私の教室はピアノレッスンと音楽療法の2つの柱で運営をしています。
そのためか、発達障害のある子がピアノレッスンにも通ってきてくれています。
これまで、小学生から高校生までの子とかかわってきました。
レッスン上の悩みの尽きない子もいれば、ごくごく一般的なレッスンをしている子もいれば・・
いろいろです。
そんな、発達障害をある子のピアノのレッスンで、私自身が大切にしていることを書いてみようと思います。
「発達障害」といってもそれぞれ 障がいの違いと性格の違いも見極めて
「発達障害」と一口に言っても、症状のあらわれ方は様々です。
それに加えて、その子一人一人が個性を持っています。
「この子は発達障害児だ」とひとくくりにしないことが、まずは最も大切なことだと考えています。
発達障害の種類は?同じ障害名でも一人一人違う だから・・
発達障害とは、「発達障害者支援法」によって次のように定義されています。
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
発達障害者支援法 第一章 総則 第二条(定義)
主に以下の3つの種類があります。
- 広汎性発達障害(自閉症やアスペルガー症候群など)
- 注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
- 学習障害(LD)
私の教室では、これまで、広汎性発達障害、AD/HDのある子が通ってきています。
それぞれの障がいの特徴を持ちつつも、現れ方の度合いは様々です。
同じ障害名がついていても、それぞれ違うんです。
そして、性格の違いもあります。
一人として同じ子はいない、ということを肝に銘じておかなければいけないと思っています。
その上で、
- 言葉の選び方
- 話しかけ方
- 課題の提示の仕方
- レッスン内容の進め方
などに細心の注意を払って、レッスンを行うように心掛けています。
例えば・・
- 「今から〇〇をやります」など、言葉を最小限にして明確に伝える。
- 言葉で伝えるより、実際にやって見せる。
- 本人が弾いているときに横から口を出さない。
- しっかり顔を見て、「あなたに伝えている」ということを分かりやすくする。
などなどなど・・・
これらのどれもをしているわけではなく、ひとりひとりによって違います。
横から口を出しても全く問題ない子もいますし、しっかり顔を見なくても自分に話していると分かる子もいます。
本当にそれぞれだと感じています。
「発達障害がある」というのは、その子の重要な情報ではありますが、すべてではありません。
それに縛られるのはとっても危険。
定型発達の子だって、上に挙げたような関わり方が必要な子もいます。
男の子だとか女の子だとか、何年生だとか・・
そういうことにも縛られないようにしたい、と考えていますが、それと同じ。
発達障害特有の症状があるのは事実ですが、「発達障害を持っているから」という一括りの見方をしないようにしたい。
その子自身を一個人としてしっかりととらえ、その子にあった関わり方を工夫するようにしたい、と思っています。
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発達障害の「二次障害」に十分注意して
発達障害を持つ子にかかわる場合、十分に配慮しなければならないのが「二次障害」だと考えています。
発達障害の「二次障害」について
理解不足により、否定的な評価や叱責等の不適切な対応が積み重なると否定的な自己イメージをもったり自尊心が低下したりする
発達障害教育情報センター研修講義「二次障害」の理解と対応 より
そのことによって、情緒の不安定、反抗的な行動、深刻な不適応 の状態等を招くことがある
*こちらのリンクは、現在は発達障害教育推進センターのトップページへ飛びます。
何気ない一言が深く傷つけてしまうことも!
発達障害を持つ子たちは、定型発達の子たちが当たり前のようにできることが、とても難しいことであったりします。
なので、「何でこんなことができない?」「えっ?これそんなに難しい?」などの言葉は絶対に使わないよう注意しています。
また、「そんなにダラダラしてるからできないんだよ」「もっと集中しなさい!じゃないとできないよ」などの言葉も。
しっかりと姿勢を保つことが難しかったり、集中しづらかったりすることそのものが、障がいの特徴である場合も多いです。
自分自身でどうにかなるものでないことを否定的にみられることが重なると、「二次障害」に結びついてしまう。
軽い気持ちで言った一言が、ものすごくその子を傷つけることになる場合がある。
言葉の使い方ひとつも、とっても大事にしなければいけないと思っています。
自信のない子が多い・・
発達障害を持つ子は、自分に自信のない子が多いように思います。
「えっ⁉こんなことで?」と思うようなことに落ち込んでしまって、レッスンが進まなくなってしまった経験が何度かあります。
思いもよらないことに傷ついてしまうんです。
それは、私自身の感覚では、計り知れないことだったりします。
それだけ、心に受けてきた傷が深い、ということだと思います。
子どもの心に深く寄り添うことのできる洞察力が、とても必要だと感じています。
「信頼関係」が大事 それはとても時間がかかることも
発達障害の特に広汎性発達障害とAD/HDは、コミュニケーションに課題を抱えている場合が多くありますね。
なので、初めて会う相手には、とても警戒心が強いと感じます。
こちらは何とか関わりを持ちたくて、いろいろと話しかけたりしますが、だんだん背を向けられてしまう。
私が、やってみようと声をかけたこととは、違うことをされてしまったり。
初めての場所、初めての相手に慣れるまでにとても時間がかかる、ということも障がいの特徴の一つです。
なので、初めはコミュニケーションがうまくいかないのは当たり前、だと思っています。
でも、コミュニケーションが成立しないと、なかなかレッスンが難しいのも事実。
そうしたことから、まず私を信頼してもらうことを目的において、「ピアノを学ぶ」ということはひとまず置いておく、ということは往々にしてあります。
それが半年に及ぶことだって、ざらにあることです。
でも、信頼してもらって「この人のいうことならやってみようかな」と思って自ら動くようになれば、レッスンはきちんと成立します。
それに、そうでなければ、ただやらされているだけ、になってしまいます。
まずは私を信用してもらうこと。
これも大切にしていることの一つです。
発達障害があってもなくても
「障がいのある子がレッスンに来ている」と話すと、驚かれることがあります。
福祉関係者にも、そのような反応をされたことがありました。
でも、定型発達の子がピアノを習いたいと思うのと同じように、当たり前のことです。
私の教室に来ている発達障害を持つ子は、みんなはっきりと「ピアノが弾けるようになりたい」と言います。
ピアノはとっても身近な楽器です。
音楽が好きなら、弾けるようになりたいと思うのは不思議なことではないですよね。
そのことをきちんと受け止めて、「弾けるようになる」レッスンをしていかなければと思っています。
(公開日:2016年8月19日 最終更新日:2024年6月19日)
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