小さな子向けの、分かりやすいスケールのテキストはないか、と思い探す中、この『こどものおんかいれんしゅう』を見つけました。
指使いの練習から始めて、ゆっくりていねいに進めていける内容で、レッスンを始めた初期の段階から使ことができます。
自分の出す音に注意を向けて、集中して弾くことが大事にされています。
「原田敦子 ピアノ基礎テクニック」シリーズの1冊
この『こどものおんかいれんしゅう』、著者は原田敦子さん。
数々のテキストや曲集を出されていて、指導者向けの講座の講師もされている方ですね。
その著書に「原田敦子 ピアノ基礎テクニック」シリーズがあります。
全部で7冊となるこのシーリーズの中の1冊が、『こどものおんかいれんしゅう』です。
参考記事→『毎日の練習 12ヶ月Vol.1』はこちらで紹介しています。
『こどものおんかいれんしゅう』目的は”集中力”

この『こどものおんかいれんしゅう』、副題は”集中力を育てる”となっています。
本書の「はじめに」にも、著者である原田敦子さんが以下のように書いています。
重大な特徴は、音楽表現の土台として欠かせない、注意力、集中力を養うことを、第一の目標にしている点にあります。
音色に注意する注意力、心に感じているとおりに表現しようとする集中力は、学習する音の少ない時点から養われなければなりません。鍵盤から弾き出される一音一音に、心を寄りかけさせる学習は、生徒の音楽生活を決定するほどに大切な訓練です。
『こどものおんかいれんしゅう』「はじめに」より
自分の気持ちや様々なイメージを持って曲を演奏しようとすると、とっても集中力が必要になるのは、言うまでもありませんよね。
自分の出した音に敏感になるために、ピアノを始めたばかりのころから、集中して弾く、ということをしっかり経験していこう、という考えで作られています。
『こどものおんかいれんしゅう』内容の紹介
それでは、具体的な内容を紹介していきます。
音階はどこまで載っている?
本書は”おんかいれんしゅう”なので音階(スケール)が載せられているわけですが、全調ではありません。
掲載されている音階は、♯2つ、♭3つまでの調です。
以下は、記載順序です。
- ハ長調・イ短調
- ト長調・ホ短調
- ヘ長調・ニ短調
- ニ長調・ロ短調
- 変ロ長調・ト短調
- 変ホ長調・ハ短調
調号なし→♯1つ→♭1つ→♯2つ→♭2つ→♭3つの順番ですね。
なお、短調は「旋律的短音階」になっています。
各調の練習順序は?
それぞれの調をどのように学んでいくかというと・・
- 指使い
- 音階
- カデンツ
の順に進みます。
指使い
まずは「指使い」から。片手ずつ弾きます。
上行の指使い→下行の指使いという順序で進みます。
掲載の仕方は、左ページは左手、右ページは右手という形の見開き2ページになっています。
上行の指使いで、見開き2ページ
下行の指使いで、見開き2ページ
ということですね。
指使いの練習順序は、まず初めに、指くぐり、指またぎの部分を弾き、だんだん音域を広げ1オクターブ弾く、という形です。
リズム練習も2つ載っています。
4分音符+8分音符2つ(タンタカ)、付点4分音符+8分音符(タ~ンカ)のリズムですね。
進め方として、著者は以下のように述べています。
これから弾こうとする音を、弾く前に歌うように指導してください。歌った音を想像してから、鍵盤を押さえる習慣を養います。
『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
ピアノの練習で「歌う」ってとても大事ですよね。
一度声に出してしっかりと分かったうえで、それと同じ音が出せているかよく聴く、ということですね。
弾く前にひと作業置くことで、弾くときに集中することができますね。
音階
そのあと、1オクターブの音階を弾くことになります。
上行、下行を続けてて弾くということですね。
右手、左手それぞれ一段譜で書かれていて、片手ずつ弾くようになっています。
楽譜には、クレッシェンド、デクレッシェンドが書かれています。
ページの下部に、練習楽譜が載せられていますが、長調と短調で少し内容が違います。
長調の方は・・
5/4拍子の楽譜や、8分音符(4/4拍子)で書かれている楽譜があります。
こちらには、クレッシェンド、デクレッシェンドに加えて、アクセントも書かれています。
短調の方は・・
4/4拍子で、4分音符+8分音符の楽譜です。
「ラーシドレミファソ|ラーソファミレドシ|ラー(2分音符)」
「ラシドレミファソー|ラソファミレドシー|ラー(2分音符)」
の2つです。
こちらも、クレッシェンド、デクレッシェンド、アクセントがつけられていますね。
短調は、旋律的短音階のみです。
この内容で、長調、短調それぞれ1ページにまとめられています。
ここの部分について、著者は・・
初期の段階では、正確なリズムの演奏を目指すのではなく、指番号の、より深い認識を目指す再学習と考え、遊びのような雰囲気で楽しい練習になるよう、配慮してください。
『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
覚えた指使いをいろいろな形で弾いてみる、ということですね。形が変わっても弾けるよう、しっかり考えながら弾くことが大切になりますね。
アクセントの弾き方についても、
アクセントは心の強調と考え、指をきゅっと引き締める程度にしてください。決して、大きな音で打ちつけたりしないよう、気をつけて練習してください。
『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
とあり、指先へ意識を集中することが大切に考えられています。
カデンツ
そして、最後にカデンツのページがあります。
「ドミソ」「ドファラ」「シレソ、シファソ」
の3つに分けて楽譜に書かれていて、
ドミソ→ドファラ→シレソ→ドミソ
の順で弾く楽譜があります。
楽譜はヘ音記号のみで、左手で弾くようになっています。
和音で弾くようにはなっていません。アルペジオの形ですね。
こちらも、ページの下部に練習楽譜が載せられていて、長調と短調で少し違っています。
まず長調。
6/8拍子、5/4拍子、7/4拍子の3つの楽譜があります。
ただ「ドミソ」と弾くだけではなく、
「ドミソ ドミソ」(6/8拍子)
「ドミソドミ」(5/4拍子)
「ドミソドミソミ」(7/4拍子)
と、様々な形で弾くようになっています。
短調の方は・・
3/4拍子、7/4拍子、9/8拍子の3つの楽譜です。
3/4拍子は、4分音符で「タンタンタン」と弾いていきます。
7/4拍子は、4分音符+2分音符で1小節を「タンタンタ~~ン(2分音符) タンタンタン」と弾く形です。
9/8拍子は、8分音符+4分音符で1小節を「タカタ タカタ タタン(4分音符)」と弾くようになっています。
カデンツは、伴奏の意味合いで書かれています。
メロディを引き立てる伴奏の、最も簡素な音形での練習を提案しています。初回は、必ず、先生が手を添えて、歌いながら心のふくらみを大切に学習してください。
『こどものおんかいれんしゅう』「先生方に」より
ただ漠然と弾くのではなく、「ハーモニーの流れを感じながら弾く」よう書かれていて、やはり、音を想像して集中して弾くことが求められています。
『こどものおんかいれんしゅう』まとめ
小さな子ども向けのスケールのテキスト『こどものおんかいれんしゅう』。
音階は、音楽の根幹をなす大切な要素です。
その音階を、どんな音を出そうかと意識を集中させて弾くことは、重要な練習ですね。
音階って難しい・・と敬遠されがちだし、教える側としても、ピアノを始めたばかりでまだ早い、と思ってしまいがち。
こうしたテキストを使いながら、早い段階から弾いていくことは大事だな、と感じました。
(公開日:2019年12月3日 最終更新日:2025年3月21日)
もう少しレッスンの進んだ人向けにはこちら⇩があります。
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