日本でも多くのピアノ教室で使われているバスティンのテキスト。
私の教室でも、全員にではないですが使ってきました。
バスティンは、はじめから調性について順序だてて学習を進めていく「全調メソード」が最大の特徴ですね。
今回は、『バスティン ピアノ ベーシックス』を紹介するにあたり、この調性についての内容がどのように進んでいくか、に焦点を絞ってまとめてみようと思います。
バスティンを使う場合は、このあたりの理解をきちんとしていなければいけないと思うので。
参考になればと思います。
『バスティン ピアノ ベーシックス』について
まずは、『バスティン ピアノ ベーシックス』について、簡単に紹介します。
『バスティン ピアノ ベーシックス』は、バスティンの主教材に当たるもので、5歳~7歳を対象としています。
プリマー、レベル1,2,3,4の5冊に分かれていて、レベル4を終えると「中級」に入るとされています。
この「中級」が、いわゆる「ブルグミュラー程度」ということになるかと思います。
(アメリカの教材なので、そういった難易度分けはされていません)
メイン教材となる「ピアノ」の他に
- セオリー・・楽典
- パフォーマンス・・併用曲集
- テクニック・・テクニック教本
があり、それぞれ5冊に分けられていて、シリーズとして使うようになっています。
なお、『バスティン ピアノ ベーシックス』には、もう少し小さい子がスムーズにレベル1に入っていけることを目標にした『ヤング ビギナー』プリマーA、Bもあります。
関連記事→こちらの記事で『ヤングビギナー』を紹介しています。
また、『~ベーシックス』に入る前段階の、『パーティー』シリーズもありますね。
参考→バスティン公式サイトでバスティンのテキストの流れが説明されています。
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オールインワン シリーズがあります
バスティンの教材は、ピアノ、セオリー、テクニック、パフォーマンスに分かれていると書きました。
現在、それらを1冊にまとめた「オールインワンシリーズ」が発売されています。
2017年から日本語版が順次発売され、10冊のシリーズすべてそろっています。
参考記事→『バスティンオールインワン 』の紹介記事です。
『バスティン ピアノ ベーシックス』調性学習の進み方
それでは、調性についてどのような順序で学んでいくことになるかをまとめます。
テキストごとに見ていこうと思います。それが分かりやすいかと思うので。
プリマー
まずは「プリマー」から。
『バスティンピアノベーシックス』シリーズの1番最初のテキストにあたり、これだけが横長タイプになっています。
ここで早くも、「Cのポジション」「Gのポジション」が出てきます。
5本の指を使って弾くようになった段階で、音階の始めの5音を「ポジション」として覚えるということですね。
出てくるのは
- Cのポジション
- Gのポジション
- Cの和音
です。
「Gの和音」という書き方はされていませんが、レッスンする曲の中にGの和音も出てきます。
レベル1
ここから本格的に調性についての勉強が始まる、といった感じです。
出てくるのは、C、F、Gの各長調です。音階の始めの5音が「ポジション」という形で説明されています。
そして、この3つの調は「グループ1の調」という形でまとめられています。
この3つの調は、どれもⅠの和音が白鍵だけでできている
という説明がされています。
3つの調の出てくる順番は以下の通り。
- Cメジャーポジション
- Cメジャーの伴奏
- Fメジャーポジション(Fメジャーの調号)
- Fメジャーの伴奏
- Gメジャーのポジション(Gメジャーの調号)
- Gメジャーの伴奏
「~~の伴奏」では、ⅠとⅤ₇のみが出てきます。
Ⅰは基本形。Ⅴ₇は、第1転回形の根音と第7音のみ。つまり、ハ長調で考えると
- Ⅰ・・・ドミソ
- Ⅴ₇・・・ファソ(第1転回形シレファソの「ファソ」のみ)
レベル2
レベル2に入ります。
レベル2では、まずCメジャー(ハ長調)を使っての「メジャースケール(長音階)」の説明から始まります。
はじめの5音のみの「ポジション」だったのが、ここで初めて1オクターブの音階が出てくるわけですね。
そして、ハ長調を使って
- 主要三和音
- 転回形
- 和音進行(Ⅰ-Ⅳ⇒Ⅰ-Ⅴ₇⇒Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ₇)
という流れで進んでいきます。
和音進行は、展開させた形で覚えていくようになっています。
ハ長調なら、ドミソ→ドファラ(基本形のファラドではなく)の形でⅠ-Ⅳの音を覚えるということです。
Ⅴ₇もここからは、第5音省略の第1転回形(シファソ)で出てきます。
この後、
- Gメジャー(ト長調)の音階、主要三和音
- Fメジャー(ヘ長調)の音階、主要三和音
- 調号のシャープの付く順番(調号から調を見つける方法)
- グループ2の調(D,A,Eの各長調)
- Dメジャー(ニ長調)の音階、主要三和音
- Aメジャー(イ長調)の音階、主要三和音
- Eメジャー(ホ長調)の音階、主要三和音
の順に学んでいきます。
グループ2の調「ニ長調、イ長調、ホ長調」は、どういうくくりかというと、
グループ2の調のⅠの和音は、どれも真ん中が黒鍵になっている
ということです。
ここまでで、シャープ系は♯4個の長調まで出てきますが、フラット系はFメジャー(ヘ長調)しか出てきていないので、♭1個だけですね。
レベル3
レベル3に入ります。
ここからいよいよ短調が出てきます。そして、フラット系の長調に入っていきます。
出てくる順番は次の通りです。
- Aマイナー(イ短調)の音階
- マイナーの見つけ方(平行調の主音の見つけ方)
- Aマイナー(イ短調)の主要三和音
- Dマイナー(ニ短調)の音階、主要三和音
- コードネームの見つけ方(根音の見つけ方)
- 調号のフラットの付く順番(調号から調を見つける方法)
- グループ3の調(D♭,A♭,E♭の各長調)
- D♭メジャー(変ニ長調)の音階、主要三和音
- A♭メジャー(変イ長調)の音階、主要三和音
- E♭メジャー(変ホ長調)の音階、主要三和音
グループ3の調は、
この3つの調は、Ⅰの和音の真ん中の音が白鍵になっている
ということです。
この「レベル3」で初めて短調が出てきましたが、Aマイナー(イ短調)、Dマイナー(ニ短調)のみです。
Aマイナー(イ短調)は調号なしCメジャー(ハ長調)の平行調。
Dマイナー(ニ短調)はFメジャー(ヘ長調)の平行調。
まずは♭1個から、ということですね。
自然的短音階、和声的短音階、旋律的短音階の3つも、短調を学ぶのと同時に登場しています。
フラット系の長調は、D♭(変二)、A♭(変イ)、E♭(変ホ)が出てきます。
フラット5個→4個→3個の順番になっていますね。
レベル4
いよいよ最後のレベル4です。
ここで、調を学習する順番は次の通りです。
- Eマイナー(ホ短調)の音階(Gメジャーの平行調)
- Eマイナー(ホ短調)の主要三和音
- 同主調の長音階と短音階
- グループ4の調(G♭,B♭,B)
- G♭メジャー(変ト長調)の音階
- G♭メジャー(変ト長調)の主要三和音
- B♭メジャー(変ロ長調)の音階
- B♭メジャー(変ロ長調)の主要三和音
- Bメジャー(ロ長調)の音階
- Bメジャー(ロ長調)の主要三和音
まずは、Eマイナー(ホ短調)が出てきます。
あとは、残りの長調、フラット系「G♭(変ト)、B♭(変ロ)」と、シャープ系「B(ロ)」を学びます。
これらは「グループ4の調」とされ、
Ⅰの和音は全部異なります
というくくりになっています。
「マイナー」としてはっきりと出てくるのはEマイナー(ホ短調)のみ。♯1個のマイナーですね。
『バスティン ピアノ ベーシックス』各調を学ぶ順番のまとめ
ここまでで、『バスティン ピアノ ベーシックス』での調を学ぶ順番について、各テキストごとにまとめてきました。
結局、全巻通すとどうなっているのかを、ここでまとめてみます。
調を学ぶ順序は、以下のようになっています。
- ハ長調(Cメジャー)
- ト長調(Gメジャー)
- ヘ長調(Fメジャー)
- ニ長調(Dメジャー)
- イ長調(Aメジャー)
- ホ長調(Eメジャー)
- イ短調(Aマイナー)
- ニ短調(Dマイナー)
- 変ニ長調(D♭メジャー)
- 変イ長調(A♭メジャー)
- 変ホ長調(E♭メジャー)
- ホ短調(Eマイナー)
- 変ト長調(G♭メジャー)
- 変ロ長調(B♭メジャー)
- ロ長調(Bメジャー)
これを、調号の付き方から見てみると以下のようになります。
- 調号の付かない長調(ハ長調)、♭1個(ヘ長調)、♯1個(ト長調)(グループ1の調)
- ♯2個(ニ長調)、#3個(イ長調)、#4個(ホ長調)(グループ2の調)
- 調号の付かない短調(イ短調)
- ♭1個の短調(ニ短調)
- ♭5個(変ニ長調)、♭4個(変イ長調)、♭3個(変ホ長調)(グループ3の調)
- ♯1個の短調(ホ短調)
- ♭6個(変ト長調)、♭2個の(変ロ長調)、♯5個(ロ長調)(グループ4の調)
長調は全部出てきます
長調については、12の調すべてについて1つずつ説明されています。
出てくる順番は以下のようになります。(長調の出てくる順番をメインに短調の出てくる場所を入れています)
① 調号の付かない長調
⇩
② ♭♯それぞれ1個ずつの長調
⇩
③ ♯2個、3個、4個の長調
⇩ 調号の付かない短調、♭1個の短調
④ ♭5個、4個、3個の長調
⇩ ♯1個の短調
⑤ ♭6個、2個、♯5個の長調
つまり、長調の学ぶ順序をまとめると・・
- ♯♭1個ずつの後は、♯系から学び、♭系に入る
- ♯は2,3,4と数が増えていくが、♭は5,4,3と減っていく
- 最後に♭6個と2個、♯5個の調が出てくる
という順序ですね。
なお、異名同音となる以下の3つは、
- 変ニ長調(D♭メジャー ♭5個)と嬰ハ長調(C♯メジャー ♯7個)
- 変ト長調(G♭メジャー ♭6個)と嬰へ長調(F♯メジャー ♯6個)
- 変ハ長調(C♭メジャー ♭7個)とロ長調(Bメジャー ♯5個)
♭系の変ニ長調と変ト長調、♯系のロ長調が採用されています。♭系をメインに調号の数が少ない方、ということですね。
短調は全部ではない?
長調はすべて出てきますが、短調は?
きちんと説明されている短調は、以下の3つのみです。
- イ短調(Aマイナー)・・調号なし
- ニ短調(Dマイナー)・・♭1個
- ホ短調(Eマイナー)・・♯1個
♭系の長調に入る前に、調号なしと♭1個の短調が登場します。そして♭系の長調の後に、♯1個の短調を学ぶという順序です。
短調だけが別にまとめて出てくる形ではありませんし、そもそも3つしか出てきません。
全調メソードなのに??
レベル3のはじめ(イ短調を学んだすぐ後)に「マイナー(短調)の見つけ方」という項目があり、ここで同じ調号を持つ長調と短調(平行調)について説明されています。
また、レベル4の中ごろ(ホ短調の登場後)に「同主調の長音階と短音階」という項目もあり、同じ主音に長調と短調が存在することを学びます。
なので、長調を学べばそれを元に短調も知ることができる、ということですね。
調号なしと♯♭1個ずつの短調は出てくるわけですが、これは基本の3つ、といえるかと思います。
またレベル4では、音程についての説明も順次されています。
- 長音程
- 完全音程
- 増音程
- 短音程
- 減音程
そして、これらをもとにして以下の和音の説明もされます。
- 長三和音
- 増三和音
- 短三和音
- 減三和音
- 属七の和音
さらに、1番最後には「和声進行」という項目で、
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ₇-Ⅰ(主和音→下属和音→主和音→属七和音→主和音)
- 長三和音→増三和音→長三和音→短三和音→長三和音
- 短三和音→減三和音→短三和音→属七和音→短三和音
この3種類を全調で練習することになっています。
短調について1つ1つ説明されているわけではありませんが、長調と同じように12個存在するといことはおのずと学んでいくことになりますね。
『バスティン ピアノ ベーシックス』まとめ 曲と並行して調を学ぶけれど・・
今回は、調性を学ぶ順序に焦点を当てて『バスティン ピアノ ベーシックス』の紹介をしました。
曲のレッスンと並行して長調を中心に全調を学ぶ、という形になっていて、自然な形で調性に触れられるようになっています。
バスティンは、正直レッスンでうまく使いこなせなくて・・
この「曲のレッスンと並行して」というのがなかなか難しく、調性についての理解が不十分なまま曲だけが進んでしまうんです。
曲の方が先に仕上がってしまうんですね。
また、曲は曲で新しいリズムや音楽記号など学ぶテーマがあり、そうしたことも同時に覚えてもらうことになるので、なおさら難しい。
曲と並行して調性を学ぶというのは理想的ですが、綿密に計画を立てて進める必要があると感じます。
シリーズの『セオリー』『パフォーマンス』『テクニック』も駆使しながら。
参考記事→『セオリー』『パフォーマンス』『テクニック』も1冊にまとめた『バスティン・オールインワン』が出版されています。
1番最後の「和声進行」を全調でできるようになると、すごく力が付きますね。
コードを本格的に勉強したい、となった時にすんなり進んでいけると思います。
目指すはここ!という気持ちはすごくありますね。
記事を書いて、あらためて、バスティンの良さと使いこなす難しさを感じてしまいました。
(公開日:2018年6月6日 最終更新日:2024年7月5日)
参考記事
→こちらで『セオリー』『パフォーマンス』『テクニック』を1冊にまとめた『バスティン・オールインワン』を紹介しています。
→こちらで『バスティン ピアノ ベーシックス』の小さな子向け『ヤングビギナー』を紹介しています。
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