)だけです。
見やすさはこんな感じ
実際の中身はこんな⇩感じです。
まずは、はじめの説明のページです。
そして、はじめの方の曲の部分。
最後の曲の部分です。説明部分も。
余白がかなり広いのではないでしょうか。混みこみしていない印象です。
個人的には、ある程度枠で囲ってあった方が見やすいような気がするのですが、でも、1ページにいろいろ書かれているよりはずっといい!
楽譜は大きめですね。初心者用ですし。わかりやすいと思います。
「本当に弾ける・・?」不安のある方の初めてのテキストに
大人向けの教本をいくつか持っていますが(ものすご~くたくさんではないですが)、これはかなり分かりやすくまとめられていると思います。
1歩1歩着実に、といった印象ですね。
1巻の内容を要約すると次の様な感じでしょうか・・
- 音域・・・中央ドから上下に3音⇒4音⇒5音⇒5指をそのまま移動。
- 両手弾き・・・メロディー両手受け渡し⇒両手ユニゾン⇒右メロディー左伴奏
- リズム・・・8分音符まで
- すべて5指固定で演奏可能
紙面も余白が多くて見やすいと思います。
CDやDVD付きではないので安い(1冊800円+税)です。
「はじめに」の部分にこうあります。
「頭ではわかっていても、指が動かない」というのが大人の方に共通の悩みです。本書はどの段階でもそのことに十分な考慮を払い、ゆっくりと一歩ずつ着実に進んでいきます。
引用:シニア・ピアノ教本「はじめに」より
著者の橋本晃一さんは、『ピアノひけるよ!』シリーズを始め、多くのテキストや曲集を手掛けられている方。
もう一方の大岩桂子さんは、実は私の元先生ですが、大人のピアノ指導のパイオニア的存在の方です。
私が先生の教室に通っていたのは今からもう20年位前ですが、多くの大人の生徒さんがいらっしゃいました。70代80代というかなり高齢の方まで。
引用にある「頭ではわかっていても、指が動かない」というのは、実際に指導された先生方の実感なのではないでしょうか。
ピアノをやってみたいけど本当に弾けるようになるかな・・と不安に思っている方。
まずは、試しにこの教本から始めてみてはいかがでしょう。
出版元であるドレミ楽譜出版社もどうぞ。
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