日々のレッスンでは、基本的に、曲を弾くテキストとともに楽典のワークに取り組んでもらっています。
それはなぜか。
楽譜を書けるようになってほしいからです。
もちろん、楽譜に書かれていることの意味などをきちんと理解するため、ということもあります。
でも、最終的に目指すのは、楽譜を書けるようになることです。
楽譜を読めてピアノを「弾ける」だけでは片手落ち
ピアノのレッスンの目的は、将来的に自分だけの力で楽譜を読んで弾けるようになることだと考えています。
なので、レッスンを始めた早い段階から、楽譜上の音符の読み方を学ぶことをしていくことになります。
そして、同時にリズムを読み取ることもしていきますね。
拍子のとり方、音符一つ一つの意味などを覚えていきます。
楽譜に書かれたドレミ~が読めるようになり、リズムがとれるようになれば、一応は楽譜を見て自分で弾くことはできるようになります。
もちろん、楽譜に書かれている様々な記号の意味を覚えたり、フレーズを読み取ったり曲の構成を理解したり。
そうしたことも弾くためには必要で、それらも順次学んでいくことになります。
でも、それではまだ片手落ちだと考えています。
楽譜を「書く」ことでより深い理解を
私の教室では、多くの子に楽典のワークに取り組んでもらっています。
ワークを行う目的は、
- 実際に書くことでより深く理解する
- 実際に書くことで書けるようにする
この2つです。
取り組んでいる曲の中で、楽譜を見ながら理解をしていくことはできると思います。
でも、「書く」という動作を加えることで、より深く理解することにつながります。
その音符を「書く」そして、その音符の意味を「書く」。
手を動かして「書く」ということは、そのことを認識していなければできません。
そのひと手間を加えることで、しっかりと意識の中に落とし込むことができます。
そして、ワークの中で様々な問題に何度も取り組むことで、音符や記号そのものを書けるようになっていきます。
この「書けるようになる」ということを、とても大切なことと考えています。
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読めるけど書けない!
読めるけど書けない、ということ、普段の生活の中でもありますよね。
例えば漢字。
複雑な字やあまり使わない字などは、読むことはできるけれど書けといわれると・・ということはよくあります。
それに、近頃はメールなど打ちこんでしまうことが多く、字を書く機会が減ったために書けなくなってきているともいわれます。
楽譜も同じ。読むことしかしていないと書けないんです。
楽譜はスラスラ読むことができる。じゃあ、それを書いてみよう、と思うとできないです。
ト音記号など簡単な記号でも、普段書いていなければ正確に書くことはできません。
ましてや、少々複雑なリズムなど、えっ!?とびっくりするくらい、どう書いていいのかわからないものです。
ちゃんとリズムを読み取ることはできても、です。
私自身が書けなかった
私の子ども時代のレッスンは、もう30年以上昔です。
そのころに受けていたピアノレッスン、ワークなんてやった覚えはありません。楽譜を見て弾くことのみ。
私自身が「楽譜を書く」ということをしたのは、中学の部活動で出会った吹奏楽でのことです。
その中で、写譜を何度もすることになりました。
きちんとワークで理論的に学んだのは、大人になってからのレッスンです。
ト音記号を書くことから始まり、実際に楽譜上の記号などを書くことを一から学びました。
写譜の経験があったので、複雑なリズムでも、こう書くんだ、とわりとすんなり理解できました。
それがなかったら苦労したかも、と思います。
「読めるけど書けない」をなくしたい
ピアノをやってきたから楽譜はスラスラ読めるけど、書くことはできない・・
せっかく音楽をやってきたのに、これではちょっと悲しい気がします。
日本人なのに、こんな漢字も書けないなんて・・
こんなことに遭遇すると、結構ショックですよね。
それと同じでは、と思います。
「読めるし書ける」
これでこそ本物ではないかと思うのです。
今、レッスンの中でワークに取り組んでもらうのは、
「楽譜に書かれていることの意味をしっかりと理解して、より深くその曲を感じてほしい」
ということとともに、
「楽譜を書く技術を身に付けてほしい」
と考えているからです。
楽譜を書くことができれば、頭に浮かんだメロディーを楽譜に起こす、ということができます。
また、既成の曲を弾きやすくアレンジする、ということもできますね。
(より複雑なアレンジをするためには、調性やコードなどの知識も必要になりますが)
書くことができると、楽譜を読んで演奏する、ということにとどまらない、音楽を楽しむ幅が広がります。
今は、パソコンのソフトなどで楽譜を使わずに作曲できるものもありますね。
なので、楽譜を書く能力は、作曲したりアレンジしたりしたい人にとっても、必ずしも必要なことではないかもしれません。
でも、せっかく音楽をやっているんだから、楽譜を読めるだけじゃなくて書けるようにしよう!
なんでも機械頼みではなくて、ペンと紙さえあればできる!
そういうアナログの力は強みになるのではないかな。
レッスンに来ている子どもたちには、ぜひこうなってほしいと考えています。
(公開日:2016年10月25日 最終更新日:2022年12月16日)

→教室で使っている楽典の総合ワーク『ジュニアクラスの楽典問題集』を紹介しています。

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