バスティンから新しい導入期教材が出ましたね。
その名も『バスティン オール イン ワン』。副題に「よむ ひく かくを1冊で」とあり、これらが1冊のテキストにまとめられているということです。
バスティンはレッスンで使っている子もいるため、内容を知りたいと思い購入しました。
今回は「プリマーA」の中身を詳しくご紹介したいと思います。
バスティンメソードってどんなもの?
バスティンは超有名なピアノレッスン教材です。
ピアノの先生でバスティンを知らない人はいないと思いますが、そうではない人向けにまずは基本情報から。
「バスティン」は、ジェーン・バスティン、ジェームス・バスティン夫妻が開発したアメリカ発のピアノ教育メソードです。
最大の特徴は、「全調メソード」といわれる導入期のころからどんどん調を学んでいくというシステムですね。
詳しくはこちら⇩をどうぞ。
これまでのバスティンのテキスト
今回新たに出版された「オール イン ワン」は、上にも書いたように「よむ ひく かく」が1冊になっているのが特徴です。
ということは、これまでバラバラだったということですね。
バスティンの基本のテキストは「バスティン ピアノ ベージックス」シリーズの以下の4冊です。
- ピアノ・・・・・・・「弾く」ことを中心とした基本のテキスト
- セオリー・・・・・・「楽典ワーク」に当たるもので「書く」が中心
- テクニック・・・・・文字通りテクニックに特化したテキスト
- パフォーマンス・・・併用曲集
「バスティン ピアノ ベーシックス」はプリマーからレベル4までの5段階になっていますが、以上の4冊がそれぞれ5つに分かれています。
今回出版された「オール イン ワン」はこの4冊を1冊にしたもの、ということです。
「オール イン ワン」を紹介したバスティンのサイトに以下のようにあります。
現在発売中のベーシックスシリーズのメイン教材「ピアノのおけいこ」「セオリー」「テクニック」「パフォーマンス」の計4冊の重要な要素を1冊に集約しました。
『バスティン オール イン ワン プリマーA』その内容は?
それでは、中身を詳しく見ていきます。
まず大前提として確認しておかなければいけないのは、「よむ ひく かくを1冊に」というのは「よむ ひく かくを同時に進めていく」ということです。
「よむ」が〇ページから〇ページまで。「ひく」は・・ということではありません。
構成としてはごちゃまぜになっていて、ページを順番に進めていくことで順次それぞれを学んでいくという形です。
また、副題は「かく ひく よむ・・」となっていますが、目次では次の4つに分かれています。(書かれている通りに示すためあえて漢字を使っていません)
- ポジション、けんばん、おんめい
- どくふ、おんてい
- リズム
- おんがくきごう
「ポジション、けんばん、おんめい」の進み方をメインに、あとの3つがどのように関連付けられているか、という形でをまとめていきます。
ピアノを弾く前に・・
まずは、実際にピアノを弾く前段階で9ページが使われています。
- 座り方
- 手の形
- 指番号
- リズムをたたく
という内容です。
「座り方」「手の形」「指番号」の3つで見開き2ページ。「リズムをたたく」という内容で4ページになっています。
ここまでで出てくる他の単元は「リズム」と「おんがくきごう」です。
「リズム」について
ここで4分音符と2分音符が登場します。4分音符と2分音符のみの書かれた4小節程度のリズム譜でリズム打ちをします。
- 手拍子をする
- 左右の手それぞれで好きな場所を弾く(学んだ”正しい手の形”で)
という2つの課題があります。
2つ目の「好きな場所を弾く」ということがテクニックに当たるヵ所にとして示されています。
そして、4分音符と2分音符(縦線、終止線も)を書くページもあります。
「おんがくきごう」について
縦線、終止線、そして、ピアノ(p)とフォルテ(f)が出てきます。
4分音符と2分音符を書くページで、縦線、終止線も書きます。
また、左右の手それぞれで好きな場所を弾いてリズム練習をするときに、pやfで弾くという課題になっています。
黒鍵を弾く
ここから本格的に弾くことが始まりますが、まずは黒鍵のみです。10ページから27ページまで、18ページが割かれています。
- 黒鍵は2つと3つのまとまりがある
- 低い音、高い音(鍵盤上の関係、聴き分け)
- 音が上がる、音が下がるということ(鍵盤上の関係、聴き分け)
- 黒鍵で曲を弾く
以上のような内容になっています。
まずは、鍵盤の絵を見て2つの黒鍵、3つの黒鍵を〇や△で囲み、2つの黒鍵をチョキで、3つの黒鍵をグーで鳴らしてみる(これはテクニックの扱い)ことから始めます。
そして、先生が弾いた音は高いのか低いのか、真ん中くらいなのかを聴いて答えたり、鍵盤の絵や音の高低をイメージした動物の絵に〇をつけたりします。
また、自分でもいろいろな場所の黒鍵を弾いて音の高さを確かめます。
音の上がり下がりについても同じような方法です。右へ行くと音は上がり、左へ行くと下がる、ということを体感します。
「曲を弾く」ことに関しては、2つ、3つの黒鍵を同時に弾いたりバラバラに弾いたりします。
指は、2つの黒鍵は2,3、3つの黒鍵は2,3,4で弾くようになっています。
同時に弾くもの、バラバラに弾くものそれぞれにテクニックの扱いになっている曲があります。
すべて題名があり、先生用の伴奏譜がついています。
楽譜は「プレリーディング譜」。音符記号や拍子記号、5線の書かれていない楽譜です。
プレリーディング譜については、こちら⇩のバスティンの公式サイトをご覧ください。(下の方にあります)
音の上がり下がりをイメージしやすいように、楽譜そのものが斜めに上下した形で書かれているものもあります。
「どくふ、おんてい」「リズム」「おんがくきごう」については、以下に詳しく書きます。
「どくふ、おんてい」について
「どくふ、おんてい」は、上にも書いた音の上がり下がりの部分になりますね。
楽譜そのものが上下して書かれているものを弾いてみることで、「音符の位置が下に書かれると音が下がる、上に書かれると音が上がる」ということを学びます。
「リズム」につて
ここで、4分休符と全音符が出てきます。これらが混じったリズム譜でリズム打ちをします。
また、4分休符を書く課題もあります。
「おんがくきごう」について
ここで出てくる音楽記号は、リピート記号とメゾピアノ(mp)、メゾフォルテ(mf)です。
リズム打ちをしたり曲を弾いたりする中で学んでいきます。
白鍵を弾く
白鍵を弾くことで音名や音の並びを覚えていきます。28ページから41ページまでで、14ページありますね。
まず「ドレミファソラシ」という7つの音の名前を覚え、左右それぞれの2や3の指1本で、鍵盤上の様々な場所を弾いてみることから始まります。
音名は、英語音名、日本語音名の両方が書かれています。日本語音名はひらがなですね。
それから
- ドレミ(左は中央ドの1オクターブ下で3,2,1 右は中央ドから1,2,3の指)
- ファソラ(左は中央ドの下のファから3,2,1 右は中央ドの上のファから1,2,3の指)
- 右は中央ドの上のファソラシ(指1,2,3,4)、左は中央ドへ向かってファソラシド(指5,4,3,2,1)
の順でそれぞれの指を使って弾いていきます。(3の「左ファソラシド」は2の「ファソラ」の前に1度だけ出てきます)
すべて題名の付いた「曲」となっていて曲を弾きながら学んでいき、数曲はテクニックの扱いになっています。
伴奏譜は、あるものとないものがありますね。
片手ずつ弾きますが、左手⇒右手の順序になっています。右手だけで1曲、左手だけで1曲の形がほとんどです。
引き続き、楽譜はすべて「プレリーディング譜」です。
最後に、ここで学んだドレミファソラシドを聴き分ける課題(聴音)があります。
鍵盤の絵に音名を書き入れることと併せて、先生が弾いた音列を聴き分ける(例:ファソラシド、ドシラソファのどっちを弾いた?)といった問題になっています。
並んでいる音の上がり下がりを聴き分ける問題で、ドミなど飛んでいる音は出てきません。
「どくふ、おんてい」について
この部分は、上に書いたことと重なります。
鍵盤の絵の新しく出てきた音の場所に斜線を書き入れたり、プレリーディング譜と関連付けて音の高低を学んだりします。
「リズム」について
ここで2分休符が登場します。
ここからは「リズム譜」は無くなっています。
これまでも含めて、曲はすべてリズム打ちをしてから弾くようになっているので、それに代えるということですね。
音符の棒の向きを覚えることも「リズム」の単元に入っています。音符を実際に書いて棒の向きの違いを覚えます。
「おんがくきごう」について
ここで出てくる音楽記号は「オクターブ記号」です。
同じメロディーを1オクターブ上げたり下げたりして弾くことで、同じ音名だということや音の高低、ポジション移動の練習をしますが、それとともに登場しています。
ここでは、上に上がるオクターブ記号のみ書かれています。
飛ぶ音を弾く
こちらは42ページから59ページまでの18ページで、「飛ぶ音を弾く」のが大きな特徴です。
これまでは、ドレミファ、ドレミレ、ラソファソなど、必ず隣の音へ続く形でしたが、ここから、ドミやドラファ、ドミソミなどの飛ぶ音(3度のみ)の動きが加わります。
そして、左手⇒右手と弾いて1曲、という形や、1つのメロディーを左右の手で受け渡して弾く形の曲が主になります。
つまり、両方の手を使って広い音域を弾くようになるわけですね。
左手だけの曲、右手だけの曲が「テクニックの曲」と位置付けられています。
指くぐりは出てきませんので5指固定で弾くことができますが、弾く場所は曲によって変わります。
基本は「まんなかCポジション」という中央ドから左右に分かれる形ですが、そうではない曲もあります。
さらに、右手で和音を弾く形が1ヵ所だけ出てきます。1、3の指でファラを弾きます。
また、2、3の指で1つずつポジションを移動させて弾く(例:ドシド⇒シラシ⇒ラソラ・・を2,3,2の指で弾いていく)練習も1か所あります(テクニックの扱い)。
鍵盤上のドレミ・・の位置をきちんと覚え、指の動きが少しずつ複雑になっていくということですね。
その他、復習ドリルが2つあります。
- 鍵盤の絵に音名を書き入れていく
- 拍子のかぞえ方を数字で書く
- 学んだ音符や休符を書く
- 音の動きを答える(飛んでいる音なのかとなりの音なのか)
ドリルの内容は、このような感じです。
「どくふ、おんてい」について
2度や3度という音程のかぞえ方はまだ学びませんが、飛ぶ音を弾くことで、「音が飛んでいる」ということ、「どれだけ飛んでいるか」を覚えていきます。
鍵盤やプレリーディング譜の音符の動きと関連付けて学びます。
「リズム」について
ここから拍子記号が出てきます。4/4拍子と3/4拍子です。
それに伴い、プレリーディング譜にも拍子が書かれるようになります。
そのことで特にリズム練習をするためのページはありませんが、引き続き各曲でリズム打ちをする課題が書かれています。
3/4拍子が出てくることで、付点2分音符も登場します。
「おんがくきごう」について
ここでは、1オクターブ低い音を弾く、下に書かれたオクターブ記号が出てきます。
様々な鍵盤の場所を弾き、音の高低を感じることを引き続き行っていくということですね。
また、これまで出てきたf、mf、mp、pの4つの強弱記号が、楽譜の中に書かれるようになります。
Cポジションで弾く
この60ページから71ページまでで『プリマーA』は終わりです。
ここでは、「Cポジション」で弾くことが最大の課題になっています。
「Cポジション」は、左右ともド(C)レミファソの位置で演奏するということですね。
右は中央ドから、左はその1オクターブ下のドからドレミファソになります。
これまでは、曲によって弾く場所が変わっていましたが、ここではすべてCポジションで弾くようになっています。
一番初めの曲が「テクニック」となっていて、まずCポジションをしっかり理解して次へ入る、ということですね。
いちばん最後の曲で、ドソの和音が出てきます。この曲だけですね。左で弾きます。
また、復習ドリルがここでも2つあります。
内容はこれまでとほぼ同じですが、
- 音符、休符の長さを答える
- 強弱記号の読み方と意味を答える
の2つが新たに加わっています。
「どくふ、おんてい」「リズム」について
この2つに関しては、新しいことは出てきません。
復習ドリルをやることでしっかり覚えましょう、ということのようですね。
「おんがくきごう」について
ここではペダルの記号が出てきます。
- ダンパーペダルの場所
- 記号の意味(踏むヵ所上げるヵ所)
- 踏み方
- 踏んだ時の響きの聴き分け
などが「ねらい」として書かれています。
その他のことについては、やはり復習ドリルでしっかり覚えるということですね。
中身はこんな感じ
実際の中身の画像を少し載せます。
全ページカラーでとってもカラフルです。
そして、イラストがやわらかい雰囲気!
バスティンのイラストは、何というか・・とてもアメリカ的で好き嫌いがあるんですが、こちらはがらりと様子が変わっていて万人受けしそうな感じです。
音符の大きさは、「ベーシックス」のプリマーと同じですね。でも、拍子記号が大きくなって分かりやすい。
そして、何を学ぶのかといった「ねらい」や「課題」が□で囲まれていたりして、それもいいですね。
ちょっと丁寧すぎ・・?
この『オール イン ワン』は、現在プリマーA、B、レベル1A、1B、レベル2A、2Bの6冊が発売されていて、3A,3B、4A,4Bが順次発売されるようです(日本語版は2018年10月現在プリマーA、B、レベル1Aの3冊が発売)。
ということは、全部で10冊になるということですね!!
率直に、多いな~という印象です。
「ピアノ」「セオリー」「テクニック」「パフォーマンス」を1冊に、ということだから、そのくらいになりますか・・
それに、今回プリマーAのみを詳しく見てみましたが、進み方がかなりゆっくりな印象です。
対象年齢が4歳からということなので、小学校に上がる前ならこのくらいがちょうどいいかもしれませんね。
まだ日本語版が発売されていませんが、レベル1A,1Bの中身も見てみたい。そうしないと使っていけるかどうかちょっと判断できないな・・と思いました。
これまで、小学校の3年生手前くらいの子に「ベーシックス」のレベル1から使い始めるという形をとってきたので、レベル1以降がどのようになっているか知りたい。
すべてが1冊にということでは、効率よく進めていけるかなとは思います。
これまで「ピアノ」と「セオリー」を主に使ってきましたが、進み方のバランスがどうも崩れてしまって・・指導力の問題か・・?
でも、結局「パフォーマンス」は別で購入しなくちゃいけないとか、そういうことにならないかな・・
今の結論としては、もう少し上のレベルも中身をじっくり見てみたい、という感じですね。
日本語版の発売を待つ、か・・
関連記事バスティンの基本テキスト『バスティン ベーシックス』についてはこちらの記事でも紹介しています。⇩
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