『おとなのためのピアノ教本』と『シニア・ピアノ教本』。どちらも大人向けピアノ導入教本です。
でもこの2つはちょっと違い、『おとなのためのピアノ教本』を簡単にしたものが『シニア・ピアノ教本』という位置づけで作られています。
当ブログでも
- 『おとなのためのピアノ教本』・・・ちょっと経験のある人向け
- 『シニア・ピアノ教本』・・・全くの初心者向け
として、内容を紹介しました。


今回は、もう少し具体的にどこがどういう風に違うのかをまとめてみようと思います。
『シニア・ピアノ教本』は導入部分のみ

と上に書きましたが、『シニア・ピアノ教本』の「はじめに」に以下のようにあります。
すでに定評をいただいている拙著「おとなのためのピアノ教本」全5巻の導入部分を、よりやさしく、どなたにも無理なく進めるように改編したものです。
引用:『シニア・ピアノ教本』「はじめに」より
ピアノの導入部分というと、一般的にはバイエル終了くらいまで。
『おとなのためのピアノ教本』は、第4巻まででソナチネ・アルバム程度まで進むとされています(5巻はソナチネ~ソナタ・アルバム程度の曲集です)。
なので、「バイエル終了」というと第2巻までになりますね。
ということは、
となりますね。
『おとなのためのピアノ教本』で第2巻までで終わらせている内容を、『シニア・ピアノ教本』では全3巻にわたって書かれているということです。
詳細記事→『おとなのためのピアノ教本』をこちらで詳しく紹介しています。
詳細記事→『シニア・ピアノ教本』をこちらで詳しく紹介しています。
『おとなのためのピアノ教本』『シニア・ピアノ教本』進み方はどう違う?

『おとなのためのピアノ教本』1、2巻分の内容を『シニア・ピアノ教本』3巻に分けて、ということは、進み方がゆっくりだということですね。
具体的に何がどう違うのかを見ていきます。
1曲目に入るまでが違う
『おとなのためのピアノ教本』、『シニア・ピアノ教本』のどちらも、1曲目に入るまでにピアノの鍵盤や楽譜の読み方など、基本的な事柄が抑えられています。
でもやっぱり『シニア・ピアノ教本』の方が少し丁寧ですね。
どのへんが・・?
- 図や写真が少し多い
- 説明文が少し丁寧
- 楽譜や文字が大きめ
こんなところでしょうか。
例えば・・・
【鍵盤の説明】
- 『おとなのためのピアノ教本』は鍵盤の写真
- 『シニア・ピアノ教本』は、鍵盤の図
図の方がコントラストがはっきりしていて分かりやすいですね。
【弾くときの手の形】
- 『おとなのためのピアノ教本』は良い形の写真1枚
- 『シニア・ピアノ教本』は良い形+良くない形の写真2枚
そして、『シニア・ピアノ教本』は、文字や楽譜が全体的に大きめです。
そのため、『おとなのためのピアノ教本』では5ページに収められている内容が、『シニア・ピアノ教本』では6ページになっています。
また、紙質も違えているようです。
『シニア・ピアノ教本』は真っ白なのに対して、『おとなのためのピアノ教本』は少し黄色っぽい感じです。
こういうことも、見やすさに大きく関係してくるのではと思います。
あえて変えたのではないかな。
音域の広がり方が違う
ピアノの導入の際に重要なことの1つに「音域の広がり方」が挙げられると思います。
これが、2つで大きく違っています。
まとめると以下の通り。
- 『おとなのためのピアノ教本』
- 右手:中央ドレミ(指番号1,2,3) 左手:中央から1オクターブ下のミファソ(指番号3,2,1)
- 右手:中央ドレミファソ(指1,2,3,4,5) 左手:中央から1オクターブ下のドレミファソ(指5,4,3,2,1)
- 5指を移動させて調を変える(ヘ長調ならファソラシド)
- 左右とも指くぐりをして音階を弾く〈第2巻〉
- 『シニア・ピアノ教本』
- 右手:中央ドレミ(指1,2,3) 左手:中央ドに向かってラシド(指3,2,1)
- 左右とも4の指が加わる(右ドレミファ、左ドシラソ)
- 左右とも5の指が加わる(右ドレミファソ、左ドシラソファ)
- 右:レミファソラへ移動
- 左:ドレミファソへ移動(中央ドの1オクターブ下)
- 右:曲途中での移動(ドレミファ⇒上のソラシド)〈第2巻〉
- 右:指替えや指くぐり〈第2巻〉
- 右:各調の音階を弾く〈第2、3巻〉
- 右:中央ドの1オクターブ上のドレミファソ〈第2巻〉
- 左は新しい調に入るとともに5指移動させてコードを弾く〈第2,3巻〉
音域の広がり方は以上のようになっています。
『おとなのためのピアノ教本』は3指⇒5指ですが「中央ドから上下に広がる」形ではなく、右ドレミ、左は右の1オクターブ下のミファソから始まります。
一方『シニア・ピアノ教本』は、「中央ドから上下に広がる」形で、右ドレミ、左ドシラ(ラシド)からスタートです。
そして、『おとなのためのピアノ教本』はすぐに5指を使いますが、『シニア・ピアノ教本』は1つづつ増えていきますね。
5指を使うようになると、メロディーを弾く右手のみ指替えや指くぐりをして音域をひろげていきます。
左はコードを弾くことが基本で、調が変わるとともに5指を移動させていく、という形をとっています。
『おとなのためのピアノ教本』は、5指で調の始めの5音のみを弾きますが、2巻に入ると左右とも指くぐりをして、各調の音階を両手で弾くことで音域をひろげます。
両手弾きの進め方が違う
ピアノは、基本的に両手で弾くものです。
どのようにこの「両手弾き」へ進めていくのか。ここも少し違っています。
- 『おとなのためのピアノ教本』
- 左右それぞれでメロディーを弾く
- 両手ユニゾン
- 右メロディー左伴奏
- 『シニア・ピアノ教本』
- メロディーの左右受け渡し
- 両手ユニゾン
- 右メロディー左伴奏
両手弾きへの進め方は上のような状況です。
大きく違うのは1ですね。
『おとなのためのピアノ教本』はすぐに両手とも5指を使うようになり、同時に左右それぞれでメロディーを弾きます。
しかも、それも1,2曲弾いたらすぐに右メロディー左伴奏になります。
ただ、「新しい調にはいったらまずは両手ユニゾンを」という形になっていて、両手ユニゾンは2巻に入っても行います。
『シニア・ピアノ教本』は、左右とも5指まで広がり、左手が中央ドの1オクターブ下のドレミファソへ移動したら「両手ユニゾン」が始まります。
(その直前に左のみでメロディーを弾く曲が1曲あります。)
それまでは、左右でメロディーを受け渡す形で弾くことになりますね。
コードを弾く進み方が違う
もう1つ違っているのは、コードの弾き方です。
どちらも左の伴奏はコードを弾いていくことになりますが、この進み方です。
- 『おとなのためのピアノ教本』
- 単音(主音と属音のみ)
- 3和音(C⇒G⇒F⇒G7 つまりハ長調の主要三和音)
- アルペジオ
- ト長調、ヘ長調の主要三和音
- 各調の音階(両手とも)と主要三和音⇒アルペジオ〈第2巻〉
- 『シニア・ピアノ教本』
- 単音(主音と属音のみ)
- 単音(主音、属音、下属音)
- 2和音(Cの第1音と第5音、Gの第1音と第3音)〈ここから第2巻〉
- 2和音の分散
- 3和音(C⇒G⇒F⇒G7 つまりハ長調の主要三和音)
- アルペジオ
- 各調の音階(右のみ弾く)主要三和音⇒アルペジオ〈第2、3巻〉
コードの進み方は以上のようになっています。
『おとなのためのピアノ教本』は、まずは単音でハ長調の主音と属音(ドとソ)のみで弾くことから始まり、すぐに3和音になります。
一方『シニア・ピアノ教本』は、単音⇒2和音⇒2和音分散⇒3和音という流れで、3和音に入るまでが長いですね。
もう一つの違いは、『おとなのためのピアノ教本』にはコードネームだけを見て弾く、という伴奏づけの課題が載っていることです。
曲の左手で弾く部分で音符の書かれていないところがあり、そこを弾いていくという形です。
これは2巻に入っても続きます。
また、調の進み方も違っています。
『シニア・ピアノ教本』は、並行調で学んでいくということですね。
さらに、『おとなのためのピアノ教本』では「ベースライン」の項目が3つに分けて設けられています(2巻)。
これは、ただ和音を弾くだけではなく、ベースの音だけを弾いたり、ベース音とコードを交互に弾いたりといった、伴奏のいろいろな弾き方を示したものです。
この項目では、分数コードも出てきます。
出てくる調についてはどちらの教本も同じです。♯♭ひとつづつまでということですね。
その他の違い
出てくる拍子や音符の種類、楽譜の記号などは、多少出てくる順番が前後したりしていますが、大きな違いはありません。
『シニア・ピアノ教本』では2回に分けて説明されていたり、1項目設けられていたり、ということはあります。
例えば、タイやリピート記号、強弱記号などは、『おとなのためのピアノ教本』では特に項目を設けての説明はありません。出てきたときにひと言説明されているのみです。
また、シンコペーションについて『シニア・ピアノ教本』には項目を設けて説明がありますが、『おとなのためのピアノ教本』にはありません。
それぞれについてまとめて見ます。
- 出てくる拍子
- 4/4拍子、3/4拍子、2/4拍子、2/2拍子、6/8拍子
- 出てくる音符
- 4分音符、2分音符、全音符、付点2分音符、付点4分音符、8分音符、16分音符、3連符、装飾音符
- 出てくるリズム
- 付点4分+8分(タ~ンカのリズム)、付点8分+16分(タッカのリズム)
- シンコペーション(『シニア・ピアノ教本』のみ)
やっぱりちょっと難しい『おとなのためのピアノ教本』
『おとなのためのピアノ教本』1,2巻とその簡単版である『シニア・ピアノ教本』1~3巻を比べてみました。
思ったのは、やっぱり『おとなのためのピアノ教本』は少々難しいということです。
『おとなのためのピアノ教本』の大きな特徴は「調についてしっかり学習」ということですね。コードネームとともに。
一方『シニア・ピアノ教本』は、示された和音ををそのまま弾くという形。
各調とそれぞれの主要三和音を学び、コードネームも書かれていますが、「転回形」についての説明はなく、展開された和音をそのまま弾くようになっています。
また、『おとなのためのピアノ教本』のように、「コードネームのみを見て弾く」という課題はありません。
「弾く」ということに関しては、同じレベルまで進むことができると思います。
でも、『シニア・ピアノ教本』3巻を終えて『おとなのためのピアノ教本』の3巻に入るのはちょっと難しいかも。
いきなりオーグメント・コードからスタートし、分数コードも出てきます。ちょっと「??」状態になってしまうのでは・・
コードの部分でついて行けなくなってしまうのではないかと思います。
調についてきちんと学んでいきたいということなら、『シニア・ピアノ教本』3巻終了後、『おとなのためのピアノ教本』2巻へ入るといいかもしれません。
2巻は、ハ長調の音階からスタートです。両手で音階を弾くことから始まります。
『シニア・ピアノ教本』ですでに終えている内容もありますが、コードの穴埋めもあるので、きちんと確認しながら少しずつ進めるといいかと思います。
『おとなのためのピアノ教本』、『シニア・ピアノ教本』それぞれの特徴があります。
自分の力や目指すところなどと照らしあわせて、自分に合った方を選んでいけるといいですね。
関連記事→『おとなのためのピアノ教本』をこちらで詳しく紹介しています。


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(公開日:2018年2月8日 最終更新日:2020年11月24日)
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