ピアノ教室・音楽療法「音楽室ゆう」

長野県北安曇郡池田町にある、小さな小さな街の個人音楽教室です。
ピアノのレッスンと音楽療法の2本を柱に、レッスンを受けられる方の状況にとことん沿った内容で行うことを大切にしています。
障碍や病気をお持ちの方の出張レッスンも、可能な限り対応しています。

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【音楽関連本の紹介】『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』

音楽関連本の紹介
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とってもとっても面白かったこちらの『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム』。

「へ~そうなんだ~」がいっぱいあり、読み物としてまず面白い。

さらには、日ごろの練習のヒントになりそうなことがたくさん書かれています。

ピアノ弾きはもちろん、ピアノの先生、音楽の先生などのみなさんに、ぜひおすすめです。

テーマは「ピアニストとそうではない人との脳の違い」

この本、おおざっぱにいって何が書かれているかというと・・・

「ピアニストとそうでない人との脳の違い」

この一言にまとめられると思います。すご~~くおおざっぱですが。

それを、様々な角度から掘り起こしています。

例えば次のようなこと。

  • 指を動かすこと(動かす速度や左右別々の動き、指1本1本の独立など)
  • 楽譜を読むこと(初見、暗譜、即興など)
  • 体の故障
  • 体の使い方
  • 人に与える影響(感動するということと脳)

こういったことを、様々な実験結果を明示して説明しています。

面白いな~と思ったところはたくさんあるのですが、その中から一部書いてみたいと思います。

 

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ピアノを弾くに適した脳へ変化

まずは、この本の副題「超絶技巧のメカニズム」ということに関してです。

ピアニストはなぜあんなに速く指を動かせるのか。それは指や手の筋力が発達しているからではなく、脳の違いがそうさせているということです。

事実、指や手の力は「ピアニストとそうでない人との違いはない」という実験結果が出されているそうです。(本書P.5)

神経細胞の数が増え大きく!

ピアニストは幼いころからずっと日々ピアノの練習に励んできた人ばかりです。

そうした長年の積み重ねが、ピアノを弾くにふさわしい脳へと変化させているということです。

MRIを使って、ピアニストの脳の運動野(指を動かす神経細胞が集まった部位)の体積を測った研究者がいました。その結果、動かしにくい左手の指の動きをつかさどる脳部位の体積は、音楽家でない人よりもピアニストのほうが大きいことが分かりました。さらに、ピアノを弾き始めた年齢が早い人ほど、この脳部位の体積は大きかったのです。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.12より

 

別の研究では、運動の学習や、力のタイミングの調節に関わっている脳部位(小脳)の体積を、ピアニストとピアノ初心者で比較した結果、ピアニストのほうが小脳の体積が5%ほど大きいうえ、1日の練習時間が長いピアニストほど、小脳の体積が大きいことがわかりました。

(中略)

ピアニストは音楽ではない人よりも、単純に計算すると、小脳の細胞が50億個近く多いということになるわけです。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.12より

左右の手が別々の動きをできるのは⇩こういうこと。

左右の脳のあいだには橋がかかっていて、その橋で情報がやりとりされています。この橋(脳梁)の体積をMRIで調べてみると、7歳より前に専門的な音楽訓練受け始めたピアニストのほうが、音楽家ではない人よりも、体積が大きいことがわかりました。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.30より

小さくなる脳部位も

練習によって発達して大きくなる脳部位がある一方で、小さくなる部分もあるようです。

それは、脳の奥にある大脳基底核の「被殻」という部分。

MRIを用いて被殻の大きさを調べた研究では、この部位が大きい人ほど、演奏するときの指の動きが不正確でバラつくことが報告されています。

(中略)

より正確に演奏できるピアニストほど、被殻は小さいのです。

(中略)

どうやらこの脳部位は、巧みな動作を生み出すうえでは「大きくないほうが良い」ようです。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.14より

なぜ小さいのか、ということはよく分かっていないようですね。はっきりしたことは書かれていません。

脳を省エネして使っている

一般的には、指を速く複雑に動かそうとすればするほど、多くの神経細胞が活動する、ということがわかっています。

でも、ピアニストの脳はそうではないようです。

チューリッヒ大学のヤンケ教授らは、複雑な指の運動をしているとき、運動野の神経細胞がどれだけ多く働いているかを調べました。その結果、同じ速さで同じ指の動きをしているにもかかわらず、活動している神経細胞の数は、ピアニストのほうが、音楽家ではない人よりも少ない、ということがわかったのです。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.8より

複雑な動きをするときには、さらに「高次運動野」が働くことになりますが、そこも、ピアニストはそうでない人よりも使っていない、ということがわかっているそうです。(本書P.9)

そうしたことから、

ピアニストの脳は少ない働きで様々な動きができるようになっている。

そのため、一般の人が難しいと感じることも余力をもってこなすことができ、より複雑で難しい動きができる。

ということだそうです。

やっぱり「練習あるのみ!」らしい

子どものころからの長年の練習で、上に引用して紹介したように脳が変化、進化?したということのようですね。

「うまくなりたいのなら練習!」なんだな、ということがよ~くわかりました。

本書にも書かれていますが、「才能」ではなく「努力」だということですね。(本書P.20~P.21)

ちなみに、「ピアノ(の練習)を始める時期の分岐点は11歳」ということも、実験結果から分かっているようです。本書P.17~P.19に詳しく書かれています。

でも、これらはあくまで「速く複雑な指の動きを可能にするために」ということ。

よい演奏は必ずしもそれだけではありません。

大人になって(11歳以降に)ピアノを始めても、練習次第である程度動かせるようになることがわかっているようですし、大人だからできる演奏というのもありますよね。

こういうことも、本書ではちゃんとフォローされています。(本書P.19~P.20)

 

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ピアニストの体の使い方の秘密

 

この本には、ピアニストが実際に体や指をどう使ってピアノを弾いているのか、ということについてもまとめられています。

ピアニストとピアノ初心者とを比較した実験や、実際の指の動きを研究したものなどです。

「脱力」すればいいというものではない

ピアノを弾くのに「脱力」は大事!とよくよ~く言われます。

ピアノの弾き方のキーワードですよね。

確かにピアニストは、コンサートで疲れも見せずに何曲も演奏したりします。

「脱力」をして、疲れない演奏ができるんだな~と思ってしまいます。

でも、ピアニストはただ単に「脱力」しているわけではないようです。

より良い演奏をできるだけ少ないエネルギーで行えるような「省エネ演奏」をしているということのようです。

そのことを、本書では以下の6つのポイントに分けて解説しています。

  1. 無駄な時間に仕事をしない
  2. フォームを工夫する
  3. 重力を利用する
  4. しなりを利用する
  5. 鍵盤から受ける力を逃がす
  6. イメージから打鍵する

一つ一つについて書かれていることをまとめていくと膨大な量になるのでそれはしません。

詳しくは本書のP.155~P.174までを読んでみてください。

「脱力」は難しい

上に挙げた6つについて、ごくごく簡単にまとめてしまうと・・・

「脱力」だけをしているのではなく、力を入れる部分には入れ、入れない部分には入れず、という、微妙で繊細で細やかな使い方を、その時々の状況に応じて使い分けている

ということになるかと思います。

手だけを使うのではなく、腕、肩など指につながる様々な体の部位を連携させてピアノを弾いているということです。

考えてみれば当たり前。

本当に力を抜いてしまったらピアノは弾けません。入れるべきところには入れないと。

「脱力」とか「指先に重みをのせて」とかというのは”イメージ”なのだと思います。

言葉通りにやっていては、ピアノは弾けないと思うんです。

また、本書には以下のように書かれた部分があります。

実は、筋肉というものは、狙った大きさだけ力を発揮するときよりも、弛めるときのほうが、よりたくさんの脳部位が働くことがわかっています。意外に思えますが、脳にとっては、筋肉を収縮させるよりも弛めるほうが大変な作業なのです。ピアノの先生はよく、生徒に、「脱力しなさい」と言いますが、もしかすると、そういわれた脳のほうは、「簡単に言ってくれるけど……」と思っているかもしれませんね。

引用元:『ピアニストの脳を科学する~超絶技巧のメカニズム~』P.165

力を入れるより抜く方が難しいんですね。

ましてや、ここには入れてこっちは弛めて‥なんて!

なんて高度なことをやっているんでしょう。

とても面白くてためになる1冊

紹介したいと思いつつなかなか記事に取りかかれなかったこの本。

面白いな~と思うところが多く、どうまとめればいいのか・・という状態だったので。

ピアニストに対して不思議に思うことが、実験や研究を通した科学的な目で説明されていて、「なるほど~、そういうことか~」と納得する部分が本当に多いです。

そして、それは自分の練習、ひいてはレッスンで教えるときのヒントになります。

著者の古屋晋一さんは、科学者でありながらピアノ弾き(しかもプロ級)。

こういう研究を始めたのは、「ピアノがうまくなりたい!どう練習すればいいのか」という思いからだったそうです。

だからこそ、的を得た内容でまとめられてるのだな、と思います。

決して専門書ではないので、文章は易しく読みやすい。それもうれしいですね。

もっともっと紹介したいところはありますが、最後に目次を掲載して終わりにします。

ぜひ、手に取ってみてください。

『ピアニストの脳を科学する』目次

第1章 超絶技巧を可能にする脳

  1. ピアニストの指はなぜあれほど速く動くのか?
  2. ピアノの練習は脳をどう変化させるか
  3. イメージ・トレーニングの効果
  4. 左右の手の独立性

第2章 音の動きを変換するしくみ

  1. 耳と指をつなぐ特殊な回路
  2. ミスを予知する脳
  3. ミスを修正する脳
  4. ミスがミスを呼ぶ?

第3章 音楽家の耳

  1. 「良い耳」とはなにか?
  2. 「良い耳」の育て方
  3. 音楽を鑑賞する脳のしくみ
  4. 音楽家の耳の特殊能力
  5. モーツァルトを聴くと頭が良くなる?

第4章 楽譜を読み、記憶する脳

  1. 楽譜を読むという能力
  2. 「暗譜」のメカニズム
  3. 初見演奏の秘密
  4. 即興演奏を可能にする脳の働き

第5章 ピアニストの故障

  1. ピアニストの3大疾病
  2. 変化しすぎた脳
  3. フォーカル・ジストニア発症の危険因子
  4. フォーカル・ジストニアの治療法
  5. その他の疾患
  6. 故障を防ぐためには

第6章 ピアニストの省エネ術

  1. 疲れ知らずのピアニスト
  2. ピアニストの省エネ術

第7章 超絶技巧を支える運動技能

  1. 手指の巧みな動きの秘密
  2. 超高速かつ高精度な打鍵を可能にするスキル

第8章 感動を生み出す演奏

  1. 音色を操る
  2. 音量を操る
  3. 音楽の微細な表情を操る
  4. 表現のための身体の使い方
  5. 「感情を込めて演奏する」とは?
  6. 音楽に感動する脳
  7. 音楽を使った脳神経リハビリ―音楽療法の最前線

 

 

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