ピアノの練習やっぱり毎日必要?脳の「記憶」のしくみから考える

ピアノの弾き方・練習法

「ピアノの練習は毎日やりましょう」

よく言われれることですよね。私も言っています。

言われる側としても、「そうだよね」という感じではないでしょうか。

ピアノに限らず、毎日練習をした方が身につくのが早い、というのは誰でも経験があることだと思います。

では、なぜ「毎日練習」が良いのでしょう。

その理由を、「記憶」をキーワードにまとめてみようと思います。

「ピアノを弾ける」は「長期記憶」~記憶のしくみ

練習は、ピアノを弾けるようになるためにすることです。

ピアノを弾けるようになるためには、脳がピアノの弾き方を「記憶」しなければいけません。

ただ記憶するだけではなく、「長期記憶」に分類されなければ弾けるようにはなりません。

記憶の種類~「短期記憶」と「長期記憶」

記憶には、その保持時間によって、大きく分けて「短期記憶」と「長期記憶」があります。

それぞれについて、以下に引用します。

短期記憶

保持時間が数十秒程度の記憶である。保持時間だけではなく、一度に保持される情報の容量の大きさにも限界があることが特徴とされる。

長期記憶

短期記憶に含まれる情報の多くは忘却され、その一部が長期記憶として保持される。この保持情報が長期記憶として安定化する過程は記憶の固定化と呼ばれる。長期記憶は保持時間が長く、数分から一生にわたって保持される記憶である。短期記憶とは異なり、容量の大きさに制限はないことが特徴とされる。(以下略)

脳科学辞典「記憶の分類」より

一旦ピアノを弾けるようになれば、弾き方を忘れてしまう、ということがないのは、「長期記憶」に記憶されるから、ということですね。

指が動かない(動かしにくい)とかいうことはあるけどね。

楽器の演奏は長期記憶の「手続き記憶」

「長期記憶」は、さらに「陳述記憶」と「非陳述記憶」の二つに分けられます。

そして、それぞれ以下のように分類されます。

  • 陳述記憶
    • エピソード記憶
    • 意味記憶
  • 非陳述記憶
    • 手続き記憶
    • プライミング
    • 古典的条件付け
    • 非連合学習

引用→それぞれの詳しい内容はこちら⇒脳科学辞典「記憶の分類」をどうぞ。

「ピアノを弾ける」というのは、以上の分類の中の「手続き記憶」に入ります。

この「手続き記憶」というのは・・

手続き記憶は、自転車に乗れるようになるとか、うまく楽器の演奏ができるようになるというような記憶で、同じような経験の繰り返しにより獲得される。しかしその情報をいつ、どこで獲得したかについての文脈情報記憶は消失する。また記憶が一旦形成されると、意識的な情報を伴わず自動的に機能し、長期間保存されることも手続き記憶の特徴の一つとして知られている。

脳科学辞典「手続き記憶」より
「手続き記憶」には、「運動性技能」「知覚性技能」「認知性技能」の3つがあり、楽器の演奏、つまり「ピアノを弾ける」というのは「運動性技能」にあたります。

ポイントは「同じような経験の繰り返しにより獲得される」という部分ですね。

ここが、「毎日練習」に大いに関係してくるところですね。

「短期記憶」⇒「長期記憶」

上に引用した「長期記憶」の説明にもありますが、「短期記憶」に含まれる情報の一部が「長期記憶」となります。

その選別の際、「同じような経験の繰り返し」がされることが一つの基準になる、ということです。

ピアノを弾く、という行為を何度もする事で、簡単には忘れない「長期記憶」となっていく、ということですね。

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「毎日練習」が必要なワケ

「記憶」はまず「短期記憶」として脳にとどめられ、「同じような経験の繰り返し」によって「長期記憶(手続き記憶)」へ移行する、ということが分かりました。

その「同じような経験の繰り返し」は、どのくらいの頻度で行えばいいのでしょうか・・。

「短期記憶」ってはかない・・

最初の記憶「短期記憶」。とっても頼りないものなんです。

上に引用した「短期記憶」の説明に「保持時間が数十秒程度の記憶」とありますが、短いですね・・。すぐ忘れちゃうということです。

日々生活していれば、次々に新しい情報が入ってくるわけなので、いつまでも記憶してはおけませんよね。

なので、長期記憶に移行させようと思ったら「同じような経験の繰り返し」をどんどんやっていかないと忘れていくということです。

新しいことを覚えたら、数十秒の間に何度か繰り返すこと。

まずは、これが必要だということですね。

復習、復習、また復習・・

「短期記憶」から「長期記憶」へ移行するには、どのくらいの繰り返しが必要なのでしょう。

これには個人差が大きく、「何回」と正確には言えないのが実情のようです。

復習、復習、また復習・・が結局は大事なようですね。

例えばレッスンで新しい指使いを覚えると、すぐその場で何度か練習をします。

先生は、教えて終わり、ではなく、たいていそのようにすると思います。

そして、家へ帰って何時間か経つうち、新しい出来事が次々あり、短期記憶はどんどん書き換えられます。

レッスンで数回は繰り返しているので、簡単には忘れないと思いますが、確実に覚えているうちにまた数回弾く。

そして、忘れないうちにまた数回・・また数回・・

これの繰り返し。結局、「毎日」必要になる、ということです。

そのうちに、何も考えずともサラッと弾けるようになる。

そうなると、確実に長期記憶に移行した、といえるのではないでしょうか。

覚えるべきことがはっきりとしている場合、腰を据えて練習時間を確保しなくても、時間を見つけてちょこちょこ弾く、という方法もよさそうですね。

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ピアノは毎日少しずつでも「練習」

ピアノの練習が毎日必要な理由を、「記憶」のしくみから考えてみました。

自分なりにいろいろと調べてみましたが、まだまだ分かっていないことも多いようですね。

例えば、「忘れる」というのはどういうメカニズムなのか・・とか

ですが・・

「ピアノを弾く」という行為そのものは、長期記憶の「手続き記憶」であり、それを獲得するには、「同じような経験の繰り返し」が必要である。

ということは確かなようです。

それには、「忘れないうちに何度も弾く」ということが大事ですね。

ただ、今回の内容は「ピアノを弾く」という特定の行為を獲得するための方法です。

例えば、正しいフォームの獲得、とか、特定のフレーズの指づかいを覚える、とか・・

ピアノの演奏は、もっと複雑な内容を含みます。

昨今話題の「ワーキングメモリー」。

これも「記憶」に関する事柄ですが、ピアノの演奏に大いに関係するといわれます。

参考Wikipedia「ワーキングメモリ」

楽譜を見ながら弾く、とか、瞬時に判断してふさわしい音量を決める、とか。

こういったことは、「ワーキングメモリー」に関する部分だと思います。

今回のテーマとはちょっと違うので、書き添えておきます。

(公開日:2019年10月15日 最終更新日:2023年1月27日)

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