今回は、『おとなのためのピアノ教本』を紹介します。
こちらは、ピアノ初心者用の教本ではありますが、「少し経験がある」とか「ブランクがある」といった方向けかなと思います。
ピアノ、ましてや楽器は全く初めてという”超初心者”には、少し難しいかもしれません。
1巻~5巻までありますが、今回は1巻についてまとめてみます。
どのくらいのレベルから始まって、どのくらいのレベルまで進むのか。
教本選びの参考にしていただければと思います。
チェック→CD付きもあります。
『おとなのためのピアノ教本』とは
まずは、『おとなのためのピアノ教本』はどんなものなのかをまとめます。
初版は1992年。ドレミ楽譜出版社から販売されています。
もう30年ほど前になりますね。
1992年といえば、”大人のピアノ”がブームになったころでしょうか。
大人初心者向け教本の先駆けといえますね。
著者は橋本晃一さん
著者は橋本晃一さん。
子ども向け導入教材『ピアノひけるよ!』シリーズや、そのほか多くの教本や曲集を手掛けている方です。
こちら⇓で経歴やお人柄が分かります。
参考→PTNA「ホームページ 「さどはら知子のわくわくポピュラーガイド」橋本晃一さん
全5巻の難易度は?
『おとなのためのピアノ教本』は全5巻から成っています。
難易度は以下の通り。
グレードの比較 伴奏づけのコード
第1巻 バイエル前半程度 主要三和音
『おとなのためのピアノ教本』「本書の内容について」より
第2巻 バイエル後半程度 マイナー・コード
第3巻 ブルクミュラー程度 セブンス・コードなど
第4巻 ソナチネ・アルバム程度 ナインス・コードなど
第5巻は、第4巻までに習得した技術や知識を定着・発展させるためのレパートリー曲集にあたり、グレードはソナチネ~ソナタ・アルバム程度です。
「伴奏づけのコード」とあるように、調やコードについても順次学んでいく内容になっています。
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特色は?
特色として打ち出されているのは、「すぐに知っているメロディが弾ける」ということですね。
「はじめに」にも書かれていますし、教本の宣伝文にもこのように書かれています。
でも大人向けの教本って有名曲で練習していくものがほとんど。
出版当時は画期的だったのかな?
「はじめに」を引用してみます。
最初から楽しく弾ける、すぐに知っているメロディが弾ける、1曲進むごとに新しい知識と技術が身につく、クラシックが弾ける、ポピュラーも弾ける、気がついたらあこがれのショパンが弾けるようになっていた。
「そんなことができたらいいけど……」と思われる方は、この本にトライしてください。
『おとなのためのピアノ教本』「はじめに」より
5冊をみっちりやればソナチネ~ソナタくらいまで進むようになっています。
そのくらいまで弾くことができれば、きっとショパンも弾けますね。
また、この教本執筆のために多くの教本を参考にしたようです。
「本書の内容について」に以下のように書かれています。
本書のカリキュラムを組むにあたっては、手にはいるかぎりの資料を集め、比較研究いたしました。中でも、座右の書として特に参考にしたのは次の各教本です。
J.Bastien;The Older Beginner Piano Course(バスティン・年長者のためのピアノ入門)F.Bryer;Vorschule in Klavierspiel(バイエル・ピアノ教則本)
『おとなのためのピアノ教本』「本書の内容について」より
J.Tompson;Adult Preparatory Piano Book(日本語版未出版)
J.Tompson;Modern Course For The Piano(トンプソン・現代ピアノ教本)
様々な教本の研究を重ねた上に出来上がっているとのこと。
こうしたことも特色の一つかなと思います。
『おとなのためのピアノ教本1』1曲目に入るまでに
それでは、『おとなのためのピアノ教本1』について詳しくまとめていきます。
まずは、練習の曲1曲目に入る前まで。
初心者用のテキストということで、1曲目に入るまでに基本的なことが抑えられています。
内容は次の通り。
- ピアノの鍵盤(1ページ)
- 楽譜の読み方(見開き2ページ)
- 右手の練習(1ページ)
- 左手の練習(1ページ)
詳しく見ていきます。
「ピアノの鍵盤」
まずは、ピアノの鍵盤について。
ピアノの鍵盤の写真が3枚あり、「ドレミ」と書かれたものと「ファソラシ」と書かれたものがあります。
黒鍵の並び方から音を探す、探し方の説明になっています。
「楽譜の読み方」
見開き2ページで楽譜の読み方についてまとめられています。
- 五線
- ト音記号とヘ音記号
- 小節線と小節
- 音符と休符
- 拍子記号
- 指番号
以上6点について書かれています。(とくに項目で分けられているわけではありません)
まずは、五線、ト音記号とヘ音記号、小節、小節線、終止線という名前について。
そのあと、4分音符、2分音符、全音符、そして、4分休符、2分休符、全休符の説明があります。
拍子記号については、2/4拍子、3/4拍子、4/4拍子の拍子の取り方の説明です。
最後に指番号。左右の手に番号が書き加えられた写真が載せられています。
「右手の練習」
ここから、実際に弾いていくことになります。まずは右手から。
始めに、弾くときの手の形の説明と、鍵盤と楽譜との対応図があります。
そのあと、ト音記号の4小節の楽譜が載っています。
使う指は指番号1,2,3、音は中央ドからドレミ。使われているのは、4分、2分、全音符。
4/4拍子で、拍を数えるための数字が書かれていて、指番号もついています。
「左手の練習」
次は左手です。
「右手の練習」と同じように、左手指番号1,2,3を使って4小節の楽譜を弾くようになっています。
音は中央ドの下のミファソです。楽譜はヘ音記号ですね。
鍵盤と楽譜の対応図には、右手ドレミの位置も書かれています。
これで左手で弾く位置が分かりやすいですね。
「指番号3、2,1で、ミファソを弾く」
ということは、動かす指は、右は1,2,3の順ですが、左は3,2,1の順になるということですね。
これって、初心者にとっては大きなことのように思います。動かす指が左右で違うということなので。
チェック→CDつきもあります。
『おとなのためのピアノ教本1』進み方はどうなってる?
この後1曲目に入ることになります。どんな曲でどのように進んでいくのかを見てみます。
収録曲は?
まずは、どんな曲でレッスンをするのか、掲載されている曲をまとめます。
- 月の光に(フランス民謡)
- 鐘が鳴る(フランス民謡)
- ジングル・ベル(ピアポント)
- さよなら(イギリス民謡)
- 喜びの歌(ベートーベン)
- かえるの合唱(ドイツ民謡)
- 河はよんでいる(ビート)
- 聖者の行進(アメリカ民謡)
- 思い出(ベイリー)
- ロンドン橋(イギリス民謡)
- ローレライ(ジルヒャ―)
- 漕げよマイケル(アメリカ民謡)
- おんまはみんな(アメリカ民謡)
- はじめてのブルース(橋本晃一)
- きらきら星(フランス民謡)
- ユー・アー・マイ・サンシャイン(J.デイビス&C.ミッチェル)
- かっこう(ドイツ民謡)
- かわいいあの子(インドネシア民謡)
少し難しくなって再登場、というものもありますが、曲としては全18曲です。
「弾く」ことに関する進み方
「弾く」ということに関する進み方は、以下のような感じですね。
- メロディーを片手ずつ弾く
- メロディーを両手で弾く(両手ユニゾン)
- 右手メロディー左手伴奏(単音)
- 右手メロディー左手伴奏(三和音)
- 右手メロディー左手伴奏(アルペジオ)
- 右手メロディー左手伴奏(ズンチャッチャ系)
子どもの導入教材によくある「左右でメロディー受け渡し」という形はありません。
初めから左右それぞれでメロディーを弾きます。
次に両手ユニゾンがありますが、曲は「ジングル・ベル」1曲のみです。
すぐに右手メロディー左手伴奏になります。
(後半にト長調とヘ長調が出てきますが、その時に両手ユニゾンで弾きます。)
伴奏部分は、単音→三和音→アルペジオ→ズンチャッチャ系(呼び名は?)といろいろ経験することになります。
この様々な伴奏形を弾く中で、コードや調を学んでいきます。
その都度丁寧に説明されています。
終わりの方には、ハ長調、ト長調、ヘ長調の主要三和音と属七の和音が出てきます。
なお、楽譜はすべて大譜表です。一番最初に説明があります。
音域の広がり方
音域の広がり方は、以下の通りです。
- 右:中央ドからドレミ 左:中央ドの1オクターブ下のドの上のミファソ
- 右:中央ドからドレミファソ 左:中央ドの1オクターブ下のドレミファソ
- ト長調、ヘ長調の始めの5音
この『おとなのためのピアノ教本』は、「中央ドから上下に広がる」という音域の広がり方をしていません。
「中央ドから上下に広がる」という形では、左右で音は違いますが使う指(指番号)は同じになります。
でも『おとなのためのピアノ教本』は、1オクターブ違う場所のドレミファソを左右それぞれで弾きます。
そのため、「音は同じで使う指(指番号)は違う」という形になっています。
これが、大きな特徴の一つです。
そして、すぐに5指(つまり5音)を使うことになり、「5指をそのまま移動させて調を変える」という形をとっています。
そうした方法で音域を変えることで、同時に調を学ぶわけですね。
各調の始めの5音(ハ長調ならドレミファソ)のみを使って曲を弾くことになるので、どの曲も5指固定で弾くことは可能です。
つまり、指くぐりなどは出てこないということです。
リズム、拍子について
使われている音符は、
- 4分音符
- 2分音符
- 全音符
- 付点2分音符
- 8分音符
- 付点4分音符
まず、4分、2分、全音符が一度に出てきて、そのあと付点2分、8分、付点4分音符が順次加わります。
休符は、
- 4分休符
- 2分休符
- 全休符
- 8分休符(特に説明なく1ヵ所のみ)
が出てきます。
付点4分音符+8分音符のタ~ンカのリズムが難しいといえるかもしれませんが、全体的にリズムは易しいですね。
拍子は、
- 4/4拍子
- 3/4拍子
- 2/4拍子
- 2/2拍子
の4つです。
2/2拍子(1曲のみ)のノリが少し難しいかもしれません。
記号について
出てくる記号は以下の通り。
- スラー
- リピート
- 1番かっこ2番かっこ、繰り返し記号
- タイ
- 速度標語
- Andante、Andantino、Moderato、Allegretto、Allegro
- 強弱記号
- p、mp、mf、f
- ♯、♭
- アクセント
- クレッシェンド、デクレッシェンド
この順序で出てきます。
速度標語、強弱記号はすべてまとめて記載されています。
後ろへ進むほど記号が出てきますが、基本的なものばかりで、全体としては難しいものはありません。
チェック→CDつきもあります。
『おとなのためのピアノ教本1』楽譜の様子はこんな感じ
紙面の様子についてもまとめます。
五線の幅は8㎜ほど。大きすぎず小さすぎずという感じでしょうか。
余白は広くとってありますね。必要なことが簡潔に書かれている印象です。
終わりの方へ行くにしたがって混みこみした感じになりますね。
曲が難しくなりますので、使われている音も多くなるので。
基本的に、「説明⇒練習曲⇒楽曲」という構成になっています。
チェック→CDつきもあります。
『おとなのためのピアノ教本1』まとめ ”超初心者”には難しい
この『おとなのためのピアノ教本』はピアノ初心者用の教本です。鍵盤上のドの場所の説明や弾き方から始まります。
でも、すぐに両手奏になり、コードや調を学んでいきます。
というところでは、「全くピアノに触れたことがない」「ピアノどころが楽器をやるのが初めて」という方には難しい教本だと思います。
でも、「多少楽譜が読める」「少しはピアノ経験がある」「ブランクがある」という人にはちょうど良いのではないでしょうか。
はじめの基本的なところはすっ飛ばして、どんどん進んでいけるのでは。
しっかりやって進めていけば、ソナチネくらいまで弾けるようになる、ということなので、期待が持てますね。
ピアノは全く初めてという方には『シニア・ピアノ教本』があります。
関連記事→『シニア・ピアノ教本』について詳しく紹介しています。
こちらは『おとなのためのピアノ教本』をさらに分かりやすくしたものです。
音域は中央ドから上下に広がる形で、左右でメロディー受け渡しから始まります。
コードや調についての内容は、2巻に入ってからです。
関連記事→『おとなのためのピアノ教本』と『シニア・ピアノ教本』を比べた記事も書いています。
ぜひ参考にしてください。
(公開日:2018年2月7日 最終更新日:2024年10月24日)
⇩CD付きもあります。
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